「気になる女の子」

床屋で髪を切っていたらラジオがかかってて
ミッシェル・ポルナレフの「シェリーに口づけ」がリクエストされてた。
「あ、この曲なのか!」と新鮮な感動が。知ってるようで、知らなかった。
いい曲だなあと思う。
すっごい簡素なトラックをバックに(ベースと効果音だけ、ぐらいに聞こえる)
あのキャッチーなメロディーラインを歌う。


聞きたくて CD を探す。
ミッシェル・ポルナレフのベストを買ってもいいんだけど、
たぶん「シェリーに口づけ」しか聞かないんだろうなあと思い、
(ファンの人には悪いのですが、この曲だけの一発屋なんじゃないかと・・・)
洋楽ヒット曲のオムニバスみたいなのがいいんじゃないかと、物色してみる。
そんで見つけたのが、これ。
「洋楽ベストヒット 100」
http://www.hmv.co.jp/product/detail.asp?sku=1204238&track=1
5枚組みで \3980
すげー安い。この手のものでは最終兵器か?
100曲も「日本で愛された」洋楽が詰め込まれてるわけですよ。
一気に聞いたらものすごくお腹いっぱいになった。


物心ついてから今まで、よく耳にしてたのに
曲名も歌ってる人も知らないままでいた曲ってのがいくつか、今回の CD ではっきりした。
*グロリア・ゲイナー「恋のサヴァイヴァル」
*スティーブン・ビショップ「オン・アンド・オン」
*リタ・クーリッジ「ウィアー・オール・アローン」
ダイアナ・ロスマホガニーのテーマ」
スモーキー・ロビンソン&ザ・ミラクルズ「涙のクラウン」
*リップス「ファンキータウン」
などなど。
マホガニーのテーマ」なんて知ってる人からしたら常識だし、
ちゃんとよく聞けば「ダイアナ・ロス」じゃないの?とわかりそうなもんだ。
まだまだ勉強が足りないなあと思った。全然足りない。


そんな中、今回最大の収穫が
メッセンジャーズ「気になる女の子」
1971年のヒット曲ってことになってんだけど、マジで知らなかった。このグループ。
典型的な一発屋らしい。
でもこの「気になる女の子」って最近 CM で使われてたみたいで、
確かにどっか聞き覚えがあるんですよね。
5枚組みの中では「シェリーに口づけ」の次だったから
この曲を聞くたびにその次の「気になる女の子」を聞くことになり、
それが耳から離れなくなり、やがてこの2曲だけを毎日朝晩繰り返し聞くことになった。
もうこの2曲と出会えただけでも \3980 は僕にとって安かった。


女性コーラスが「アハーンアハーンアーハハンハーン」と非常に印象的なイントロを歌って、
そこに男性ボーカルが同じく「アハーンアハーンアーハハンハーン」と重なっていく。
この出だしだけで最高。あとはノリと勢いだけで3分間歌って、潔く終わる。
これぞポップ・ミュージックだ、と僕は興奮した。
日常生活を3分間だけ切り取って、どっか別な場所に連れてってくれる。
僕たちの知らなかったどこかカラフルで楽しい場所へと。


この曲だけで終わった一発屋ってのがまたいいんだよね。
その後彼らがどうしたのか、誰も知らない。この曲だけが何十年と生き続けている。
これまでずっといろんな洋楽を聞いてきて
2周も3周もグルングルンと回っているうちに
今、こういう曲が最もラジカルなように思えてくる。
完璧なポップ・ソングをただ1曲だけ残して、この世から消えていく。
ものすごくラジカルで、ものすごくかっこいい。

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最近の CD の中で、「おっ」と思ったのが、Joni Mitchell のトリビュート。
メンツが超豪華。全員大御所級。
「Tribute To Joni Mitchell
http://www.hmv.co.jp/product/detail/2538887


Sufjan Stevens と Caetano VelosoSarah McLachlan が1つに並ぶか・・・


1. FREE MAN IN PARIS - Sufjan Stevens
2. THE BOHO DANCE - Bjork
3. DREAMLAND - Caetano Veloso
4. DON'T INTERRUPT THE SORROW - Brad Mehldau
5. FOR THE ROSES - Cassandra Wilson
6. A CASE OF YOU - Prince
7. BLUE - Sarah McLachlan
8. LADIES OF THE CANYON - Annie Lennox
9. MAGDALENA LAUNDRIES - Emmylou Harris
10. EDITH AND THE KINGPIN - Elvis Costello
11. HELP ME - k.d. lang
12. RIVER - James Taylor


これもミュージシャンたちの間では最大級の賛辞を集める
Joni Mitchellだからこそなせる業か。
普通、この手のトリビュートものだったら目玉が3人ぐらいいて、
他はよくしらない新人が混ざっていたりするじゃないですか。
レコード会社主体の企画だったりすると特に。新人の紹介の意味も込めて。
これ、そういうのが全くなくて嬉しい。聞きごたえありすぎ。


ここまで大物たちばかりだと、カバーのなんたるかってのがよくわかる。
コピーに終わってるようなのあるわけないんですよ。
曲を完全に自分のマナーに合わせてしまっているか、
原曲からかけ離れて「これってジョニ・ミッチェルだったっけ?オリジナル?」と思わせてしまう。
Sufjan Stevens や Prince が前者で、Bjork とか Caetano Veloso が後者。
これらの人たちの個性の強さってのはオリジナルを聞いててもあんまり意識することはなくて
こういうカバー集の中で並んでみて初めて、わかるという。


それにしても、Annie Lennox の声は Joni Mitchell そっくりだ。
カバーなので似せようとしているのか。


選ばれた曲はワーナー70年代半ばの名作群
「BLUE」「Court and Spark」「夏草の誘い」といった辺りが多い。
その後のゲフィン時代は数えるほど。
なるほどね、と思う。

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と、ここまで HMV のサイトを参照しながら書いていたら「New Order 解散発表」のニュースが。
http://www.hmv.co.jp/news/article/706280107


そうか・・・
90年代以後はのんびりとした活動だったので
グループというよりはプロジェクトみたいなものだったけど、
この世でも最も好きなバンドなので、ちょっと寂しい。