安いコーヒーの魔力

フロアの一角にホットコーヒーを販売する機械がある。
100円でブレンドとかアメリカンとか、エスプレッソにカフェモカやココアもある。
砂糖とミルクの量を選べて、お湯増量なんていうオプションもある。
とりたててうまいわけではない。
でも他に選択肢は缶コーヒーしかないため、こればっかり飲んでいる。
朝出社して2杯か3杯飲む。
10時頃に飲んで昼休みに飲んで、夕食後にも飲む。
1日のうちに5杯か6杯、多いときで7・8杯飲んでいることになる。
最大にして1日800円、この「コーヒー」に費やしているわけだ。
飲めれば何でもいいから必ず「お湯増量」ボタンを押して水増ししてる。
早い話、中毒。
仕事中の安いコーヒーには人を中毒にさせる不思議な力がある。
そして僕のような人間はコロッとやられてしまう。


コインを入れて出来上がるまでの30秒待つ間に、
居合わせた後輩と世間話をする。
あれこれ言われる。
「そんなの飲まないでインスタントにした方がまだましですよ?」
「1日500円として20日で1万ですよ!?
 オカムラさん最近せっせとCD売ってんでしょ?
 それがこんなコーヒーに消えちゃうってもったいなくないですか?」
などなど。もっともだ。


確かにマグカップを持ってきて
インスタントのコーヒーを入れたほうがはるかに安上がりだ。
少し高めのを買えば、味もいいだろう。


でもなぜなのかわからないが、僕にはそれはできない。
そうする気になれない。
理由はよくわからない。どうしてだろう?
心のどこかに抵抗感があるようだ。
フロイトだったら精神分析をして取り除くような異物が心の奥底に眠っている。


とかなんとか言って結局は「めんどくさいから」ってだけなんだろうけど。
給湯室に洗いに行くのがめんどくさい。
給湯室って女性の聖域のように思えて
男子たるもの足を踏み入れるべからずと思ってしまっているのは僕だけか?


(昔、茅場町にオフィスがあった頃は
 部門でコーヒーサーバーを持っていてただで飲めた。
 最後の方に差し掛かった人がフォルターを変えて、粉を入れて、お湯を継ぎ足した。
 いい時代だった。昔はよかった)


とりあえず今週からこの機械コーヒーを買うのをやめた。
今日で3日目。
禁煙・禁酒に近い。フロアにいるとムズムズする。
でも、やめられそうだ。なんとかなりそう。

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「コーヒーがとても好きそう」「こだわりがありそう」と時々人に思われる。
だけど好きは好きだけど、こだわりは全くなし。
なんでもいい。薄くてもいいし、苦くてもいい。


茶店に入ったときはいつもカフェオレ。
これまた特に理由はない。
ほんとはホットミルクを飲みたいんだけど、なんかお子様のようで・・・