「父親たちの星条旗」

先週の水曜の夜、見に行った。
ほんとは日比谷シャンテシネに「サンキュー・スモーキング」を見に行ったんだけど、
なんと売り切れ。1日で映画の日だったからか?
そういえばマリオンの丸の内ピカデリーで「父親たちの星条旗」をやってたよなー
と急遽予定変更をしたわけです。


クリント・イーストウッド監督の最新作。
太平洋戦争にて死闘を繰り広げ、その後の命運を分けた硫黄島を巡る攻防。
それを日米双方の立場から描く。これはその前編、アメリカ側。
硫黄島の擂鉢山に星条旗を立てた6人の男たちを撮った1枚の写真。
これがアメリカに広まりつつあった厭戦感を払拭し、
戦意高揚と共に戦時国債の売上も増やすに違いないと目論んだ軍部−政府の思惑によって
写っていた6人のうち生き残っていた3人が本土に呼び戻され、
国債販売のためのセレモニーやパーティーへと毎晩のように担ぎ出される。
1人はこれを出世のチャンスだと捉え、もう1人は死んだ戦友に申し訳ないと酒びたりになる。
そもそもこの写真の撮影には裏があって、
この時の写真は星条旗を立てて硫黄島を制圧した瞬間を捉えたものではなく、
その後の撮り直しによるものだったという秘密が隠されていた。
激闘の末に実際に旗を立てた勇気ある兵士たちは無名のまま、
2回目に旗を立てた6人が運命のいたずらで英雄として祭り上げられたのだった。
主人公である3人のうちの最後の1人は、その全てを一切語らないまま、
アメリカでの普通の生活の中で年老いて天寿を全うした。


いやー面白かった。
人間という存在のちっぽけさ、気高さ、生きるということのほろ苦さを描かせたら
今やイーストウッドに適う者は他いないのでは。
それら全てが昇華され、素晴らしいラストシーンへとたどりつく。
美しい絵だったなあ。
ほろっときました。純粋に映画的感動で。久々です。
★10個でお薦め。


前半部分で登場人物たちの説明と、物語の大枠について語られた後、
硫黄島での戦闘シーンに突入。
銃弾を受けて舞い上がる砂が塊となって襲い掛かり、浜辺に転がる死体が波に洗われる。
これがいつ終わるとも知れぬ果てしないものとなって、
臨場感に溢れ手に汗握るんだけど
「ああ、クリント・イーストも普通の戦争映画を撮るようになったのか・・・」
と思っていたらその後思いもつかぬ展開。
戦争の是非を正面切って問うことはせず、
運命に翻弄される人間の悲劇をそれぞれ、丹念に描いていく。
しかし個々を描くことで
それがより大きな「意思」の存在を案じさせるのだからやはりイーストウッドはすごい。


2本目の「硫黄島からの手紙」は日本側からの物語。
楽しみなんだけど、
日本語のセリフの出てくる予告編を見ているとなんかちょっと違和感を感じるなあ。
監督の母国語を話さない役者たちの演出ってそもそもどんなもんだろうか?と思う。


それにしても、製作がスティーブン・スピルバーグ、監督がクリント・イーストウッド
脚本が「クラッシュ」のポール・ハギス。この組み合わせって豪華だよなあ。
パンフレットの最初のところに3人ともアカデミー賞受賞監督って書いてあった。
なお、会社の先輩は看板に
「製作スティーブン・スピルバーグ 監督クリント・イーストウッド」と書いてあるのを見て
デカデカと書いた文字だったにも関わらず、
「監督スティーブン・スピルバーグ 主演クリント・イーストウッド」だと思い込んでいた。
思い込みの力は強い・・・