「ベティ・サイズモア」「ブラッディ・サンデー」

この正月休みに見た映画2本について。
どちらも廉価版で再発された DVD を買って見た。

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「ベティ・サイズモア」


ニール・ラビュート監督の作品、00年。
一般にはあんまり知られてない映画だと思うけど
主演はレネー・ゼルウィガーモーガン・フリーマンクリス・ロックと豪華。
レネー・ゼルウィガーは「ブリジット・ジョーンズ」でブレイクする前。
カンザスの田舎町で昼メロにうつつをぬかすウェイトレス(殺される旦那あり)を
演じてるんだけど、とにかくイモっぽい。とことん無邪気で世間知らず。
これ、演技としてやってるんだよな・・・?
だとしたら僕がこれまでで見た限りでは最もいい演技かもしれない。


旦那が殺し屋に殺されたのがショックで
現実が目の前から消し飛んで頭の中は昼メロの世界へ。
主演の医者に会いにはるばるロスまで旅して、大騒動を巻き起こす。
サスペンスとコメディのバランスがすごくいい。
カンヌで脚本賞を取ってるだけあって、ひねったストーリーが軽快に進んでいく。
非常にナンセンスな内容のはずなのに、「ありえる」話として見せきってしまう。
この監督の力量は確かなものがあるね。


監督のニール・ラビュートの次回作は
伝説のカルト作品「ウィッカーマン」のリメイク。ニコラス・ケイジが主演。
僕は逆に「ウィッカーマ」からニール・レビューとのことを知ったんだけど、
この監督ならば面白いものになりそう。期待できる。

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「ブラッディ・サンデー」


ボーン・スプレマシー」「ユナイテッド93」で
一躍有名となったポール・グリーングラス
ボーン・スプレマシー」の監督に抜擢されるきっかけとなった作品。
北アイルランドの町デリーで72年に起こった「血の日曜日事件」の映画化。
IRAと英国軍との緊張感が高まる中、
公民権を求める運動の一環として市民が行ったデモは混乱をきたし、
13名の一般市民が英国軍に銃殺されるという結果に終わる。
これを徹底的なドキュメンタリータッチで描く。
「ユナイテッド93」のあのリアルさと臨場感の元になったのが
この映画の製作体験なんだろうな。
というか中身が違うだけで撮り方は全く一緒。
(でも「映画」としては圧倒的に「ユナイテッド93」の方が面白い)


何の飾り気もなく、淡々と、戦場と化した市街地が描かれる。
銃撃戦の中で名も無き人々が次々に倒れていく。
いいも悪いもない。いろんな立場の人がいろんなことを悩んだり迷ったりした結果
自分のやるべきと思えたことをやったらこうなった、というただそれだけのことを描く。


最後にはもちろん、U2の名曲「Sunday Bloody Sunday」が流れる。
「僕たちはあとどれだけこの歌を歌わなくてはならないのだろうか?」と
ボノが力強く繰り返す、あの歌。
ライブバージョンで、観客が一緒になって歌う。
恐らく、地元アイルランドで行ったときのものだろう。
時代としては80年代の彼らがまだ20代だった頃と思われる。
感極まったボノは「アムネスティという団体を知っているか?」と呼びかける。
「彼らは君たちの事を知っている」
「この歌を歌ってほしい、ベルファストやデリー、ニカラグアベイルートのために」
そしてボノは「No More ... No War ...」と声の限りに叫ぶ。


アイルランド側・イギリス側、
どちらの意見に組することも無くただ率直に事実だけを再現させたようでいて、
ポール・グリーングラスの意見は最後の最後に語られた。
どちらが正しいということはありえず、
地には平和を、誰にも平等にそれは与えられるべきなのだ、ということ。