ツアーでペルー その20(4月23日)

テーブルの上に置かれた人形


クスコの町へと戻る。
途中、「キリスト・ブロンコ」に寄っていく。
丘の上に真っ白なキリスト像が立っている。
日の暮れかけたクスコの街並みを見下ろす。
貧困地区の家々のオレンジ色のつましい灯り。
そのはるか向こうの市街中心部、アルマス広場周辺はそれなりに賑やかに見える。


うとうとしている間にホテルへ。
18時頃か。フォルクローレ・ディナーの出発は19時半。時間ができる。
とは言っても見に行くべき観光スポットもなく、
先ほどのタンボ・マチャイで芯まで冷え込んだせいか体はぐったり疲れている。
部屋で大人しくしてようかなあ、とも一瞬考えるが、
「いかん。なんかせな、もったいない」という気持ちに傾く。
荷物を置いて、上にセーターを羽織って、ホテルの外に出る。
なんとはなしに通りを歩いてみる。
小さなホテル、小さなレストラン、地元の人相手の酒屋兼バー。
土産物屋の集まっている市場のような場所を見つけて中に入る。
どこもセーター、マフラー、ラグ、ニットキャップ、Tシャツ、鞄、民芸品といった品揃え。
売ってるものは代わり映えしない。
セーターはよく見るとどの店もデザインが一緒で色のバリエーションがいくつかあるだけ。
工場で作ってみんなそれを仕入れているようだ。
歩いていると「アミーゴ」と声をかけられる。
これを買わないかと商品を指で示される。
特に欲しいものはなし。


通りを渡ったところにさっきのをさらに大規模にした市場が見つかる。
小さな店が寄り集まっている。
中を入って歩くがどれもこれも同じようで、それがどこまでも続いて、クラクラする。
品揃えのバリエーションは増えたが、それでも食指は動かず。
そもそもここ、外国人旅行者の姿がほとんど見えない。
閉店間際?で時間がよくなかったのだろうか。
売り上げあるのだろうか、儲かっているのだろうか、
大丈夫だろうかと余計な心配をしてしまう。
店によっては家みたいなもんで子供が宿題をしていたり、親子で食事を取っていたり。
お土産屋を生計としているんだろうな・・・
昼間だったらまだ客は入るんだろうか?団体のツアーが訪れたりで。
中は全てお土産屋というわけではなく、地元の人相手の食堂もあった。


通りを渡ってホテルのある方へ。
もう1つお土産屋の寄り合い施設を見つける。
こちらはこれまでと違ってしゃれた店が多い。
地元の画家によるものだろうか?絵が展示されていたり。
売られているアルパカ・セーターも質がよくなってデザインも気がきいている。


ほどよく時間をつぶして、ホテルに戻る。
ペルーではホテルにパスポートを預けることが多いので
パスポートのコピーを持っていたほうがいいよな、とフロントに持っていって頼んでみる。
「コピー」と言っても通じない。
あれこれ問答しているうちに「フォトコピー」と言うのだな、ということがわかる。
A4用紙の2枚の表と裏にコピーしてくれる。


カジノが営業していたので入ってみる。スロットマシンが中心。
よく見るとポーカーかブラックジャックだったか忘れたけどカードゲームができるマシンもあった。
コインを入れればいいみたいなんだけど、ソルなのかドルなのか分からず。やめておく。
観光客の姿はほぼ皆無で、遊んでいるのは地元の人ばかり。


移動待ち。ロビーで隣に座った夫婦の旦那と話す。
テレビを見ていたらちょうど
ヤンキースレッドソックスで、井川と松坂が投げていたという。


フォルクローレ・ディナーへ。
地球の歩き方にも載っている「ドン・アントニオ」という店。
3部構成となっていて第1部がフォルクローレの演奏、
第2部がペルー各地の民族舞踏、第3部がラテン音楽の演奏。
このうち、第3部まで見てると夜が遅くなるということでこの日は第2部まで鑑賞となる。


