恋愛小説

ここ何日か考えている小説。


Aという国から来た男性「A」と
Bという国から来た女性「B」の2人がCという国で出会う。


なんらかの事情でAもBもCという国に流れ着いて、
そこで定住的な生活を送ることを余儀なくされた。
AもBも自国の言葉しか話せず、Cの国の言葉を話すことができない。
異邦人同士のAとBは偶然/必然的に出会い、惹かれあう。恋に落ちる。
異国の地で2人きりの生活が始まる。


しかし、AはBの言葉を知らないし、BはAの言葉を知らない。
Cの言葉も覚えなくてはならない。
片言の会話、単純な絵、仕草、表情といったもので2人は意思の疎通を図っていく。
そういう状況で2人の愛の行方がたどっていく(何かが深まっていく)過程と
互いの言葉とCの言葉、Cという国の中で
2人の住む都市の地理や習俗といったものを学んでいく過程とが平行して描かれる。
見知らぬ国で生活することから生まれるハプニング。
共通の友人ができて部屋に招く、招かれるといった出来事。


「小説」というものの持つ性質上、
この2つの過程の描く線はなんらか反比例していかなくてはならない。
AとBの2人は互いの言葉もCの言葉も覚えて、Cでの生活も順調なものとなって、
2人は末永く幸せに暮らしましたとさ。
そんなハッピーエンドは普通求められない。
一般的な恋愛小説のハッピーエンドを演出したいならば
わざわざCの国、Cの言葉という設定を持ち出す必要はない。


普通、こういう小説はこんなふうにして終わる:
2人はCの言葉を覚え、Cの国の人らしく振舞えるようになった。
視界が広まって、孤独感も癒されていった。
AとBが互いを必要とするきっかけ、接点も薄れていく。
2人の思いはすれ違うようになり、別れを迎える。


あるいは:
Cという国の中で日々感じている疎外感はどこまでいっても拭い去ることができない。
AとBの結びつきがより深まっていく。
2人はCから外に出ようという結論に達する。
それは2人の故国であるAかBに戻ることかもしれないし、
全く別のDという国かもしれない。2人が旅立つところで小説は終わる。


さらにあるいは:
Cという国の中で日々感じている疎外感はどこまでいっても拭い去ることができない。
AとBの結びつきがより深まっていく。
泥沼のような日々。よじれてもつれあう恋愛感情はやがて暴発して、破綻を迎える。
別れ。AとBはそれぞれの選択をする。
それは故国に戻ることかもしれないし、Cにとどまるということかもしれない。


こんなふうに考えていくと、
恋愛小説の図式って表にするとこんなふうになることが分かる。
ハッピーエンドも含めると4通りの象限となる。


   恋愛
障壁 ○ △
   △ ×

    • -

もしこれを本当に小説として書くとしたら
Aは大学院をドロップアウトして放浪する研究者で、
Bは小国からの政治的難民で、Cという国は、・・・
というような設定を現実世界に求めてリアルさを追求するよりも
僕の場合全て架空の国にしてしまうと思う。ある種の寓話として描く。


そのとき僕は上の4つの象限のどれで書くことになるのか。
それはそのときになってみないとわからない。