言葉と記憶

僕たちは時として言葉というものを忘れてしまう。
言葉というものを失って、そこにいる僕と君、
ただそれだけで全てが語りつくされたかのような気持ちになる。


僕は君に会いに行く。
僕は君を見失う。
僕は君に話しかける。
僕は君を笑わせようとする。


夜明けの海辺を思い出す。
友人たちと笑いあった瞬間のいくつか。
悲しみに暮れた出来事のいくつか。


君が耳を塞いだとき、目を閉じて顔を覆い隠したとき。
その叫び声。頬を伝う涙。
凍りついた、傷口のような記憶。
僕の心に残されて、移ろう。


君がこれまでに思い出した言葉の全て。
君がこれまでに見失った言葉の全て。
君がこれまでに忘れたようとした言葉の全て。
君がこれまでに囁いた言葉の全て。