オハイオ隊、遠征(その19)5/6空を飛ぶ

Sling Shot


駐車場からだったり、King's Island を外から見てて最も気になったのが、
「Xtreme Skyflyer」というバンジージャンプ系のアトラクション。
吊るされた人が空中を跳ね飛ばされて、空を飛んでるように見えなくもない。
「やっぱあれでしょう」ってことになる。
バンジージャンプは一地点から飛び降りて上下の動きだとしたら、
この「Xtreme Skyflyer」は
二地点を結ぶ搭の間に張られたワイヤー(?)の間を飛ぶので
上下もそうだけど、前後の動きもある。
果たして空を飛ぶような感覚は得られるのか?


怖いものが苦手なコムギちゃんは最初遠慮していたものの
みんなに説き伏せられて飛ぶことに。
飛ぶときは夫婦でってことか。
2人で飛ぶときはがっちり2人がくっついて離れないようにしてないといけない。
3人でも飛ぶことができて、僕とジュンコとタクが一緒に。
僕らの目の前で3人組のアラブ系(?)の親子が空を飛ぼうとしていて、
3人並んで人括りにされている様子を誰かがボソッと「ししゃもみたいだ」と言う。
(3人して顔も似てるし・・・。背丈が微妙に違うだけ)
これが僕らの間で大いに受けて、「ししゃも」「ししゃも」と呼び合う。失礼ながら。
「ししゃもが飛んだ!」なんて。
まあ僕らもししゃもになったわけですが。


ここは別途料金が必要で、追加料金が10ドルと、オハイオの州税(6.5%)
「たっけー」と思う。
でも日本でもそれぐらいするか。
別料金だったり、こういうのがそもそもティーンエイジャー向きじゃないからか、
並んでる人は少なくてすぐにも自分たちの番になる。
係員の若い男性が全て準備をやってくれる。
首から膝までの厚手のエプロンみたいなのを掛けられ、
それにはあちこちから金具や留め具が出ていて、繋いだり縛ったり。
準備ができて、前の人のフライングが終わると僕らは飛び込み台(?)の方に向かう。
2台あって、隣はボブ・コムギちゃん夫婦が飛ぶところだった。


台のところで待っていた係員2人から
さらに念入りに全身の金具の締め付けがなされ、足首が縛られ身動き取れなくなる。
3人で腕を組んで「飛行中は絶対離すな」と指示される。
合体してししゃも完成。
その瞬間、「ガタン!」と床が降りて、
足場を無くした僕らは吊り下げられて水平の姿勢となる。
これが一番怖かった。「ウォ」とか叫んだ。
英語で説明があれこれ早口で言われ、よくわからないうちに始まってしまう。
ウイーーンとゆっくりゆっくり後方の鉄塔から伸びたウインチが巻き上げられ、
体が高く高く持ち上げられていく。これは怖い。
ジェットコースターとは別の怖さ。座席がなくて吊り下げられてるんだもんな。
ものすごく高いところまで行って、止まる。
「眺めがいいなあ」とか思う暇なし。3人して「こえーよ・・・」と呟く。
下にいる係員から「3.2.1.」とカウントダウン。
「いい、いくよ・・・?」
発射係に任命されたタクが腰のところの紐を引っ張る。留め具が外れる。


その瞬間、奈落の底へ落下。急降下。
ヒェェェェー・・・


声には出さないものの、心の中で悲鳴。3人とも。
ウァァ・・・ぐらいは言ったかもしれない。
怖くて目ェつぶってしまった。
視界には落ちていく先の地面しか見えない。
景色をちらりとでも見るには
思いっきり首を持ち上げなくてはならなくて、重力と空気の抵抗上、それかなり無理。


気が付くとゴムが極限まで伸びきっていて、びよーんと今度は上に引っ張られていく。
ゴムがねじれたのか前後一回転して、前方・上方に向かって進んでいく。
空を飛んでる?


ここまで来ると余裕ができてくる。
あとは上下に行ったり来たり。
これってバンジージャンプじゃなくて、
初心者向けのスカイダイビングに似てるな、なんて思った。


何往復か行ったり来たりした後で下の係員が吊り輪みたいなのを差し出す。
これを掴んで下に下りるということになっている。
最初は失敗。2回目に僕が掴んでうまくいった。地面に下ろされる。
ゆっくりゆっくりそろそろと下ろされて1つ1つ金具を外されていく。
地面に立ったとき、ヒー・・・と思った。


僕らの次に飛んでいくのは、女性が1人で、だった。勇気あるなあ。
(ボーイフレンドが下で見てて、彼女1人だけが飛んだのだった)


出るとチケット売り場の裏側にて DVD を売っている。
そういえば敷地の隅からビデオカメラで撮影していたな。業務用?の大型のヤツ。
僕らが近づくとリプレイされる。「いい顔してるねぇ」とボブが腹抱えて笑う。
怯えたり、それが嵩じて笑ったり。
落ちていく瞬間はこの世のものとも思われぬ表情をしている。
写真と DVD でだいたい26ドル。高い。
しかしこんなの他に手に入らないので買うことにした。


