ツアーでペルー その5(4月21日)

Baggage Claim


現地時間の14時頃、ヒューストンの空港に到着する。
見回すとコンチネンタルの飛行機ばかり。空港内の掲示も全てコンチネンタルに関して。
国際空港のはずなのに。
Wikipedia で今調べてみたら確かにコンチネンタルのハブ空港であって、
正式名称は「ジョージ・ブッシュ・インターコンチネンタル空港」
あのジョージ・ブッシュの名前がついている。父親の方です。
僕らの乗り降りしたターミナルの「E」ってのがコンチネンタル専用だった。


入国審査は航空券を見せて「ペルーに乗り継ぎ」と言うとあっさり終わり。


ツアーのメンバーは Baggage Claim にて再集合。
広いフロアにターンテーブルがたくさん並んでいる。
基調となる色は白。壁にはカラフルな現代アートが飾られている。
ターンテーブルの、あれは何て言うのだろうか?ベルトコンベアで囲まれた真ん中の空間。
そこもまた真っ白で、これまた真っ白のスーツケースが
いくつもいくつもオブジェとして規則正しく並べられている。
それが時間と共に黄緑だったりオレンジに発色する。色の組み合わせが妙に apple っぽい。
この空間は apple の製品デザイナーが関わったのではないか?なんて思う。


入国手続きが一通り終わったばかりだというのに、すぐにもまた出国手続きへ。
リマへのフライトは15時50分。2時間もない。


ちょっと前に書いた厳しいセキュリティ・チェックというか
液体チェックをここで受けるわけです。
ベルトを外し、靴も脱ぐ、
身に着けているものに金属が少しでも残っているとアウトというのは相変わらず。
年々厳しくなって言って、来年や再来年はどうなっているものやら。
男女別室になって裸になるんじゃないかと思う。
ケツの穴に指突っ込まれて。刑務所と一緒。
とんでもないところに武器を隠し持ったテロリスト、きっと出てくるよ。


ここを潜り抜けるとあとは出発を待つばかり。
少しばかり時間があって、店を見て回る。
「rent」ってのがあった。全米チェーンなんだろうな。CD / DVD のレンタル。
店のモットーは「rent here, return anywhere」
レンタカーの乗り捨てみたいなものか。同じところに返さなくていい。
空港にあるってことは飛行機に乗る前に借りて、
乗ってる間に聞いて、下りた場所で返すってことが可能。これは便利だ。
日本にもこういうのあるといいのに。TSUTAYA とか。
新宿でマニアックな洋画を借りて、見終わったら住んでる荻窪に返す。
でも、こういうのってマニアックな在庫のためにあるのではなく、
どこの店舗にも普遍的にあるべき新しい商品ばかりとすることでシステムとして成り立つわけで。
空港の中だから店舗のスペースは小さいし、
置いてるのは最近ヒットしてるアーティストの CD ばかりだった。


当然のごとく、テキサス土産の店ってのもある。
入ってみる。いろんな種類のカウボーイハットがあって、欲しくなる。
僕はもう、小さな頃からカウボーイハットに憧れていた。
でも買ったところで日本でかぶれるわけじゃなし、家の中で飾るだけ。
なのでずっと自制していた。
とはいえ、ペルー旅行の間かぶってるのもいいんじゃない?なんて思ったりする。
だけどヒューストン観光をしたわけではないんだし、
こんなことしたらただでさえ浮き気味なのがツアーの間さらに浮いちゃうだろうし、
そもそも帽子だけウェスタンであってもしょうがなくて
全身それなりに合わせないといけない。カーゴパンツにTシャツはさすがに違う。
やはり今回も諦める。


搭乗ゲートへ。
ツアーのメンバーが三々五々集まっている。
誰かが上下左右に何台も並んだモニター上に映し出された
Departure のリストを携帯やカメラで撮り出すと、他の人がそれに続く。みんな撮り始める。


暇そうに辺りを見渡すと、アメリカ人のティーンエイジャーが3人。
お手玉で器用にサッカーを。
リフティングして相手にボールをパス、踝で受け取る、というのを繰り返す。
その場にいた大勢の人が、たいしたもんだと見とれる。


大柄な白人男性が話しかけてパスポートがどうのこうのと言われるがよく分からず。


同じ飛行機で日本を出て、一緒のツアーではないのに
また同じくリマ行きに乗る日本人旅行者の姿をちらほらと見かける。


時間が来て、リマ行きの飛行機の中へ。
搭乗券とパスポートを見せて、
入国審査のときに貼り付けられた I94-W の切れ端を航空会社の職員に渡す。


機内にはマドンナの「Crazy For You」が流れていた。
その次はビーチ・ボーイズの「California Girls」
アメリカ人にとっての懐メロってとこか。


今度のは6人掛け。機体が小さくなり、それと共に座席も狭くなる。
その右端。無駄に窓際。
ヒューストンまで隣り合わせた若い夫婦とここでもまた隣り合わせる。
飛行時間は6時間半。
トイレに行こうとして席を立とうとすると2人に立ってもらわなくてはならず、
こりゃ迷惑だろうなあと我慢する。


機内食ビーフかチキンってことでチキンを。あと、水。
映画は「ナイト・ミュージアム
これ、日本で予告編を見たときには子供向けでつまらなそうに思えたのに、
ところどころ見てるとなかなか面白そう。


寝て過ごす。たまに起きて本を読む。
ヘミングウェイの文章の素晴らしさにため息が出る。
こんな瑞々しく弾むような文章を書く人だったのか?印象ががらりと変わった。
中学生のとき、新潮文庫夏の百冊とかそんなので
老人と海」を「薄かったから」というだけの理由で買って、
最初の数ページを読んで退屈だと放り投げた覚えがある。
たかだか14歳でヘミングウェイの味わい深さがわかるわけがない。
今ならはっきりとそう思う。
ストーンズのよさがあの頃全然ピンと来てなかったのと一緒。


着陸の時間が近づく。
突如、右目の痛み。・・・眼圧。
このところ起きてなかったから忘れていた。正に忘れた頃にやってくる。
今回のフライトでは気圧の調整ができてなかった。
飴を舐めるかガムを噛むかすればよかった。
昔は自分の中で飛行機乗るときの「義務」にしてたのに、
いつのまにかやめてしまっていた。
眼球を無数の針で刺すような痛み。堪えながら滑走路に降り立つのを待つ。
一瞬痛みが収まったので、窓のカバーを開けて外を眺める。
海の上を飛んでいる。そしてその向こう、オレンジ色の光が陸地を覆っている。
飛行機が到着して聞こえてきたのは、
ビートルズの「悲しみをぶっ飛ばせ」だった。