ティッシュを配る

自分にはこれはできないなあという職業やバイトが世の中にはたくさんある。
(数えたことがあるわけではないけど、
 挙げていってみたらどれもこれもなんだかんだダメ出しすると思う)


そのうちの1つがティッシュ配り。
あれは辛いね。
道行く人に配っても、みんな「あえて」無視していくでしょう。
ただ突っ立ってティッシュをちょろっと差し出してダラダラやってる人も多いけど、
ムリに笑顔を作ってでも明るい雰囲気を醸し出して、
「よろしくお願いしまーす!」と元気に声をかけたり一生懸命にやってる人も結構いるもんで。
なのに、それでも、無視して受け取らない。
「がんばってるなあ」と思ったところでいらないものはいらないわけであって。
花粉症の季節でもない限り。


ひたすら無視され続けるというのは人としてとても辛い。
これができる人、割と長い間経験した人は、かなりタフだと思う。感心する。
電話してマンションの販売をするなんてのも同様だ。


職業というものは「拒絶」という観点から分類できるのではないか。


ティッシュ配りは不特定多数の人から
 即座に「無視される」という小レベルの拒絶を受ける。
 どれだけ無視されても、一定量ティッシュさえ配れれば仕事は終了する。
 また、場所/範囲は今、自分が立っている一箇所だけとなる。


・ある地域を担当する飛び込みのセールスマンは
 より狭い集合に属する人たちから「買ってくれない」=営業ノルマに達しない
 というより高いレベルの拒絶を受ける。
 ノルマは個人のものだから、自分の任されたエリアの中を売れるまで回り続けなくてはならない。


・国内メーカーのマーケティング担当や広告担当は投入した製品について
 各地域ごとの売上状況の報告を受ける。
 今回こういうことを試みたが、これだけしか売れなかった。
 全国規模となるので範囲だけ見るととてつもなく広いが、売れなかったところで即座にクビはない。


横軸にどれだけの範囲の人から拒絶を受けるか。
時間当たりの人数とカバーする面積の掛け合わせ、つまりなんらかの密度みたいなものとなると思う。
縦軸にその人が負うことになる傷の度合い。
単純にこれは共通のルールでストレスチェックを行なうでいいと思う。


これでプロットすることにより、その職業は
・・・なんてことを今考えていたが、「だからなんだ」って話ですよね。


でもこれ、就職活動のときにあったら「参考意見」としては便利じゃないか。
各座標(その職業が具体的にプロットされた地点)における
具体的な給与水準も図示できたら面白いはず。
「ああ、××って縦も横もとんでもないところにあるから、こんなに給料が高いんだなぁ」みたいな。


まあたいがいの学生は金よりもストレスの少なさを基準にするんだろうけど。


僕も、そう。
今思うと「拒絶の少なさ」を基準にこの業界を選んだのではないか?無意識のうちに。
IT業界だとお客さんの会社から
「この見積もりは高すぎる」「この設計は要件を満たしてない」と言われるか
下請けの会社からブーブー言われるぐらいのもんで。
あるいはコンピューターから「プログラムがいけてない」と拒絶されるか・・・
ECサイトを構築したところでエンドユーザーが不特定多数過ぎて抽象度高いし。
ユーザーサポートで電話対応窓口だったら大変だけど。


とはいえ、それなりにこの業界も
「拒絶」「断絶」「ディスコミュニケーション」なんてはのざらにあるもんで。
意見の食い違いとかね。それの調整ばっかりなんじゃないかな。
SEともなると仕事の大半は。あらゆる意味での、「意見」の食い違い。
生き残れる人、出世する人ってのはそういう「拒絶」に強い人ってことになる。
あるいはヒューマンな「拒絶」をとことん避けて、先端技術のスペシャリストとなるか。


僕もほんとは後者になるつもりだったんだけどそういう素養はなく、
日々ちょこちょこと打たれていくうちにそこそこの大人になった。
そんなことを考えると、別にIT業界じゃなくてもよかったんじゃないかと思う。