juana molina 来日公演

昨日の夜は六本木ミッドタウン内の Billboard Live Tokyo に
アルゼンチンから来た Juana Molina のライブを見に行った。


いわゆる「アルゼンチン音響派」を代表する、歌姫。
今、この世界で最も先鋭的な音を作り出しているミュージシャンの1人。
例えて言うならばアルゼンチンの Bjork だと僕は思っている。
ものすごくざっくりその音楽性を語るならば、
オーガニックなアコースティック・ギターナチュラルな歌、
そこにエレクトロニカ的テクスチャーがブレンドされている。


Official Site
 http://www.juanamolina.com/


Billboard Live Tokyo
 http://www.billboard-live.com/


Billboard Live Tokyo」って言ったらあれですよ。
こけら落としになんと Steely Dan がライブをやったという。
背後に広がる六本木の夜景。
とにかく、ゴージャスな空間だった・・・
僕はこれまで高円寺の小さなライブハウスから東京ドームまで様々なライブを見てきたけど、
スタンディングじゃなく、ディナーテーブルに座って鑑賞するライブってのは初めて。
カップルがワイングラスを重ねて。会話を楽しんで。
生演奏でいい音楽に接するってのはこういうことなのか。
Blue Note もこんな感じなんだろうな。


仕事を早々と切り上げて会場時間ギリギリに到着。
ここは事前に予約が要るみたいで、何も知らなかった僕はまごついて「えー、あー」と困惑。
よく見たらチケットに書いていた。
フロアに案内される。
ステージ前、最前列の席が空いていたので迷わずそこにした。
こんな至近距離から見れるなんて。いいね。
メニューを渡されたので、ラフロイグの10年をロックで飲んだ。
古びた樽の匂いがした。
開演まで1時間半。ケヴィン・ブロックマイヤーの「終わりの街の終わり」を読みながら待つ。
ラフロイグは2杯飲んだ。


上の階にはカップル用のラウンジーなソファもあれば一人用のバーもあり。
誰それの来日公演だからチケットとって見に行かなきゃ!ってんじゃなくて
大人の夜の空間として、いい料理といい音楽があるから楽しみに行く、そういう場所。
音楽の好きな人と六本木でデートするにはよさそうな・・・


19時になって、Juana Molina 登場。
茶色の地味なワンピースを着て、髪をひっつめていた。
バックにベースとパーカッションの男性2人。
Juana Molina はミキサーを乗せたシンセと、アコースティック・ギターを演奏。
最初の曲は最新作「Un Dia」の表題曲だった。
「One Day One Day One Day One Day」と歌って、ループさせる。
奇矯な音がプリセットされたシンセの鍵盤を爪弾いて
リズミカルなメロディーを繰り返す。それもループさせる。
ギターのアルペジオ。声:スキャットとヴォイス・パーカッションも重ねていく。
そこに歌を紡いでいく。


後半は1人きりになって、そこからがすごかった。
執拗に歌と演奏をループさせていって、音の一大絵巻を描く。
正にサウンド・スケープ。
もしかしたら全部即興だったのかもしれない。


無国籍な音。
無国籍にも2種類あって、多国籍が嵩じて溶け合って織り成されるか、
それとも生まれながらにしてどこにも属さない音となるか。
juana molina は後者。
他にこういう音、歌、曲を聞いたことがない。
1つ1つの音に重みがあって、それでいて自由に飛び跳ね回って、
そこには総天然色の巨大なパノラマが広がるかのよう。
僕はノルウェーに行ったときに船の上から眺めた、
目の前に広がるフィヨルドを思い出した。


アンコールではテーブルをステージ前方に持ってきて、その上にグラスが3つ。
三角形の位置に立った3人が手拍子しながら、合間合間にグラスを持ち上げてテーブルの表面を叩く。
反時計回りにグラスを移動させて、3人で次々に交換する。
それで曲を演奏する。まるで曲芸のよう。これ、かなり練習しただろうなー。
今となっては想像もつかないが、juana molina は10代の頃にテレビのコメディアンだったそうで、
そのときのことを思い出した、茶目っ気の披露なのかもしれない。

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Queen Adreenajuana molina と。
全然正反対だけど、ロックの現在と未来を見るかのようだった。


Queen Adreena がロックの情念の代表だとしたら、
juana molina は実験性、知性の代表。


どちらも、見れてよかった。