終わり

恋とは幻である。
最近、そんなふうに思うようになった。


そこにあるのは思い込みだけ。
「僕はあの人のことを好きかもしれない」
という思い込み。


そしてそれは
「もしかしたらあの人は僕のことを好きかも」
という間違った思い込みに発展していく。


そういうことだったと気付いたとき、
僕はたまらなく寂しい気持ちになった。


幻を追い求め、追い求め続けて、
指の間から零れ落ちていくということもなく
全てが消えていく。
その繰り返しがあったというだけ。


この考えを突き詰めていったとき、
片思いこそが素晴らしいということになる。
たった一人の白昼夢の中でまどろんで
そこから出て行こうとしない。
「それでいいんじゃないか」と思う。
どうせ、幻なんだから。


傷つくことを恐れて、
だけど最後には、苛立って、傷ついて、
悲しくなって、いろんなこと、考えるのやめて。
そんな日々が続いて、切ない気持ちになる。
その1つ1つが幻想に過ぎないというのに、
わかってるつもりなのに、
どうして僕はいつも振り回されてしまうのだろう?


ちょっとしたことに嬉しくなったり、希望を持ったり。
その1つ1つに裏切られるというのに。


夢や希望というものもまた、きっと幻なのだろう。
悲しさや寂しさというものもまた。


この世界。目の前の風景。
僕やあなたという存在。
いくつかの言葉。記憶。包み込むような。
その、全て。
生きるということも、
死ぬということも。