この店はビュッフェ方式。
正直、「えーまたか」と思う。僕としては全然嬉しくない。
しかしここのビュッフェはアルパカのカルパッチョ
クイ(山岳地帯のモルモット)の姿焼きがメニューの中にある。
前菜、メイン、デザートにコーナーが分かれている。
ビールはクスケーニャ。1本だけにしておく。3ドル。
食べながら始まるのを待つ。広い店内は団体の観光客ばかり。
日本人のツアーが他に2つ、欧米人のツアーが1つ。


ディナーはツアーの全員が参加したわけではなく、何人か欠けていた。
夫婦共に不参加のところもあれば、どちらかだけ参加のところも。
疲れが出てきて、大事を取ってホテルで休んでいるのだろう。
お土産用に料理をパックにつめて帰る。


テーブルに現地のおばさんが絵葉書の束を手に現われる。添乗員のKさん曰く、
午前中にクスコの空港を出たところでカメラマンが撮ってた写真を
絵葉書にしたものだそうだ。1人1枚1ドル。
1人1人回って絵葉書を置いていく。
僕のはなぜか2枚あった。
なのにどちらもカメラマンを見て警戒しているので苦虫を噛み潰したような顔。
ものすごくいけてないが、せっかくだから買うことにする。2ドル。
遠く異国の地で自分の写真が処分されるってのも嫌だし。
絵葉書にするって言ってもプリントして作るのではなくて、
自分の写真がシールになっていて貼ったりはがしたりできるというもの。
売れなかったらそのシールをはがして
別の団体の別の誰かのを貼って再利用するだけ。
旅行者の写真の周りに太陽の神殿やサクサイワマン遺跡など
クスコの名所をあしらっている。


クイは匂いも味も苦味というかクセが強くて僕は途中で断念。
アルパカはまあまあ。言われなかったら何の肉か分からなかったと思う。
酢漬けの赤唐辛子みたいなのがあって、
まさか唐辛子そのものじゃなくて赤ピーマンだろうと思って食べたら
唐辛子だった・・・
口の中がヒリヒリしてその後食べられず。


第一部のフォルクローレが始まる。
5人グループ。太鼓、ケーナ、笛全般、チャランゴ、ギター。なかなかうまい。
新宿駅南口や上野公園で演奏しているグループとは格が違う。
70年代から演奏しているってことでもう30年以上!
メンバーは2人入れ替わったそうだ。
普通のフォルクローレも演奏するが、
クラシックの曲をアンデス風にアレンジしたものもレパートリーの半分ぐらいあった。
ベートーベンの第9やモーツァルトトルコ行進曲、バッハの「主よ、人の望みの喜びよ」
定番の「コンドルはとんでいく」は普通に演奏してもつまらんということなのか
コードだけ弾いてあとは分かりやすいメロディー皆無の、
独自の解釈というかアバンギャルドな演奏。
サイモン&ガーファンクルのカバーに代表されるような郷愁、一切なし。
30年もやってたらこういうこともやりたくなるよな・・・
第1部の演奏が終わって彼らの CD を僕は買った。15ドル。


第2部は民族舞踏。
怪物のお面をかぶって出てきて、村娘と踊るもの。
村娘が村の男にさらわれるもの。
村の男同士がおたがいにムチというか紐で打ち合うもの、など。
彼らはアンデス土産の人形をテーブルの上に置いていく。
露店や土産物屋で売っているものより質がいい。
踊りが終わってから5ドルと言われるが、誰も買おうとしない。
彼らはチップ代わりにこの人形を売っているのだろう。


店を出てバスに戻り、ホテルへ帰る。
アルマス広場の通りは22時を過ぎても人通りが多い。


シャワーを浴びる。
昨晩に引き続きピスコを飲もうとする。
洗面所のグラスを使おうとしたら手が滑って落としてしまう。
飲み口の部分が半分割れてしまった。
それでも他にないので、
割れたグラスでピスコを飲んでその後歯を磨いて口をゆすいだ。