青森帰省 その1

okmrtyhk2008-03-20


7時に目を覚ます。8時までウツラウツラする。
雨の音が聞こえる。昨日の夜からずっと降り続けているのか。


ボストンバッグに荷物を詰めるのは前の日までにあらかた済んでいる。
着替えやシェーバーを最後に詰めて部屋の外に出る。
傘を差して駅へと向かう。座りたかったので丸の内線に乗っていく。
端の方の座席に座って、ビニール傘は手すりに架けて、忘れたフリして置いていく。


東京駅。新幹線の改札をくぐる前に、駅弁を買う。
昨晩は銀座でコラーゲンしゃぶしゃぶ食い放題ってのに参戦して
死ぬほど食っておなかいっぱいのまま。それでも駅弁を食べずにはいられない。
9時半という時間だったせいか主だった駅弁は売り切れていた。
崎陽軒でシウマイを買おうとしたら普通の15個入りのが完売。
倍の数の30個入りにするか、それとも倍の値段の特製15個入りにするか。
どっちも値段的に変わらない。迷わず後者にする。うまかった。
さらに駅弁は中華弁当ってやつ。これは普通。


4連休にして旅立つ人が多いのか、
東京発八戸行きの新幹線は僕の見てる限り満席だった。
仙台で半分以上下りていった。


新幹線乗ってる間、ハヤカワから出ている
「ベスト・アメリカン・ミステリ」という短篇のアンソロジーの2006年版
「クラック・コカイン・ダイエット」というのを読む。
「ミステリ」と名前についてるけど、いわゆる推理小説ではなく。
トリックやどんでん返しの見本市では全然ない。
編者の前書きにあるように、作品中のどこかで犯罪に触れた、
アメリカの優れた短篇を集めた作品集というのに近い。
犯罪と言っても物々しいものではなく、
人という生き物がそもそも罪を犯して生きていくものであるのなら
そのことに自覚的な小説は全て広い意味でのミステリであって。
なので読んでるとそもそもが今のアメリカを描いた良質な短篇ばかり。
読んでて唸らされる。小説って面白いなあと久々に心ゆくまで堪能した。
冒頭の「船旅」ってのが特にすごかった。
短い文章の中に1人の人間の人生とそれが向かうものを描ききっている。
そしてそこにはちゃんと「奇妙の味」もあって。
以後、他のどれも、きちんと人間が描けてる。
トリックやどんでん返しが鮮やかに決まってる
ジャンル小説としてのミステリもあったり。読んでて胸がすく。
最近仕事が忙しいってことでおろそかにしてたけど
僕も小説書かなきゃとやる気が出てきた。
「これぐらい書けたら!」という憧れが一番のエネルギー、発奮材料になる。


ビールを飲んで、コーヒーを飲んで、読書の心地よい疲れがあって、
盛岡の辺りからうたた寝。最近いつもこのパターン。


八戸で乗り換える。
野辺地を過ぎて、物陰にちらほらと雪が見えるようになる。


青森駅到着。雪はないが、気温は低い。
東京じゃ今ダウンジャケットでは暑いけど、青森だとちょうどいい。
コインロッカーにボストンバッグを押し込んで、
お土産の「とらや」の羊羹を1本取り出していつもの床屋へと向かう。
久しぶりだったので驚かれる。
去年帰ったときはご主人が入院で休業してた。
もしかしたら今日行っても店が閉まってるのではないか・・・
と思いつつ通りを歩いていたら、やってた。


待ってる間、棚にあった「稲中」に目が留まって読む。
何年かぶりに読んで腹抱えそうなぐらい笑った。
これってこんな面白かったのか!いや、面白かったんだよ!!
東京戻ったら部屋に全巻あるので最初から読み返さなきゃ!と思った。
テレビでは生中継で??土井宇宙飛行士が
宇宙ステーションからスタジオの人たちの質問に答えていた。
なんと福田総理まで出てた。
あちこちで吊るし上げにされてる今、
暢気にこういう番組出てていいの!?と他人事ながら気になった。


