辞書を散策する

編集学校「20守」の38番の稽古もそろそろ終わり。
2月頭に卒門で、3月頭に「感門之盟」という卒門式が行われる。


今日は31番目の稽古、というか回答について。


「ヴィッシュゲーム」とよばれるゲームを行う。
国語辞典から任意に1つ言葉を選ぶ。
その解説の中にある同義語・類義語を1つ選んで、今度はその言葉を辞書で引く。
その解説文中にある同義語・類義語を再び1つ選んで、その言葉を辞書で引く。
これを繰り返す。
同じ言葉に戻って手詰まりとなったら終了。
どこまで長く続けられるかを競う。


このゲームって日本語というものについて
何か大きな問題が潜んでいるような気がしたので、ここに載せてみることにしました。


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<回答欄>
【編集稽古031番:ヴィッシュゲーム】


1)面影:?顔かたち。おもざし。
     ?心の中に浮かぶもののようす。

2)おもざし:顔つき。顔だち。おもかげ。おもだち。

3)顔だち:顔つき。目鼻だち。容貌。

4)顔つき:顔だち。おももち。表情。

5)表情:?感情を外部にあらわすこと。
     ?感情の変化によって変わる、顔つき、身ぶり。

6)身ぶり:身のそぶり。からだの動かし方。

7)そぶり:顔つきや動作などのようす。

8)動作:からのうごき。たちいふるまい。所作。

9)所作:?ふるまい。しわざ。おこない。
     ?踊り。?しょさごと。

10)おこない:?おこなうこと。すること。しわざ。行為。
       ?品行。みもち。行状。
       ?仏道の修行。おつとめ。

11) 品行:おこない。身もち。行状。

12) 身持ち:?おこない。品行。
      ?子をはらむこと。妊娠。身おも。

13) 妊娠:みごもること。はらむこと。懐妊。懐胎。

14) 懐妊:子をはらむこと。みごもること。妊娠。懐妊。

15) みごもる:はらむ。妊娠する。

16) はらむ:?みごもる。妊娠する。
      ?植物の穂が出ようとしてふくらむ。
      ?ふくむ。うちにもつ。

17) ふくむ:?口の中に入れておく。
      ?うちに包みもつ。
      ?うらみなどを心中にもつ。
      ?心にとめておく。
      ?表情にでる。ようすを帯びる。 →振り出しに戻る


◎選んだ言葉◎
面影→おもざし→顔だち→顔つき→表情→身ぶり→そぶり→動作→所作→おこない
→品行→身持ち→妊娠→懐妊→みごもる→はらむ→ふくむ


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<振り返りコメント>


・昨日の番ボー(注:編集学校内のコンテストのこと)で調べた「面影」でトライ。
 これならいくらでも変化していくだろうと思ったのですが・・・


・WEB上の辞書でリンクをたどっていったら楽なんでしょうけど、
 というか番ボーのときはそうしてたんですけど、
 せっかくの機会なので辞書を開くことにします。
 小学校か中学校のときに買ったものなので、情報量は少なく、かつ古いです。


 思いっきり埃をかぶっていました。
 辞書を開かずとも日々暮らしていけるし、
 大学の入試も卒論も会社の入社試験も全然困らないからです。
 こんなんでいいんでしょうか、日本。
 でもイギリス人が日々オックスフォードの辞書を参照してるとも思えないし。
 偉そうなことは言えないか。


・安価でコンパクトな辞書だったせいか、
 語句の説明は類義語を挙げるだけが多く。たらいまわし感あり。
 モーフィングしているようでいて、単なる堂々巡り。
 辞書にも限界有り、と知る。


・こういうゲームって、どっちが面白いのだろう?
  小さな辞書:収録数が少なく、説明が薄い
  大きな辞書:収録数が多く、説明が詳しい


・続けていくとこういうことが起こると思われる。
 *類義語で堂々巡り。


 *やがて「ようす(様子)」や「おこない」「ふくむ」といった
  バクッと広い概念を孕む語の中に取り込まれる。
  こういう言葉って多義性に富むので、どっか別の方向性を選ぶ。


 *あるいは、「身もち」のように、
  たまたま複数の意味を併せ持つ言葉に出会って、
  全然別の方向性に進む。ワープに近い。


 *なんにせよ、どういう言葉でスタートしても、
  途中で遅かれ少なかれ
 「ようす(様子)」や「おこない」「ふくむ」といった語にぶつかって
  誰もが似たようなルートがたどっていく。


 *そしてまた、類義語の堂々巡りへ。
 

 これって辞書が安いからこうなる??
 言葉の網の目は意外と硬直していて、あっさりとがんじがらめになってしまう。