面影ラッキーホール

昨日の JANIS2 では、CursiveGrandaddy の未発表曲集を見つけ、まずはそれら2枚を買うことにした。
一通り洋楽のコーナーの棚を物色して、日本のコーナーに移る。
面影ラッキーホールのシングル
「パチンコやってる間に産まれて間もない娘を車の中で死なせた・・・夏」が目に留まる。
名前は知ってたけど、音は聞いたことがない。
帯を見たら吉本隆明がその詩を褒めていた。気になって買ってみた。
ジャケットは「The World Is Mine」の新井英樹
タイトル通りの人生を送った人たちの日常生活を非常にリアルな筆致で切り取っている。
まずはこれだけで素晴らしい。
帰りの地下鉄の中で歌詞カードを読む。
確かにこれはすごい。
「あんなに反対してたお義父さんにビールをつがれて」とかさ。曲名だけでグッと来る。
ちょっと引用します。
17歳で子供ができてしまって学校辞めて働き出して一緒に暮らし始めた、って歌。

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「若いときに産んだ子供はデキが悪いってねえなにしろ子供が可愛そうだよ」
なんて言葉が俺をいつしか一人前の「父親」にしはじめ
「みちこちゃん若い時から同棲して「あれ」毎晩お盛んなんでしょうねえ
なんて言葉がみちこをいつしか一人前の「母親」にしはじめた

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すごい言葉だなあ。力がある。
どこにでも転がってるありふれた現実というものを泥まみれの地面に引きずり出す力。
ここまで書けて初めて詩人と呼べるのだなあと。


他の作品も欲しくなった。
「好きな男の名前腕にコンパスの針で書いた」「俺のせいで甲子園に行けなかった」
いちいちタイトルが素晴らしい。
曲のタイトルだけで、そこに描かれている世界を垣間見てみたくて
アルバムが欲しくなるってのはそうそうない。


音楽的には和製ブルースとしての演歌を根っこに抱えたファンク。
イロモノっちゃあイロモノ。キワモノすれすれの。
どこからどこまでほんとなのかわからない類の。でも、マジなんだろうな。
なんつうかライトにいかがわしい。


「パチンコやってる間に・・・」はライブのDVDとセットになっていて
「あんなに反対してたお義父さんにビールをつがれて」は思いがけない名曲だった。
Flying Kids の「幸せであるように」の裏版のような。
ああいうスローなファンクで、ズブズブと心に滲み込んでいく。
「好きな男の名前腕にコンパスの針で書いた」も、そう。


今、「パチンコやってる間に・・・」のブックレットを読み直してる。
「夜のみずたまり」って曲の歌詞にこんな一説があった。


「こんな時にもあたしを欲しがるそんなだめなあんたが哀しいよ」


僕としては小島麻由美豊田道倫以来の詩人だ。