いろいろな音だけを集めた博物館

編集学校のお題で、新しい商品・サービスのネーミングをするというのがあった。
思いつきだけで書いた最初の回答は合格とならず、
これまでの稽古を踏まえて、
いろんな角度で情報を集めて整理してからネーミングしましょう、となった。


こういうの考えるの大好きだよなあとやってるうちに熱中して
我ながら面白いものが出来たなあと。
ネーミングが、というよりは新しい商品・サービスの企画として。


3つ考えたのを3つともここに載せます。


38番のお題のうちの35番目。
これまでの集大成。
編集学校って、まあ、こういうことをやってるんですよと。


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8)映画の見られるプール


・リッチなホテルの中庭にプールがあって、
 そこに巨大なスクリーンが掛けられている想定です。
 夕暮れないしは夜、若干のライトに照らされながら映画を観ます。


・ムードのある映画を上映。
 アクション系だと例えば「昔の」007シリーズとか。
 フランス系恋愛ドラマだと「男と女」とか。
 芸術系の難解な作品は不可。
 台詞が少なく、映像がきれいで、筋が分かりやすいものが望ましい。


○素材や要素
 ・ゴージャスなプール
 ・汚れのない澄み切った水
 ・ホテルの壮麗な壁
 ・巨大スクリーン
 ・音のいいスピーカー
 ・上品な照明(バーの間接照明みたいな暗さで)
 ・フィルムないしはDVD
 ・映写機ないしは、DVDプレーヤーとプロジェクター
 ・プール内の座席として、ビーチマット
 ・プール外の座席として、サマーベッド
 ・ビーチパラソル
 ・トロピカルな飲み物(カクテル)
 ・ラウンジな空間
 ・サングラス
 ・水着
 ・サンダル


 ・観客として、男と女
 ・映写技師
 ・腕のいいバーテンダー
 ・上品なウェイター(ソムリエとホストの中間ぐらい)
 ・デザイナー
 ・空間プロデューサー、というか仕掛け人


○技術
 ・スピーカーは水の音や歓声といったノイズに負けないこと。
  また、中庭という半屋外/半屋内という環境でも無駄な反響がなく、
  抜けのいい音を出せるようにする必要がある。
 ・スクリーンないしは映写機は完全な暗闇でなく、
  直射日光や照明が入り混じる空間であっても
  鮮明な映像を映し出せること。
 ・カクテルはリゾート地のいい加減なものではなく、
  ちゃんとしたバーテンダーが作ること。その技術が必要。
 ・いやみのない大人のゴージャスさを空間を演出する能力。


○機能や性能、効能
 ・アダルトでセクシーなムードに浸って、大人の夜の入口とする。


○使い方、使用法
 ・男女がプールの上にビーチマットを並べてその上に寝そべって映画を見る。
 ・アルコールを飲みながら映画を見たい人はプール脇のサマーベッドも可。


○その商品にひそむ歴史や時代性
 ・日本では見かけないけど、ドライブインシアター
 ・そもそも、オブジェ代わりに映像を流すってのは
  映画じゃないにしてもあったのかも。


○マーケットやユーザー層
 ・20代後半〜50代前半の男女(R25世代からLEON世代まで)


○デザインや大きさ、重さなどの属性情報
 ・これは上映設備一式ではなく、
  ホテルの空間そのものを商品化することになる。
  よって、デザイン・大きさなどはそのホテルと、
  ホテル内のプールに依存する。


○以上を、英語やその他の外国語で、漢字で、和語で、表現してみる
 (これは断然、英語でしょう)


 movie, cinema, screen, light, view, panorama, vision, see, display...
 night, sunset, twilight, midnight, stardust ...
 water, pool, wave, cruise, beach, resort, aqua, marine ...
 theater, palace, club, disco, party ...
 cocktail, tropical ...
 pearl, silk, velvet, nude, rende-zvous ...

 
お題1:
ネーミング案: 映画の見られるプール
○Pool Moody     (Cool Beautyがふと思い浮かんで、もじってみる)
○Moodie       (Mood+Movie)
○Blue Lagoon     (というカクテルがある)
○Cinemarium     (Cinema+Aquarium でもゴージャス感がない)
○twi-lite      (twilight に Light / Lite をかけてみる)
○Dis-Play      (display を区切ってみる)
○Nightscape     (造語で「夜景」ちょっとイメージが違う)
○Manhattan Nightscape(カクテルの名前をつけてみる)
◎Cerevision     (セレブ+ヴィジョン → セレヴィジョン)


