無くした靴下の片方

時々、道端で靴下の片方が落ちているのを見かける。
何をどうしたらこういうことになるのだろう?いつも不思議に思う。
この季節、手袋も時々片方だけ落ちている。手袋なら、分かる。
脱いでコートのポケットに入れようとして落としてしまうとか。
靴下の場合は?
道端で脱ぐのだろうか?
外に干した洗濯物が風に煽られて飛ばされたのだろうか?


手袋とかさ、子供用のかわいらしいのが地面に落ちて
泥だらけになっているのを見ると少しばかり胸がキュンと切なくなるよ。
お気に入りの手袋をなくしてしまって、
泣きそうになってる子供のことを、僕は思い浮かべてしまう。


そして、小さな頃に無くしてしまったあれこれのことを思い出す。
図書館から借りてきた本を持ち運ぶ、手提げの袋。
白地に黒でカニの絵が描かれていた。
あるいは、アニメのキャラクターがプリントされた、子供用の財布。
これら大事にしていたものはどこに行ってしまったのだろう?
どうして無くしてしまったのだろう?
やはり、道端にて1人きり、
雨の日も風の日も持ち主の僕が現れるのを待っていたのだろうか。


人が死んだ後、持って行けるのが思い出だけとなるならば、
そこでは、こういった物たちに包まれるのだと思う。
それまでに出会った懐かしい物たちが、
うたかたのように浮かんでは、消えていって。
再会して、また別れる。


そういう物たちの思い出の無い人生って、寂しいと思う。