銀塩

昨日の夕方、床屋に行った。
話を聞いているうちに、話題はカメラのことになった。
60代半ばのご主人は若い頃カメラマンだったのだが、
商業誌用の広告写真をクライアントにあれこれ指図を受けながら
日々撮っているのに嫌気が差して、
写真は自分の好きなように撮りたいと辞めてしまって
床屋になったという変わった経歴をもつ。
その当時、ニコンやライカなどカメラを70台は持っていて、
今でも30台は持っているのだという。


「デジカメはどうも苦手でね」と言われて
「ああ、いろんな余計な機能があって逆に不便ですよね」と僕が言うと、
そういうことじゃないと。
デジカメで撮った写真は後からいくらでも加工ができて、
銀塩」の写真とは全くの別物だと。
銀塩」の写真は被写体と向き合ってシャッターを押すその瞬間が全てで、
それが写真を撮るという行為の醍醐味なのだと。
なるほど、と思った。
1度プリントしてしまえば普通の人にとっては
どちらも一括りに「写真」ってことになるんだろうけど、
デジカメでそのとき撮ったものは「写真」ではなくて、
ただの「画像」と呼ぶべきなのかもしれない。


あれこれカメラ談義をきかせてもらったのだが、印象に残ったのは
昔のカメラ、昭和30年代のカメラはいわゆる工業芸術品としてとても質が高く、
調子が悪くなったとき今でも修理が可能なのだということ。
部品そのものはもちろん生産されていないとしても。
1920年代、30年代のライカはさらに素晴らしいという。


こういう話を聞くとカメラ、デジカメじゃなくて
フィルムのカメラをやってみたくなるんだけど
まだなかなか手が出ないね。
僕の場合どっちかというと撮る方じゃなくて
昔のカメラのコレクションに走りそう・・・