初めての和歌山出張 その3

土曜。8時半に起きる。
ビジネスホテルで寝てるので、慣れたベッド、慣れた布団じゃないから何度も目を覚ます。
チェックアウトは10時。
風呂を沸かして入って、昨晩飲まなかった缶ビールを開ける。
置いてくのはもったいないし、持ち運ぶには思いし。
新幹線の中で飲もうとしたらぬるくなってるうえに揺られてて空けたら大変なことになるだろうと。
急いで飲むからちっともおいしくない。
前の晩飲みすぎてしかも花粉が飛びまくっていたので、鼻水が止まらない。
花粉症の薬をビールで流し込む。効き目なさそう。
コーヒー飲もうとポットに電源も入れてたので、
ビールの後、やけどしそうになりながら一気に飲み干す。
着替えて、荷物を詰め込んで、チェックアウト。


和歌山駅からの特急は11時47分。2時間ほど時間あり。
すぐ目の前の和歌山城へ。
前の晩、ホテルの窓から見下ろした。
追廻門をくぐって、天守閣を目指す。
石組みで作られた階段を上ろうとしたら、近くの高校なんだろうけど、
陸上部の生徒たちが階段をダッシュで駆け上がる。
邪魔しちゃ悪いとしばらく待って、全員下りてきたら僕が上り始める。
上りきったところでマネージャーの女の子がストップウォッチとノートを持って立ってて、
僕に向かって「おはようございます」と挨拶する。
取り立てて美人じゃないけど、素朴でかわいらしい。いいなあと思う。
たったこれだけのことで「和歌山いいねぇ」と思ってしまう。


天守閣の周りの高台に、お年寄りが集まっている。
ここはここで景色がいい。
入場料350円を払って天守閣の中へ。
僕の他には小さな兄弟を連れた親子連れだけ。
朝、開いたばっかりの時間だったからか掃除の人たちが床にモップ掛けをしている。
日本のあちこちでそうなんだけど、ここもまた戦争で焼け落ちて、戦後立て直した天守閣。
なので中は城ゆかりのミニ博物館のようになっている。
下の階は鎧兜の展示、次の階は紀伊徳川家の紹介。
そうか、そういえば8代将軍吉宗ってここ紀伊藩が出身だった。
最上階は展望台。和歌山市街が一望できる。
取り立てて大きなビルはない。
だけどかっちりまとまっていて無駄がない、それでいてのどか。そんな印象を受けた。
すぐ側に県の美術館と博物館が建っていて、これがなかなかモダンなデザイン。
時間があれば見に行ったのだが・・・、残念。またの機会に。


和歌山県の地図が掛かっていて、興味が沸いてちゃんと見てみる。
中上健次を読んでいたので、新宮市ってのがどの辺なのか興味があり、
確かはずれの方だったよなあとたどっていくと、三重と接している。
そうか、と思う。中上健次の小説には舞台として新宮周辺が出てきて、
若者が町を捨てて出て行く先は大阪や名古屋。和歌山市ではない。
全然違う文化圏なんだろうな。
県庁所在地だからいいってもんでもない。
単なる他の地方都市に過ぎなくて、選択肢に挙げる理由がない。
高野山の場所も探す。
お客さんは今日、高野山に上ると言っていたが果たしてどうなったことか。


天守閣を出て、坂道を下りていく。大きなお堀があって、ゆったりと水を湛えている。
こっちでよかったかなと岡口門を出る。しばらく歩く。
昨晩歩いたはずなのに、見覚えがない。夜だったからだろうか。
いや、間違っている。引き返して大手門へ。そうだ。こっちだ。
後はこのけやき坂通りをまっすぐ歩いていけば和歌山駅にたどり着く。
20分ほどかけて歩いていく。
途中、母に電話する。昨日梅干を買って送ったと。


このけやき坂通り、とても大きくて、あれこれと店が並んでいるんだけど賑わっている感じがない。
商店街という雰囲気がない。食事の店はあっても、飲み屋がない。
和歌山の若者たちはどこに集まっているのだろう?
地図を見ると「ぶらくり丁」ってのがあって、どうもここっぽい。
行ってみたいが、やはり時間がない。
それとも内陸の和歌山駅ではなく、太平洋に面した南海和歌山市駅なのだろうか?


駅に到着する。11時前。駅ビルでお土産を買っても、まだ結構時間が余る。
不況なのか店舗の入れ替えシーズンなのか、あちこちの店で閉店セールだった。
和歌山で唯一見つけることのできたCD屋も15日、明日で閉店。
店の中にはほとんど商品がなかった。
会社へのお土産に「みかんのおもち」ってのとイカの煎餅を買う。


隣の近鉄のデパートへ。
デパートらしいデパートはここ1つだけ。他にはないのか・・・
地図を見ると南海和歌山市駅には高島屋があるみたい。


お土産屋にて「なれずし」を見つけて、買って車内で食べようかと思う。和歌山名物?
和歌山のラーメン屋はすしがメニューにあるところが多いようだ。「早ずし」という。
ラーメンと一緒に食べる。市民にとってはそれが普通。
だから、和歌山のラーメンは麺が少し少ないと確か Wikipedia に書かれていた。
早ずしとなれずしはたぶん同じなのかな。
名物なら改札をくぐって駅弁屋で売ってるかなと考え、後で買おうと決める。
・・・が、ホームでは売ってなかった。
柿の葉寿司ってのがあってたぶん似たようなものだろうと1パック買う。
新幹線に乗って開けてみたら、鯛2つと鮭2つと鯖3つのセットのはずが、
店員のおばちゃんが間違えて鯖7つのだった。まあ仕方ない、と食べる。


特急くろしお号に乗って、新大阪へ。そこから新幹線に乗り換える。
そこから先はいつも通りの出張帰り。
土曜の昼なのでそんなに混んでない。


柿の葉寿司を食べながらビール飲んで、中上健次の「熊野集」を読む。
読んでるうちに眠って、気がついたら新横浜。
そんなわけで初めての和歌山出張、無事終了。