No Direction Home (仮)

(a)(b)(c)ともに大学生的年代。
映画の配役として考えるならば
女はかわいらしく、男はかっこいい方がいい。


(a)(b)車に乗っている。運転しているのは(a)で、助手席に(b)
どこかに向かって急いでるのでもなく。
のんびりとしたムードが車内に漂っている。
カーステから軽快な音楽。


(b) 「なあ、あれ。見て」
(a) 「あん?」
(b) 「女。立ってる。ほら、そこ」
(a)  特に興味もなさそうに運転を続ける。
(b) 「見えた?手、振ってる。何あれ?ヒッチハイク?持ってる、紙みたいなやつ。
    かわいくない?止めよーよ」
(a) 「・・・ああ」
(a)  車のスピードを落とす。(c) の前で止まる。
(b)  助手席の窓を開ける。
(b) 「もしかしてヒッチハイク?」
(c) 「もしかしなくても。乗せてくれる?でしょ?」
(b)  (a)をちらっと見る。かといって合意を求めてるわけでもなく。
(b) 「いーよ。オッケー」後ろを指差す。
(c)  ニコッと笑う。地面に置いていた大きなリュックサックを拾い上げて
   車の後ろのドアを開ける。素早く乗り込む。
(c) 「ありがと」
(a) (後ろの車のクラクションが鳴って)車を走らせる。
(b)  振り向いて、「どこまで?俺ら××まで行くんだけど」
(c) 「世界の果て」もう一度繰り返す。「世界の果てまで」
(b)  返答に困る。「・・・どこ?それ?」
(c) 「ねえ、いいとこ知らない?果てっぽいとこだったらどこでもいいんだけど?」
   笑顔で、言う。


郊外のコンビニの駐車場。
(a)と(b)が煙草を吸いながら立っている。
(a) 「なんかやばくねぇか?」
(b) 「でも、かわいいよ。顔が。からかってんだよ。
    暇なんだよ。どこでもホイホイついて来るんじゃねーの?やれるよ」
(a) 「俺はいいよ」
(b) 「あ、そう?こんなチャンス滅多にねーよ。女が乗せてくれって言ってくるんだよ?
    そもそもヒッチハイクなんて見たことある?これまで」
(a) 「ないね、ない」
(b) 「俺はあるけどさ、全国を寝袋一つで旅してます、みたいな。男。むさくるしいの。
    日本一週なんて旗なんかもっちゃってさ。乗せなかったよ。
    そいつのしょぼい冒険談なんか聞かされたくないしさ」
(a)  遮るように、「それにしても、世界の果てってなんなんだ?」
(c)  コンビニの袋を提げて出てくる。「おまたせ」
   袋の中には小さなペットボトルやポテトチップの袋がのぞいている。


(a)  後部座席でポテトチップを食べながら窓の外を見ている。
   流れ去る風景。
   真っ白にとんでいて、かすかにしか見えない。


走る車のショット。


風景。青空。


(続く)