ツアーでペルー その36(4月27日)

イカの砂漠


休憩所の中では添乗員のKさんが待っていて、
「ホテルに戻れることになりましたよ」と吉報。
じゃあ、バギー乗れるじゃんと盛り上がる。勢いで申し込んでしまう。
新婚夫婦と熟年夫婦は残って、F君と若い夫婦、それにKさんの5人で。


飛行場の駐車場に黄色と赤の派手なバギーが何台か停まっていて、
そのうちの1つに僕らは乗り込む。かなりきついシートベルトをする。
運転手が1人と、控えの運転手なのだろうか、助手席にもう1人。
目を保護するためのものなのだろう、黄色いゴーグルをかける。
出発前にゴーグルをかけた写真を撮ってくれる。


飛行場の外に出て、すぐ裏に広がっていた砂漠へ。
走ってしばらくは道があったけど、途中門があってそれを抜けると完全にオフロード。
砂の上を縦横無尽に走り出す。
ガタガタ揺れる。揺れるどころの騒ぎじゃない。右に左に車体が傾く。
山を勢いよく登っていって、一瞬車体が浮く。そして急降下。
ジェットコースターに乗っているかのよう。
「アーハッハッハ」「ハハハハハ」僕ら4人は笑いが止まらない。
「楽しーっ!」「サイコーッ!」の連発。
Kさんはこういうの苦手なのか、「キャーッ!!」「怖いーっ!!」と終始絶叫。
幾多の丘を超え、バギーはどこまでも突き進んでいく。
「どこまで行くんだよーっ!?」「いいじゃん、アハハーッ!」
このツアーの中で最初で最後の、我を忘れてみなハイとなった瞬間。
まず間違いなく、最終日のこのときが一番楽しかった。まじで。


とある丘の上に着いて、バギーから降りる。
サンドボード・タイム。1人1人ボードを渡される。
白い無地のボードの上には金具こそないものの、足を固定するマジックテープが。
しかし、立って乗るのではなく腹ばいになってボードの上に寝そべる。
ボード先端部に括り付けられた左右の太い紐をぎゅっと握る。
1人ずつ砂の山から下っていく。「イエーッ!!」とか叫びながら。
僕の番になる。バギーのドライバーが手を離すとスルスルと滑り始めて、加速が始まる。
砂煙巻き上げて滑走。っつうか疾走、いや、爆走。
重力がかかって身動きもままならぬほどのスピードになる。
腹ばいになって滑るわけだからすぐ目の前に砂、砂、砂。
その臨場感たるやただものじゃない。
最高っすわ。
斜面の底で「もう1回やりたいね!」と言い合っていたら、
バギーで迎えに来て2回目に。
若夫婦の嫁さんが最初に滑ることになってデジカメを預ける。
下から、滑ってる僕らを1人ずつ撮ってもらった。


いやー、楽しかった。これは心の底から楽しかった。
「ペルーと言ったらサンドバギー」そんな標語があってもいいね。
隠れた穴場。ナスカの地上絵を見に行く若い人みなにお薦めする。


バギーは帰り道も跳んだり跳ねたりサービス満点。
そして次は、遂にナスカの地上絵。


・・・事件はここで起こる。
デジカメの電源を入れると、シャッターが開いて
ウィーンとレンズが前に出てくるもののすぐに閉じて電源オフとなってしまう。
砂がどこかに入ったようだ。
でもそれがどこなのかわからない。
次のセスナに乗り込む3組目の8人総出で、あーでもないこーでもないと試してみる。
砂の挟まってそうな箇所に息を吹きかけてみたり、逆さにして振ってみたり、
バッテリーを抜いてみたり。
若夫婦の嫁さんは自分のものでもないのに、泣きそうになる。
「ごめんなさい」と何回も謝られる。
でもまあしょうがないじゃん、としか言いようがない。
「もう1度だけ電源抜いてみるってどうですか?」「・・・それ、やってみたよ」
F君は「残り10枚しかないですけど、僕のデジカメで撮ってもいいですよ」とオファー。
でも、それもなんだか悪いし、いいよいいよと断る。
最終日だったので諦めがついた。
地上絵も素人が写真撮るの難しいみたいだし・・・