・英語の語呂合わせって難しいですね。
 必ずしも語呂合わせでなくていいんでしょうけど。


・あれこれ考えていくとイメージが膨らんできて、
 これって新ビジネスとしてやっていけんじゃんって気がしてきた。


・大人向けにお色気系路線で考えてみましたが、
 夏休みの子供用のプールでドラえもんを上映でもいいですよね。


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7)いろいろな音だけを集めた博物館


※便宜上ここでは音を出すものを「楽器」と呼び、
 音を出すことを「演奏」と呼ぶことにします。


○素材や要素
 ・音を出すもの(その場で聞けるもの)
 ・音を録音/保存したもの
 ・スピーカー
 ・ヘッドホン
 ・モニター、スクリーン
 ・額やショーケース
 ・作品を解説する札みたいなもの
 ・照明装置
 ・湿度計
 ・空調
 ・展示のための空間と、演奏のための空間と
 ・座って音に浸るための椅子やソファー
 ・歴史的な実演風景を撮影した写真(展示用)
 ・モニターに映し出す記録映像、あるいはイメージ映像
 ・音に関する書物、文書資料


 ・楽器の類
   -これは既成の楽器もあれば、
   世の中に1つしかない自作の、珍妙なものもあるだろう
   -その場で音を出すためのものもあれば、
   歴史的価値のために飾るものもある


 ・音楽も含めるのならば、楽譜も


 ・チケット売り場
 ・クローク
 ・ミュージアムショップ
 ・併設のカフェ
 ・アーカイヴ施設(図書館、地下の倉庫)
 ・楽器保管庫


 ・ミュージアムショップで売る図録
 ・ミュージアムショップで売る図録的CD
 ・ミュージアムショップで売るDVD(音を出す風景を収録)
 ・ミュージアムショップで売るミニチュアの楽器の類
 ・ミュージアムショップで売る絵葉書


 ・閲覧者(閲聴者?)
 ・学芸員
 ・演奏者(ときにはワークショップの指導員)
 ・チケット売り場の人
 ・ミュージアムショップの店員
 ・カフェのウェイトレス
 ・掃除のおばちゃん
 ・警備員


○技術
 ・保存された音をクリアに再生する技術、音響設備
 ・学芸員の、音をオノマトペイアで再生する技術
 ・演奏者の、音を正確に再現する技術
 ・館内の湿度/温度を一定に保つ仕組


○機能や性能、効能
○使い方、使用法
 ・古今東西の「音」を集めている。
  音には、その場で再生/演奏可能なもの、
  不可能であるがゆえに録音/保存されているものとがある。
 (学芸員はそれらの音の記録に通じている)


 ・音を出す、音を聞く、両方の軸が存在する。
  無数の手段。結果として存在する無限に近い音。
  それらを可能な限り網羅することを目的とする。


 ・夏休みの子供たちや音マニアのために
  珍しい「音」を演奏し楽しむためのワークショップがある。


 ・例えば、プロの作曲家やテレビ局の音響技師も
  「こういうときのああいう音ってないだろうか?」と探しに来る。
  「竹みたいなので風に揺れるとペロンペロン鳴るやつ」
  「子供の頃ジャングルジムから逆さになった時に
   頭の中で聞こえたジンジンした音」


 ・音の分類には物理的な周波数を基準にしたフロアもあれば、
  用途で分類したフロアもある。「癒される音」とか。
  人はその癒される音を聞きに来たりする。
  「刺激的な音」とか。


 ・音の蒐集/生成に生涯をかけた偉人たちを
  紹介するコーナーもあるだろう。


 ・世界最初の角笛や蓄音器やシンセサイザーウォークマン
  きっと飾られているだろう。


○その商品にひそむ歴史や時代性
 ・レコードというものが商品化されて以来の、
  古今東西の音源を集めている資料館があってもよさそうだが・・・
 ・あと、世界各地の民族楽器を集めている人もいると思われる。
 ・楽器そのものの博物館があってもよさそう。


○マーケットやユーザー層
 ・「音」に関心のある様々な人々
  - 聴覚周りの医療関係者
  - プロアマ問わず、ミュージシャン
  - オーラルコミュニケーションに関する研究者
  - ××な音や○○な音に浸りたい人


○デザインや大きさ、重さなどの属性情報
 ・博物館の外観は、巨大な貝殻みたいなのがいいなぁ。
 ・地下かどこかのアーカイヴがでかくなりそう。


○以上を、英語やその他の外国語で、漢字で、和語で、表現してみる
 音、おと、オト、音色、音響、響き、声、鳴る、轟く、共鳴
 sound, audio, noise, resonance


