サマソニ 2008 (5/5) Lostprophets / Sex Pistols

マキシマム・ザ・ホルモンが終わって、見たいものは特に無くなり、
朝から何も食べてなかったので、食事に。フードコートに入る。
日本各地、世界各地の食べ物の店がたくさんある中で、
「そうだ」とまぐろ茶屋のことを思い出す。
去年気になったけど、昼の行列がすごくて諦めたんですよね。
今年は夕方だったのでそれほどのことでもなく、しばらく並んで買えた。
上トロ丼 1200円、焼津揚げ 300円、ビール500円。
上トロ丼はまぐろの中オチ、焼津揚げはまぐろほほ肉を揚げたもの。
空いているテーブルを見つけて食べる。
いやーうまかった。フェス飯とは思えないぐらいうまい。
上トロ丼も焼津揚げも共にマヨネーズをつけたんだけど、
これがまたビールによく合うんだよね。
この店、普通に東京に欲しい。


フードコートのステージにはお笑い芸人が立ってて、
この火のトリということでダイノジを見ることができた。
2006年と2007年のエアギターの世界チャンピオンがそのエアギターを披露。
生で見ることができてよかった。
だけどネタそのものは面白くもなんとも無かったなあ。


Mountain Stage に戻る。
Lostprophets が演奏している。
このバンドのことはよく知らないが、観客が多く、とても盛り上がっている。
ハードコア系ミクスチャー?
キーボードがターンテーブルを操ったり、デス声・グロール声を披露したり。
でもヴォーカルが美形。
総じてハードな音を出すポップミュージックってとこかな。
客観的な完成度は高いけど、破綻もよじれもない。僕の心に何も突き刺さってこない。
ふーん、で終わり。


Lostprophets が終わって、モッシュピットの中へ。
遂に登場、Sex Pistols
最前列近くに行くと、赤や金色に染めたモヒカンの姿がチラホラと。
ステージの上はドラムセットと、マイクが3本。モニター類を除くとたったそれだけ。
後方に黄色の幕を掛ける。「Sex Pistols Combine Harvester Tour 2008」
2台のコンバインにはそれぞれ「Nowhere」「Boredom」と書かれている。


Lostprophetsが終わって、30分か40分。意外とあっさり始まった。
ティーヴ・ジョーンズ、ポール・クック、グレン・マトロック、
そしてジョニー・ロットン
ジョニー・ロットンジョン・ライドン)は最近の写真をいくつか見ていたから、
どんなふうに年を取っているのかよく分かっている。
昔の、聡明で感受性が強そうで、
とにかくいろんなものに怒りまくっていた頃とは隔世の感有り。
今はもう、ただの変わり者のオヤジ。腹も突き出てるし。
日章旗とイギリスの旗と両方を体に巻いて登場。


バックの3人のタイトな演奏に合わせて、ジョニー・ロットンが歌う。
目を閉じて聞くと「おーピストルズだ」と思うが、往年の巻き舌はなし。
曲の合間に「日本の少年少女は静かだね」と言って歓声を煽ったりする。
よろよろのおばあちゃんの真似をして、
「ジョニーおばあちゃんには聞こえないよー」なんて茶目っ気を披露したり。
こういうのって、77年当時にはなかったんだろうなあ。
PiLのライブアルバムだって客席に向かって「シャラップ」と冷たく突き放していたのが
ある種ハイライトとされてたくらいだし。
何よりもここのところが、感慨深かった。


とにもかくにも古典芸能の再演会なんだよねえ。
4人ともそれを割り切ってやってるし。
今聞くと Sex Pistols の楽曲ってポップでとても聞きやすい。
この30年で時代が追い付いたのか、それとも虚勢を張ったポーズに騙されてただけなのか。
30年変わらず人気があるから、再度集まって金のためにやってます。
なので演奏するだけです。観客を煽ったり、ごくごく普通のロックコンサートやります。
それ以上のことは、君らも求めてないだろ?
なのに僕らは、「うわー!!ピストルズだっ!!」と揉みくちゃになりながら歓声をあげ、
こぶしを突き上げ、中指を立てる。


