これまでの映画人生を振り返る その3

11位から30位までのうち、書きたくなったものについて。

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11.「4ヶ月、3週と2日」(2007年 / 監督:クリスティアン・ムンジウ / ルーマニア


僕はこの映画、今年1番の映画だと思った。
何人か映画好きな人に「見ましたか?」と聞いてみたんだけど、
誰も見ていなかった・・・
http://d.hatena.ne.jp/okmrtyhk/20080309
そう言えば今年のカンヌでパルムドールだったフランス映画、
あれってその後音沙汰を聞かないけど日本で公開されるのだろうか?
気になる。

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12.「ファーゴ」(1996年 / 監督:ジョエル・コーエン / アメリカ)


「ファーゴ」を見るにつけ、
「この作品が90年代のアメリカ映画の芸術性のスタンダードなんだろうな」と思うことしきり。
全編を漂うユーモラスかつ、不気味な雰囲気。その中に配置された人間の動き方、動かし方。
それぞれの思惑がアレヨアレヨと思ううちにとんでもない方向に進んでいって、
それが最後にピシリとはまる。
余りにもよく出来ているがゆえに、教科書のように思えてくる。
フランシス・マクドーマンド扮する、コーヒーの入ったマグカップ片手に
死体の埋まる雪原をよちよち歩きする警察署長のキャラクターもいいね。

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18.「エレファント」(2003年 / 監督:ガス・ヴァン・サント / アメリカ)


先日、映画部の後輩と話していたら、「あのラストが嫌いだ、意味が分からない」って言われて。
僕は好きなんだけどなー。
あのラストは単なるピリオドに過ぎないんですね。
あの光景を見せたいがための映画じゃない。
コロンバイン高校銃撃の事件については誰もが知っている。つまり、結果がどうなるか分かっている。
スクリーンに出てきた若者たちは何の理由も無く、みんな、死んでいく。
描きたかったのは、そこに至るまでの、言葉にならない、取るに足らない過程。
なんてことないいつも通りの毎日があって、その中のどうってことのない普通の1日。
だけどそのかけがえのなさを訴えたいのではなくて。
ただ、それは「それまでと全く同じある日起きたのだということ」
その単純さ、それゆえに逆説的に浮かび上がってくるこの世界の複雑さを
切り取って提示しているのだと思う。
だからこそ、主人公の高校生が犬に触れる瞬間がストップモーションになる、
その美しさへとつながっていく。
トータルな過程、その連続にはこれと言って意味はなかったのかもしれない。
だけどその瞬間瞬間はそれぞれの人にとって意味があったのだということ。
そしてそれを2人の高校生が無残にも奪い去ってしまったのだということ。

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19.「ワン・プラス・ワン」(1968年 / 監督:ジャン=リュック・ゴダール / フランス)


ストーンズが「悪魔を憐れむ歌」をレコーディングしている風景をゴダールが撮影したもの。
とにかくかっこいい。
この頃のゴダールは何を撮っても気が利いていたのだろうし、
この頃のストーンズはどこをどう切り取っても様になっていた。
その2つを組み合わせた。ミモフタモナイけど、かっこよくないわけがない。
これも以前どこかに書いたことだけど、
ブライアン・ジョーンズアコースティック・ギターを弾いてる場面で、
ニコニコ笑いながら、だけどどことなく寂しげに弾いてるんだけど、
どんなに弦をかき鳴らしてもそれが聞こえてくることないんですね。
カットされてるのか。
そこの部分が神がかり的にすごい。
ゴダールゴダールたるなんらかを最もここに強く感じる。

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20.「ゾンビ」(1978年 / 監督:ジョージ・A・ロメロ / アメリカ)


中学・高校を始めてとしてあれこれゾンビ映画を見てきた僕ですが。
それにしても、ゾンビというキャラクターをああいうふうに定義づけたのって誰なのだろう?
(顔が灰色で、体が硬直してて、腕を前に突き出してて)
やはりジョージ・A・ロメロなのだろうか?
ゾンビってブードゥー教から来てるみたいだけど、ハイチの死人、幽霊?がああいうイメージなのか。

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21.「街の灯」(1931年 / 監督:チャールズ・チャップリン / アメリカ)


やっぱ、最後のあの一言でしょ?
映画の中で唯一のセリフ。
それを聞かされたときのチャップリンのあの、
一生知らずにすめばよかったものがばれてしまったときのバツの悪い、はにかんで恥ずかしそうな、
いや、それだけじゃなくて人間の持ちうる感情の全てを詰め込んだ笑顔。
あの悲しさ、哀しさがチャップリンだよなあと思う。

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23.「パルプ・フィクション」(1994年 / 監督:クエンティン・タランティーノ / アメリカ)


いつ見ても、何回見ても、面白い。よくできている。
パズル的な構成の脚本をスタイリッシュな映像でスピード感と乾いたユーモアたっぷりに描く。
これ、90年代と言わず、その後の映画の基本でしょ?
音楽で言えばパンクと並ぶぐらいの重要な革命だと僕はずっと思ってるんだけど、
他の人にとってはどうなのだろう?
パルプ・フィクション」ってそのうち再評価ブームが来て、
それから先は殿堂入りしてるんじゃないかな。

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24.「炎のランナー」(1981年 / 監督:ヒュー・ハドスン / イギリス)


とにかく好きなんですよね。
高校時代に深夜やってたのを録画したのを見て以来、何度見たことか。
2人の英国人ランナーがそれぞれの目的のために短距離走を走って
オリンピックでメダルを取るまで、という非常にシンプルな内容。
独特の、静謐で清潔感と気品ある雰囲気がいいんですよね。
「走る」という行為の高潔さがひしひしと伝わってくる。
ヴァンゲリス作曲のテーマ曲は聞けば誰もが「あ、これか!」と思い出す有名な曲。