あれから1年

土曜。出社。今、1人きりPCに向かっている。


あれから1年経ったのか、と思う。


早いもんだ。
こんなふうにして1年があっという間に過ぎ去るとは思いもしなかった。
この1年間はなんだったのだろう?


今でも、あの人のことを時々考える。
仕事が大変で、疲れきった帰りの地下鉄の中とか。
あの人のことを思い出す。
だけどそれ以上のことは何もできない。
できずにいる。
それだけで、1年。


すれ違ったときに挨拶を交わすとかそれぐらいのことはあっても、
それ以上のことにはならない。
何を話していいのかが分からない。
どういうことに興味があるのか、どういうことを楽しいと思うのか、
ほとんど何も知らない。
そういう人のことが心の奥底にあった、1年。


忘れてしまおうと思う。
だけど、どうしたら忘れられるのか、よく分からなかった。
人間という生き物は、不器用なものとして作られている。
そして僕はそういうこと、さらに不器用だ。


だから僕は、ただただ、日々をやり過ごした。
毎日の日々を無為に過ごしていった。
そんな中で、時々、せつない気持ちになった。
1人きりこの世界に生きていて、寄る辺ない気持ちになった。


そして今も、そういう気持ちになった。


今更、どうすることもできない。


どうしたらよかったのだろう?
あのとき、どうしたらよかったのだろう?
どうすれば、いいんだろう。


この世界は生きていて悲しいことばっかりだ。
楽しいことは時としてある。その一瞬の幻のために生きていく。
ああ、これから先の人生もこんなふうにして過ごしていくのか。


あの人は今、どこにいて何をしているのだろう、と思う。
せつない気持ちになる。
だけど今更、どうすることもできない。


そんな、1年間。