ほんとなんなんだろうね、パンクって。特に、77年のパンクって。
もうただのシンボルでしかなくて、僕らはそこにポップな幻想を見出してるんだろうね。
The Clash だったら絶対再結成なんてしなかっただろう、というかしなかった。
わざわざ嫌がらせのように再結成してあえて醜態をさらす、
僕らが勝手に抱いていたイメージを地に引きずり下ろす Sex Pistols ってのは
世の中をあざ笑う存在としてやっぱ秀逸だわ。
77年当時も「お前らバカじゃねえの?」って言ってたし、
30年後の今もやはり別な意味で「お前らバカじゃねえの?」と言ってせせら笑ってる。
タイトな、以外としっかりした演奏で古典芸能となり果てたパンクナンバーを演奏する姿を見て、
じゃあ「ロックの本質って何なのよ」っていう。
この演奏そのものはロックの本質にひどく遠い。
しかしそれをこの時代にあえてやる Pistols は、ジョン・ライドンはいまだにロックそのものだ。
いや、それは逆で、このタイトな演奏こそがロックの神髄で、
Pistolsはそれを茶化しているにすぎない?
考えているとこんがらがってくる。
とにかく Pistols は Pistols にしかできない形で、
その誕生から50年以上経過した「ロック」という
なんだかフニャフニャしたものに対して一石投じる、
というかケツをまくってアカンベーってしているのだと思う。
ステージの上でブランデーを口に含んではペッて吐き出して、
水を飲んでは右の鼻の穴を押さえて左の鼻の穴から噴き出して。


「Pretty Vacant」に始まり、「Liar」や「Submission」を挟んで、
「(I'm Not Your) Steppin' Stone」なんかも挟んで、
本編は「Problems」「God Save The Queen」「EMI」で終了、
アンコールで「Bodies」「Anarchy in the UK」の2曲。
(「Bodies」が始まったとき、もしかして「Anarchy in the UK」はやらずに
 終わるのかと残念な気持ちになった。
 「次何が聞きたい?」と聞かれて、会場のあちこちで「アナーキー!」と声が上がった)
さらに2回目のアンコールがあって、
1曲目が何だったのか忘れたけど(パルスで同期をとっていた)
2曲目は「Radio One」とでも言うのかな、新曲?
とにかくサビで「Radio One , Radio Twice」と歌う「EMI」に似た曲が演奏された。
あと、「(I'm Not Your) Steppin' Stone」の次の曲、何だったのか分からないけど、
唯一ニューウェーブっぽい攻撃的でカオスな音が聞こえて、かっこよかった。


最前列近くにいたら、あまりのもみくちゃぶりに死ぬかと思った。
身を守るのに必死だった。前後左右に寄りかかって、まともに立てない。
足元もなんかグニャッとしたものがあってタオルだったのか、ペットボトルだったのか。
ゴキッという音がして何かが砕けたり。
半分ぐらいは見る、以前に態勢を持ち直すのに時間をとられてた。
ライブを見てて初めて、腕を持ってかれる、千切れるという体験をした。
頭上は限りなくモッシュが転げ回ってるし。
前の人の上の汗が目に入って、とか。
終わってから汗でぐっしょり。フラフラになった。
しかし、Pistolsを見れてよかった。
帰りの電車の中で、ロックの意味について考えさせられた。
とりあえず、PiLの再結成だけがないことを切に願う。
「Metal Box」と「Flowers of Romance」で
ロックが描ける音楽の地平、その極北にたどり着いたジョン・ライドン
そういう側面がまるで存在しないかのような態度の今日のライブ。
「Flowers of Romance」を再演したら、それこそロックも終わり、最終局面だ。


そんなこんなで今年のサマソニが無事、終了。
家帰ってから、夜遅く、汗まみれのTシャツとトランクスとカーゴパンツを洗った。
革の財布が汗で真黒に変色していた。
全身あざだらけ。擦り傷もあり。恐るべし・・・