街中で撮影をする行為の是非

日曜日、クリーニング屋に行こうとして歩いていたら
向かい側から薄着の女性が歩いてきた。
キャミソール1枚。
最高気温が20℃近い温かい日だったとはいえ、さすがにそれはないだろう。
そんなことを思いながらすれ違う。
ふと見るとすぐ後をビデオカメラを持った男性がぴったりくっついていて、
モニターを眺めながらそーっと歩いている。


ああ、と思う。撮影なんだな。
自主制作映画なのか、なんらかのマニア向けの映像なのか、
はたまたアダルトビデオなのか。


クリーニング屋の帰りに来た道を辿っていたら、またこの男女とすれ違った。
この界隈をひたすら往復して、イメージ通りの映像となるのを求めているのだろう。


女は20代後半か。取り立てて美人でもないが、ブサイクでもない。
男は40代半ばぐらいか。背が高いが、小太りでメガネをかけている。
なんらかの趣味のネットワークで知り合って、
男性が女性に対して金銭を支払うことで成立する類いの関係を僕は想像した。
今時の自主映画ならば、学生映画であってもちゃんとしてて
脚本や機材を持ったスタッフが何人か同行しているはずだ。


「変なことしてんなー」と思う。
うげーって感じで否定的な印象を抱く。


でも、よくよく考えてみると
学生時代に僕が映画を撮るっつってやってたこともこれと大差ない。
僕1人カメラ持っていて、出てくれる人が1人いて、街中で撮ってる。
「変なことしてんなー」といぶかしい気持ちを抱きながら
素知らぬフリをしてすれ違った人たちばかりだったのだろう。今思えば。


今回目にした光景を「変なこと」として捉えて
目を背けたくなった僕は
遂に映画を卒業したってことなんだろうな。

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そういえば。
観光スポットなど、一頃に比べてビデオカメラを持ってる人が少なくなったように思う。
肖像権や個人情報保護とかそういうので、
不用意に人にカメラを向けることができなくなった。あるいは避けるようになった。
今、ビデオカメラを持って東京の街を歩いているのは、
ケーブルテレビ局の撮影班や映像の専門学校の生徒といったプロやセミプロたち、
あるいは海外からの観光客がほとんどなのではないか。


小学校の運動会でビデオの撮影ってのも今はかなり大変なんだろうな。
ヒステリックな人もいるだろうし。
屋外では周りに誰もいないことを確認するか、あるいは同意を得るか。
自分の家の中ぐらいしか満足に撮れない。


もしかしたら今って、高校の卒業式でもらうアルバムも
部外者が個人を特定できないように
名前や顔写真の載らないものになってたりするのではないか。


今、学生映画もあれこれめんどくさいことになってるんだろうな。
撮れない場所、撮ってはならないシチュエーションが10年前よりも格段に増えたはず。
それを強行突破するだけの気概のある若者がいてくれると嬉しいけど、
下手したらそれって法を破ることにもなりかねなく。


なんにせよせせこましい世の中だ。
・・・なんて、思ったりした。