「Visions of America」「液晶絵画」

土曜の話の続き。
東京都写真美術館で「いまここにある風景」を見る前、時間があったので企画展を2つ見た。


「ヴィジョンズ オブ アメリカ 第1部 星条旗 1839-1917」
http://www.syabi.com/details/america.html#part1


「液晶絵画 STILL/MOTION」
http://www.syabi.com/details/still.html

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「ヴィジョンズ オブ アメリカ 第1部 星条旗 1839-1917」は
アメリカの歴史を現存する写真から辿っていく3部構成の企画の第1部。
この第1部は24日日曜までで、第2部が30日から始まる。


展示はダゲレオタイプでの肖像写真から始まる。
写真って19世紀末ぐらいのもの?なんて僕は思っていたんだけど全然違ってて、
19世紀半ばには普通に写真というものはこの世に存在してたんですね。
だから南北戦争当時の写真も残っている。
子供を抱える黒人の母親が部屋の中で怯えているだとか。
「そうか!そういうものなのか!」と目からウロコ。
写真という技術がなかったのではなくて、現存する写真が少ないというだけなのだ。
この当時の写真は「鶏卵紙」に印刷されているものが多かった。
ノートの1ページにそのまま印刷されていたり。


グランドキャニオンやナイアガラの風景写真を経て、
(まだ手付かずで自然が残っている頃だから、壮大な風景がパノラマで広がる)
写真がアートとして成立するまでが第1部。
僕は初めて知ったんだけど、アルフレッド・スティーグリッツの時代まで。


地味だけどいい企画だと思う。第2部も見に来よう。
恵比寿ガーデンシネマで面白そうな映画やってくれたらちょうどいいんだけどな。

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「液晶絵画 STILL/MOTION」は逆に23日始まったばかり。初日を見たことになる。
でも、雨が降っていたからか、東京都写真美術館の存在がマイナーだからか、客の入りはまばら。
日本と海外の広くビデオアーティストとされる人たちの作品を集めたもの。


B1Fと2Fで分かれていて、まあありがちなビデオインスタレーションばかり。
なんか映っててそれが延々と繰り返されるような。
これってカメラとアイデアと「これはアートだ!」と言い切る強い自信があれば
今すぐ僕でも作れそうなものばかりなんだけど。
美しい風景をヒーリング的に流すものや、
一瞬を果てしなく引き伸ばして、
静止しているようでいて実は少しずつ状況が変化していく様を映し出す作品であるとか、
その逆に長時間の映像を縮めることで本来ならば日々ミクロに進行していく物事を
少しずつ状況が変化していく様を映し出す作品であるとか。
(「静物画」と称して、皿の上の果物が腐敗してカビが生えて崩壊するまでを撮った作品があった)


そんな中、1Fで面白かったのはジュリアン・オピー。
日本でもこれから水戸で個展があるみたいで、人気があるのかな。僕は知らなかった。
アニメ風でポップな映像。
作品のタイトルがいい。
「車を走らせるにつれ寒さがやわらいで来た。
 道に沿って狭くて早い渓流が続き、
 水の流れは黒い石のつらなる川底を流れ落ちながら
 傾きかけた陽射しのもとでその表面を鈍く光らせた。
 ヘアピンカーブの坂を10分ほど下った後、
 道はゆるやかに、まっすぐと谷間に向かっていった。
 高い山々の中の荒れた道をたどった後の
 ふもとの鮮やかな緑の風景に心が思わずほっとした。」
これがタイトル。


水戸の個展について調べてみたら、この人は Blur のジャケットを手がけていることが分かった。
どうりでどっかで見たことあると思ったら。
http://www.arttowermito.or.jp/art/modules/tinyd0/index.php?id=1


2Fの目玉はなんと、ブライアン・イーノの「Thursday Afternoon」
全然知らなくて入って、マジで驚いた。ここで思いがけなく見れるとは!!
これで1000円は安い。これを見るためだけの1000円であってもいい。
本来は1時間以上の作品なのでちょっとしか見なかった。
ナム・ジュン・パイクと並んで
この手のビデオアーティストの先駆けではないか。
イーノの音楽に合わせて、風景が少しずつ変化していく。
再生されつくしてテープが磨り減ったのか、映像はかなりなところぼやけていた。


あと、森村泰昌の「フェルメール研究」が最後に。
この人日本の現代アートでは高く評価されてるけど、僕にはその良さがよく分からない。
フェルメールだけあって、「真珠の耳飾りの少女」がこの人の顔になったのが飾られていた。
気色悪いだけ。
この人が理論家であって、何を持ってアートとしているか明確なスタンスがあってそれは理解できるけど、
じゃあモナリザに扮したから面白い、美しいかというとそれは別であって。


他に、鷹野隆大という人の「電動ぱらぱら」という作品が印象に残った。