 博物館、図書館、倉庫
 archive, library, museum


 楽器
 instrument


 演奏
 play, perform


 記録、保存
 record, store, preserve


 集める、採集、蒐集
 gather, collect


 耳、聴覚
 auditory organs, aural communication, hearing


お題3: いろいろな音だけを集めた博物館


ネーミング案:
○Sound Collection Museum (英語にするとこうだよな)
○立日    (音の漢字をばらす。あまり意味ない)
○響     (僕が実際に付けるとしたら、でっかく1文字としたい)
○オトコト  (雑誌「ソトコト」が思いついて・・・)
○音庫    (読み方:オトコ)
○音名    (読み方:オンナ)
○here / hear (「ここで聞く」でも、もっと語呂をよくしたい)
◎本館の博物館を「音名」別館のアーカイヴを「音庫」


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4)苦味のきいたウィスキー


前2回が同じ手順を踏んだので、今回はアレンジします。
5W1Hで。学校とか会社とかで習いますが、
編集学校では出てきませんね。


【飲む側】


○Who
 ・相当の酒好き。
 ・あまり若くはなくて人生の酸いも甘いも知り尽くしている。


○What
 ・ただ単に酒を飲んでいるのではなくて、
  このウィスキーと向き合う時間を味わっていると言える。


○When
 ・パーティーの場で出てくるということはない。
  1人静かに時間を過ごしたいときに飲む。
  真夜中から夜明け前までの間に。


○Where
 ・1人になれる部屋。書斎とか「男の隠れ家」的なやつ。
  薄暗い照明。聞こえてくる音楽はピアノトリオのジャズ。
 ・あるいは、海辺で1人、焚き火にあたりながらストレートで。


○Why
 ・追憶に浸りたくて。若かりし頃のあれこれを想い出す。
 ・あるいは、日常生活を忘れて、心を「無」にしたくて。


○How
 ・基本はロックで。
  氷もコンビニで売ってるようなのではなく、
  バーで出てくるような大きくて丸いやつ。
  グラスはシンプルで飾り気がなくて、だけど上品なもの。
 ・いや、やっぱストレートだ。


【作る側】


○Who
○When
○Where
○Why
 ・スコットランドの小さな島(アイラ島をイメージ)の、
  海辺の寂れた村にて。
  古くから続く蒸留所の、長年の風雪に耐えた言葉数少ない職人が
  黙々と神々への捧げものとして作る。


 ・それは必然的に人間という悲しくも愚かな生き物の
  何千年もの歴史を語ることになり、
  スコットランドの歴史1つとっても、
  苦味のきいたものとして作る必要があった。


○What
 ・当然、シングルモルト


○How
 ・大麦を発酵させるときの熱源としてピート(泥炭)を使用することで、
  スモーキーな香りを加える。
  このときのピートは潮風のしみ込んだものであること。
 ・樽は「シェリー樽」や「バーボン樽」などあるが、
  最近使われることの少なくなったシェリー樽で。色に深みが増す。
 ・熟成年月が長いほど、味に深みが増す。しかし、コスト増になる。
  →苦味の「きいた」ウィスキーは必然的に高い。


◆抜き出したキーワード
「人生」「時間」「夜明け前」「隠れ家」「追憶」「焚き火」
「寂れた」「風雪」「スモーキー」「黙々と」
「神々への捧げもの」「潮風」「熟成」


◆生み出されるイメージ
・人知れず森に降る雪
・真夜中に海辺で熾した炎
・夜明け前のはぐれ雲


お題2: 苦味のきいたウィスキー
ネーミング案:
○「潮騒」     (キーワード「潮風」をずらす)
○「黙」      (「苦味のきいたウィスキー」を一字で表す)
○「楔」      (同じく、一文字。人生っぽいやつ)
○「轍」      (これもそう)
○「綴」      (これも)
○「星霜」     (2文字にしてみる)
○「Cross Road」  (ブルースの主題としてよく出てきますね)
○「沈思黙考」   (「黙」の四字熟語を考えてみる)
○「暗夜行路」   (文学作品で考えてみた。「暗」はよくないですね)
○「咳をしても一人」(苦味の利いたウィスキーって山頭火じゃね?
           と思って調べてみたら、尾崎放哉だった)
◎「うしろすがたのしぐれてゆくか 」(で、山頭火へ)


・参考にしたサイト
 http://www.single-malt-scotch.com/MALT2.html
 http://www.suntory.co.jp/whisky/malt/
 http://styleluxury.blog15.fc2.com/blog-entry-3.html
 http://www.edagawakoichi.com/BAR/b-singlemaltnyumon.html
 http://allabout.co.jp/gourmet/whisky/closeup/CU20070730B/index.htm


 会社の昼休み、アイリッシュ・ウィスキーについて調べるのは楽しい。


・これまでどの銘柄がどこの土地なのか無頓着だった。
 ボウモアラフロイグアイラ島だったのか。
 飲みたくなったぞ。


・「東尋坊」や「玄界灘」ってのも考えたのですが、ちょっと違うかなと。