「耳になーんかついてると思ってつまんで引っ張ってみたら、それ、ピアスで。
そしたら目ぇバチッと開いて女だったんだけどさ、
それまで寝てて、口開いてて、
ンガーッて。あんな顔初めて見たよ。
俺の隣にいてさ、横になってるわけよ。
サマーセーターっつうの?水色の着て。
俺も酔っ払ってたからさ、
跳ね起きてそいつ『ちょっと何すんのよ!?』ってえらいケンマクで。
大声なって。みんな見てる、こっち。
んで『ごめん』って謝ったんだけどさ、も一回『ごめん』って手まで合わして。
で、『ピアス』って。
『ピアスがなによ?』
『怒んなくてもいいじゃん』
いや、そりゃ俺が悪いんだけど、まあ、その、怒って帰っちゃった。
『気分悪い』って、カバン持って。
…ピアスの穴がさぁビローンって広がって。ありゃ痛かっただろうな。
そういえばさ、昔、小さい頃、
例えば直径5ミリぐらいの輪っかみたいなのが耳からぶらさがってたら
それがそのまま耳に穴開いてるって。
思わなかった?ない?ない?
そうじゃないんだよね。
オマエは開いてるからさ、知ってるだろうけど。
小さな細い針金みたいだって知ったとき、騙されたと思った。
…あー。いや。悪いことしたなあ。
今頃どうしてるだろうなあ。
夢とかさ、見てたんだよ。それがぶち壊しになって。
そう思うと悪いことしたなあ。
あーどんな夢見てたのか。
それが思いもしない苦痛で引き裂かれるわけよ。俺なら怒るよ?だろ?
開けたとき痛くなかった?俺痛いのダメなんだよね。
女の人ってさ、みんな開けてんじゃん。
あれって何を思って開けてんだろ?
みんな開けてんから?美しくなりたいから?
開ける瞬間って何思ってんだろ?
『いたい』って、そんなチクって、どうだった?」