「Long Season」「リバーズ・エッジ」

昨日の夜、フィッシュマンズの新装再発された「SEASON」のシングルを聞いていた。
http://www.hmv.co.jp/product/detail/1395043


こんなことを思う。
フィッシュマンズの「Long Season」って僕らの世代、
90年代半ばぐらいに学生時代を過ごした世代にとって、
当時を代表する音楽なのではないか?
最も売れたとか、耳にされた、歌われた、という意味ではなくて、
時代の空気を切り取ったものとして。
僕らの毎日の日々は実際にはこんなかっこよくはなかったけど、
この空気に憧れたってことで。


漫画で言ったら岡崎京子の「リバーズ・エッジ」だな、とすぐ思い浮かぶ。
(昔からよく言うように僕は「Pink」の方が好きだけど)


一言で言えば「伝説になった作品」ということになる。


何がリアルなのか?
リアルなものにはどんな意味があるのか?
じゃあリアルじゃないものにはどんな価値があるのか?
そういうことを、いろんな人が問いかけ、答えを探していたように思う。
そして「Long Season」と「リバーズ・エッジ」はその最も的確な答えとなった。
この世界とはどんな場所なのか、僕らはそこで何を思うべきなのか?
発せられた答えは単純明確なものではない。
一言ではうまく言えない。そこが1つポイントなのだろう。
その作品の中に埋め込まれた感触や手触りのようなもの、としか言いようがない。


映画では何がそれに該当するだろう?
今のところ僕は思いつけないでいる。
パルプ・フィクション」?「トレインスポッティング」?
違うだろう。むしろそれは「ファイト・クラブ」の方が近い。
だけど、「ファイト・クラブ」もまた、違うと思う。
強いて言えばウォン・カーウァイの「恋する惑星」だろうか。
日本、特に渋谷を中心とした東京での受け入れられ方を含めて。


文学だと?
もっと分からない。
ねじまき鳥クロニクル」?まさか、そんなわけない。
とにかく、誰もが納得する「代表する作品」というのはなかったように思う。


僕がもの知らないだけかもしれないけど、
漫画や音楽ではすぐ思いついて、映画や文学ではそうではないのって、
それってそのままこの国でのそれらのジャンルの
「時代との添い寝感」とでも言うべきものの成熟度に直結しているのではないか?
映画や文学は皮膚感覚で僕らの時代を描くことができなかった。
自主映画にはあったのかもしれないけど、実際あったはずなんだけど、不幸にして僕は知らない。
97年に PFF のグランプリを取った「シンク」を初めて見たとき、ものすごく興奮したことを覚えている。
だけど「Long Season」と「リバーズ・エッジ」に並ぶかというとそうでもないし、
そもそもそんな多くの人が見てるものでもない。共有されていない。


演劇やアートやその他サブカルチャーには当時何があっただろう?
僕らの時代の、あの空気を体現できたものはあっただろうか?


などなど。
僕らより1つか2つ下の世代だったら、何が該当するんだろうね。