ケン・ローチ監督の最新作。06年のカンヌでパルムドール。
12月から公開されていて、絶対見に行こうと思っていたのだが
先月は忙しくてどうにもならず。というか見てたら絶対寝たはず。
正月明けの3連休の中日、体調を整えてようやく見に行く。
場所は有楽町のシネカノン。
1920年のアイルランド。
独立を求めて英国軍と戦う若者たち。
レジスタンス活動に身を投じた兄弟が主役となる。
ゲリラ戦を繰り広げていった末に遂に休戦、講和条約の締結を勝ち取るが、
その骨子はアイルランドはあくまで英国内の自治州に留まるというものだった。
条約締結を肯定的に捉え政府軍に加わる兄と、
真の独立を勝ち取らなければアイルランドの貧しい人々を救えないと
レジスタンス活動を続ける弟。
国内は2つに引き裂かれ、内戦状態となる。
それまで共に戦ってきたのに、若者たちは敵味方となって争いあう・・・
さすがパルムドールだけあって、
一部の隙もない、非の打ち所のない映画だった。
何も言うことがない。
ここに書くべきことも何もない。何も思いつかない。
・・・それはつまり、いい映画なんだけど、僕の心に何も響かなかったということだ。
この映画のことを否定的に思っているわけではない。むしろその逆だ。
なんなんだろうな。よくわからない。うまく言えない。
そう、「この映画すげえ!!」と唸りたくなるような、
僕の中の一線を越える瞬間が無かったというか。
もっと稚拙な映画であっても、
そういう瞬間が無数に存在する映画は世の中にはいくらでもある・・・
ケン・ローチとの相性がよくないのだろうか?
これまであれこれ映画を見てきた中で
ケン・ローチの作品を見たのは、実はこれが初めて。
避けてきたわけではないのに、縁が無かった。
「ケス」であるとか、映画サークルでは評判がよかったけど。
実直すぎて華がない、映画に「酔いしれる」瞬間がない、ってことかな。
例えば「ロゼッタ」や「ある子供」のダルデンヌ兄弟の映画って
もっともっと実直で鬼のようなリアリズムだけど、
見ててこの世ならぬ何かを映像の中に宿してるような気がしてくるもんな。
「ある子供」のように、ためてためて最後の最後で
とてつもないラストショットが待っている、というのでもない。
なんというか、ケン・ローチ監督がTVドラマ出身ってことで
起承転結を大事にしすぎてるんじゃないかな、って思った。
TVドラマにとって最も不要なのは「芸術のための芸術」であって、
越えてはならない一線は決して越えない。
そういうことなのではないか。
たかだか1本しか見てないので偉そうに語るわけにはいかないけど。