セスナに乗る時間となる。
12人乗りで残り4人は別なツアーの人たち。
3人は日本人でもう1人はアメリカ人っぽかった。
セスナに乗る。ものすごく狭い。
身をかがめて入って、座席まで身をよじらせながら進んでいく。
操縦士は正副2人。
日本人観光客をこれまで多く乗せてきたからか、片言の日本語を話す。
操縦席には「Chips Welcome」「ちっぷ ありがとうございます」
と書かれた紙がぶら下がっていた。


セスナが離陸する。
ナスカまでは20分。イカの上空を飛ぶ。
砂漠、おもちゃのような市街地(砂色の町、ポツポツと植えられた木々)、
無数の小さな山脈(チョコアイスのような色をしている)、
涸れて白い筋だけが残った川、まっすぐに走るパンアメリカン・ハイウェイ。
まだかなまだかなとドキドキしながら眺める。
僕の隣に座っていた白人男性は
操縦士にビデオカメラを渡して景色を撮ってもらっていた。


やがて高度が多少下がって、
副操縦士によるアナウンスとともに、地上絵観覧の始まり。
英語で説明した後、日本語でも。
「ツギ、イヌ、ヒダリ、チョットマッテ」
右に旋回して地上絵が大きく見えるように近づいて、次は回りこんで左から旋回。
左右両側に座った人どちらも写真が撮れるように。
日本語に堪能なわけではないので、
右に旋回して英語では「on the right side」って言ったりするのに、
日本語では間違えて「ヒダリ」と言ったりする。なんだかちょっとお茶目。


地上絵の数々:
宇宙飛行士、犬、猿、手、木、コンドル、蜘蛛、ハチドリ、サギ、オウム、星、家族。
たくさん見ました。見れるものは全部見たっつうか。
しかも非常にきれいに。
操縦士も「Super Clear Day」って言ってた。ついてる。


そんで地上絵について考える。
いやー・・・
これってなんなんだろうね。不思議としか言いようがないよ。
月並みな感想だけど、
ほんと、いったいなんのために、誰のためにこんな巨大な図形を描いたんだろう?
天文カレンダー?宇宙人へのメッセージ?古代の飛行場?
あと、どうやってこれを描いたのか?
なんらかのコミュニケーション。
現代の我々にとっては規格外のコミュニケーション・・・


ナスカの大地に非常に分かりやすく地上絵が描かれているわけではない。
幾何学模様みたいなのはその周りにいくらでも散らばっている。
地上絵と同じ時代のものなのか、
それとも20世紀以後なんらか刻まれたものなのかよくわからず。
道路も普通に近くを走っている。


「手」や「木」の近くの道路脇に見晴台のようなものが立っている。
地上絵の研究に生涯を捧げたマリア・ライへの名前が付けられた観測塔。
もしまたいつかペルーに来ることがあったら、
今度は地上から眺めてみたいよ。
そしたらその大きさがまた別の側面から体感できて、感激も深まるだろうね。


地上絵の真似したくなる人ってのもやはりいるようで、
ナスカの大地に地上絵クラスのでかさで自分の名前を彫った人がいた。
確か「DANIEL ANTONIO」


おまけ。Google Map でナスカの地上絵を見るサイトを発見。
http://www.drk7.jp/MT/archives/000858.html


セスナが飛行場に降り立つ。
あっという間のフライト。束の間の夢のよう。
これでこのツアーの観光は全て終了・・・


書き忘れてた。サンドバギーから降りて今からサンドボードだというとき、
僕は前の晩に空けたピスコのミニボトルを取り出して、
そこにナスカの(というかイカの)砂漠の砂を詰めた。
日本に持って帰って、机の上に飾ろうと。サハラ砂漠の砂と並べて。