ボブ・コムギちゃんに聞くと、2人の前に飛ぶことになっていた小さな女の子2人組は
釣り上げられて頂点まで達してカウントダウンが始まってから、
「怖い!!」ってことで取りやめにして下ろされたのだという。


1コすごいの制覇したね、ってことでその次もまたすごいやつ。
「Sling Shot」
その名の通り、巨大パチンコから球が空に向かって打ち出される。
これはもっと高くて、別料金20ドル。
それでも「Xtreme Skyflyer」より並んでて、
また1回にかかる時間が5分ぐらいで1度に2名ずつなので結局1時間近く待たされた。
少しずつ日が暮れていく。
僕らの前はどこかの高校のクラスメイトたち?で
男同士女同士仲良し2人ずつペアになって列を作っていた。
どうもそれぞれ普段行動するグループが違うらしく、めったに一緒になって話はしない。
だけど時折先生みたいなおじさんやおばさんがやってきて写真を取ったり
なにやら話しかけていて、そのときは一応会話を交わす。
僕らの前にいたのはクラスの中でもヤサグレ系なのか、だるそうに座ってた。
頻繁に先生がやってきては声を掛けていく。
短めのホットパンツに上はフードつきのパーカー。
日焼けを避けるためなのか暇つぶしなのか時折フードをかぶる。
マニキュアにペディキュア。


King's Island に1日中いて、
日本の女子高生とは体つき、というか発育が全然違うよなー
なーんて素直にそういうことばかり考えていた。
これで10代後半か・・・
そりゃ日本は勝てないよな・・・


話はちょっと変わって。
休日ともなると10代半ばと後半がメインの客層か。
その一方で働いている従業員は若く、20代前半から後半が多かったように思う。
土曜だったのでバイトも多かったのかもしれない。
射撃ゲームみたいなところにいたのはさすがにバイトだろう。
だけどコントロールブースの中でジェットコースターの操縦だったり
先ほどの「Xtreme Skyflyer」の係員はさすがにバイトじゃなくて従業員のはず。
みんな若いんだよね。
高校や大学を出て、ここの従業員となったのかもしれない。
日がな一日中、ジェットコースターの停止と発車。
そりゃもちろん神経は使うし裏方として重要な仕事であるが、
これを毎日毎日来る日も来る日もやっているとしたら、
・・・労働量とは別の意味で大変である。賃金も高いとは思われない。
相手にするのは1台のコンソールと目の前のコースターだけ。
大学や専門学校で習う類の特殊技能は必要とされない。たぶん。
単純に先輩や指導員から習い覚えた経験だけ。
若いうちはとりあえずこういうところで働くんだけど、
そのうちどっか別なところに働き口を求めるようになるんじゃないか。
そんなことを思った。
アメリカがどれぐらい不況なのか好景気なのかわからないけど、
そしてそれがオハイオ州ではまた違うんじゃないかと思うけど、
もしかしたら他に就職口もなくてここに決まったというような若者もいるかもしれない。
(King's Island で配ってるマップや駐車場の電光掲示板でも常に
「従業員募集」(Now Hiring)と出ている)


そう、中学や高校のときは
単純に親のお金で客として楽しんでいた子供たちのうちの何人かは
その後ここで従業員として働くのである。来る日も来る日も同じことを繰り返して。
列に並んでてそういうことに気付いたとき、ちょっと切なくなった。


「Sling Shot」のことを巨大なパチンコと書いたけど、仕組みはこんなふう。
球形の枠組みの中に2人掛けのシートがあって、
それが両脇の鉄塔から伸びたワイヤーにつながっている。
球は地面の薄くて平べったい台の上に電磁石か何かで固定されている。
その背後では巨大なバネがギューッとこれでもかこれでもかと縮んでいく。
球体がガクンと後ろ向きに倒れる。
バネが極限まで縮んで、3.2.1.とカウントダウン。
ゼロの瞬間電磁石がオフになって、ピューーーンと飛んでいく。
両脇のワイヤーの限界まで空高く打ち上げられる。


打ち上げられる瞬間、「え?何が起こってるの?」って感じ。
遊園地の乗り物って落ちていくことでスリルを味わうのだとしたら、これは全く逆。
こういう感覚、日本にもあるかもしれないけど、僕は初めて。
怖いというよりも気持ちいい。エェェェェー??って笑ってた。
そんで頂点に達して下に下がるとき、球体がグルングルン、グルングルン回る。
これすごい。三半規管がえぐられる。
何の飾りもなく何の容赦もなく物理的な法則に従って回るだけ。こういうのも初めて。
ゴムが伸びきった瞬間、球体が上空で静止する。長いこと静止する。
下で見てて「なんであんなことするんだろ?」「早く下ろした方が人がはけていいだろうに」
と思っていたんだけど、ようやく理由が分かった。
眺めがいいのである。向こうに見えるエッフェル塔の展望台と同じ高さか。
この遊園地もものすごく広いんだなあとしみじみさせられるんだけど、
それ以上に、はるか遠く、遊園地の外までオハイオ州が地平線のように広がってるのが壮観。
遠くをどこまでも森林が覆っている。自然が多いんだな。
あーこのために静止するのか。
一粒で三度おいしい。20ドルの価値はあった。