Too Much Monkey Business

IT業界に籍を置いて8年。
ずっと僕は得体の知れない違和感を感じ続けてきた。
「コンピューターというものが嫌いだ、見たくもない」ということではない。
冗談で「だいっきらいだ」と言うことはあるが、実際のところは好きでも嫌いでもない。
日常生活でよく使う、ただのツールに過ぎない。


最近になってようやく気がついた。こういうことだ。


基本的に僕は僕のことをゲージュツ家だと思っている。
社会的に身分としては全然そうじゃないとしても。まあせめて気分ぐらいは。
で、芸術家というものは普通、妥協を許さない。
「妥協?よくありますね」と平気で語る芸術家など聞いたことがない。


方やこの業界は妥協の連続である。
完成するシステムというものは予算の規模がどうであれ妥協の積み重ね、その産物に過ぎない。
言葉は悪いが、はっきり言ってそんなもんだ。業界内の人ならば常識だと思う。
顧客もシステムを組む会社も共に理想的な状態にあってプロジェクトに臨んだ、
という話を少なくとも僕は聞いたことがない。8年の間、ただの1度も。
コストとかスケジュールとかスキルとか。
そういう制約がどこもかしこも壁のように立ちはだかっていって、
折衝を繰り返す中で折り合いをつけていく。その繰り返し。


偉そうな話で恐縮だが、僕にはこれが苦痛でたまらない。
半年なら半年、2年なら2年掛けて、しょうもないものが目の前で出来上がっていくのである。
しかもその「しょうもなさ」の一端は確実に僕が担っている。
僕自身が妥協を繰り返して。
これが心苦しくてたまらない・・・


だったら僕がスキルアップして、
例え100点満点は取れなくても、
理想的なシステムへと0.1%であっても近付けられるようにすればいい。
せめてそういう努力をしたら、自己満足に過ぎないとしても、
ちっとは状況がよくなるのではないか。
周りの人たちを巻き込んでいけたら、そのパーセンテージはさらにもうちょっと上がる。


でも、僕にはそれはできない。
その時々に携わっているPJのために必要最小限の時間
(それでも月の残業時間は多くて100時間を越える)を割いて、
会社の外に出てさらにプラスアルファのことをするなんて気が遠くなる。
それぐらいなら小説を書いていたい。
他に目標があるのだから、そのために時間を使いたい。


そんなわけで僕はだめなSEなんだよなと思う。
やってる人は、ちゃんとやってる。
向上心ってやつを、どこかしらに持っている。
僕は日々の生活のために目の前のことを右から左に動かしているだけ。


もちろんそこにはやりがいなんてものはない。一切ない。

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この「システム開発って妥協ばかりじゃないですか、耐えられないです」って話を
先日、上司たちとのボーナスの面談のときにしたら、
オカムラ、それって普通、2年目までの考え方だぞ」と苦笑される。
「ビジネスはビジネスだからな。そこのところわきまえないと」


そうだよな。30過ぎた大人が持つべき考えじゃない。
でも僕ってどこまでいってもそういう人間であって、
これは死ぬまで変わらないのだと思う・・・


IT業界に限った話に限らず、どこの業界だって妥協は付き物だ。
小さな嘘やごまかしはどこにいたところでついて回る。
そこに必要以上の痛みを感じるかどうか。


僕はそもそも、会社員として向いてないのではないか・・・


それでもこれまでなんとか続けてきたものの。