顔を剃ってもらっていると床屋の電話が鳴って、母からだった。
「お母さん、銭湯に行くからだって」と言伝を受ける。
新幹線で青森に帰ってきたその足でいつも床屋に行ってるので、
そろそろ床屋で髪切ってんじゃないかって頃に僕を捕まえようとして店に電話をする。
切り終えて外に出て携帯を見てみたら母から着信があって留守電も入っていた。


夜店通りの古着屋を回る。さらにシャッターの下りている割合が高くなった。
来るたびに「寂れてるなあ」「でもこの不景気も底を打ったんじゃないか?」と思うのだが、
今度こそ本物か。もう両手で数えられるぐらいしか残っていないのかも。
閉店セールをやってる店もあった。
昔からの店もなくなっていた。
古着屋じゃないけど、CONVOYがなくなっていたのが残念だった。
いい店だったのにな。もったいない。遂に閉店か・・・
新町の通りに人が集まんなくなってアスパムの前に移転したけど、
それはそれで人通り少ないだろうから。大丈夫かなー、と心配してたら案の定。
今回いっきにバタバタ来たような印象を受けた。壊滅状態。終焉。
何があったんだろ。単に不景気ってだけでは済まされない何かがありそう。
BATHING APE もなくなってた。
EVISU はかろうじて残ってた。


AUGA の中の PAX で CD を買う。
これまた恒例の、東京では既に店頭在庫なさそうなのを物色するという初日の習慣。
MOBYHOTEL」の限定盤っぽい2枚組と Aqualang の日本盤。
他にもあれこれ買って聞きたいのはあったけど、東京でいつか買えると我慢する。


「さくらの」の食品売り場でカレー用のブロック肉を買う。
500g って言われてたんだけど安いパックのが足りなくて、精肉売り場で高いのを買った。


ボストンバッグを取りに駅まで戻って、その後バス亭へ。
ちょうど行ったばかりで30分近く待って次のバスに乗る。
僕の家のある路線はあんまり本数が多くない。
本を読み疲れて窓の外に目をやると
パチンコ屋が潰れてその跡地には大きなドラッグストアができて、
その近くに別のパチンコ屋ができて。そういう光景。


小学館文庫から出ている中上健次選集の「岬」を読む。
1976年の芥川賞を受賞した代表作の1つ。
書店にはもうないから、amazon で探して取り寄せた。
遅ればせながら生まれて初めて中上健次を読んだわけですが。
すげーよ・・・
さすが「日本のフォークナー」と呼ばれるだけあるな・・・
こういう書き方、こういう文体、ありそうでなかった。
うまい下手を超越して言葉の一文字一文字に魂を込める力がハンパじゃない。
聖なる地虫がウジャウジャとこの世の全てを埋め尽くし、這い回るかのよう。
30過ぎた今読んでこれだけの衝撃なのだから、学生時代に出会ってたら耽溺してただろう。
それは幸か、不幸か。


バスを降りて18時近く。外はまだ明るい。
この季節この時間に空はどこまで明るかっただろうか?
そういうこと、忘れてしまっている自分に気付く。


家に帰り着く。
荷物を置いて、すぐその足で銭湯へ。
帰ってくると餃子が焼きあがっている。母は息子の好物を用意して待っている。
よゐこの出ている番組を見ながら、もう食えないってとこまで餃子を食べる。
食べ終わって部屋に引き上げる。
普段使われていない僕の部屋の真ん中に母の服を架けたハンガーラックが置かれている。
めんどくさいから、他の部屋に移すことはしない。
食器を洗い終えた母から「拭いてよ」と頼まれ、母と並んで流しに立つ。
先日京都で行われた、会社の後輩の結婚式の話をする。


前に使ったのは半年前の夏か。
洗面所にて、仕舞われていた僕のコップや歯ブラシを取り出す。
スリッパも仕舞われていた。
電気スタンドやミニコンポの電源ケーブルを延ばす。
部屋のストーブをつける。
お茶を沸かすけど飲むかと聞かれて、部屋まで持ってきてもらう。
買ってきたCDを聞く。本の続きを読む。