痔の話

恥を忍んで、書く。
そろそろ避けられなくなってきた。

これまでずっと黙っていたのだが、長いこと痔に悩んでいた。カミングアウト。
10年ほど前から内側が切れて出血しやすく、痛みがひどくなると座薬を買ってしのいでいた。
1年前からは肛門の周りがどうにもこうにも痒くなった。
とあるメーカーの軟膏を塗ると調子がよくなって、しばらく続けると治まる。
ああ、よくなったと塗らなくなるとまた痒くなりだす。この繰り返し。
これだけならまだ、市販の薬で我慢したと思う。
それが今度は・・・


3週間前の夜、シャワーを浴びた後、
いつものように軟膏を塗ろうとして肛門の辺りに手を伸ばしたら見慣れぬ感触がある。
異物あり。
コリコリとした軟骨のよう。
愕然とする。コレハナンダ・・・
俺には尻尾が生えてきたのか!?


次の日も、そこにある。その次の日も。
それが、さらに次の日、忽然と消える。
もっとびっくりする。
どこに消えた?解けてなくなった?
ほっとする。なんかうまいこと消えてくれたのだろう。
病院に行くかどうか迷っていて、理由はともかく、ま、これで行かなくてもよかろうと。
が、ホッとしたのもつかの間、また2・3日したら出てきた。
要するになんかの弾みで内側に隠れていたのだろう。
ここで初めて「そうか」と思う。
最初現れたのもいきなりムクムクと生えてきたのではなく、
内側で十分な大きさになるまで育っていたのだ。
そしてまんをじして今、日の目を浴びたのだ。


これで諦めがついた。
たまたま仕事が暇になったので、この機会にちゃんと診察を受けようと思った。
家から最も近くにある肛門科ありの病院をネットで探して見つけると
先週の金曜、休みを取って行ってみた。
前の日、会社の人には「ポリープができた」と伝えて。
「どこ?」と聞かれても、「内緒」と。


平日の午前中だったので待合室はお年寄りばかり。
小さな診療所だったのでそれほど待つことはなさそうだった。
問診表に「痔」と書くと、さらに詳しい専用の問診表を書くことになった。
痛みはあるか?いつからか?などなど。
目の前の壁には痔の種類について図解する大きなポスターが貼られていて、
「当医院にてお気軽にご相談ください」とある。


ラックには病気ごとのパンフレットが差し込まれていて、
待っている間「痔」のを見てみる。
心なしか、これが最も数が減っているように思える。
「はじめに」にてこんなことが書かれている。
「痔は、直立歩行を始めた人間の宿命ともいえる病気です。
 症状が出ないものまで含めると、成人の半数以上にみられるといわれています」
こんなことを言われると、心強いですね。
花粉症よりもずっと多いじゃん。
みんな黙っているだけで、ほとんどの人が「痔主」なのだ。


オカムラさん、と名前を呼ばれて診察室の中へ。
あらかた問診表に書いておいたので、症状の説明もそこそこに触診してみましょうと。
カーゴパンツとトランクスを脱いで、ベッドに横になる。
右側を下にして、左足を伸ばし、右足を曲げる。
肛門の周囲が広く、皮膚炎を起こしていると言う。
カビの一種が原因かも知れず、検査してみますと綿棒で軽くこする。
その後、触診。
痛いかもしれないので、と言われた瞬間僕は「痛ッ」と叫ぶ。
その後機械が入ったらしいんだけど、僕は痛みに耐え切れず心の中でヒーヒー泣き叫ぶ。
こりゃ、相当ひどいんだろうな。
腹をくくる。
どっかで見たサイトに
「肛門の周りにできたポリープはレーザーで削除するより他ありません」ってあったんだけど、
これはそれ以上。内側をなんらか外科手術しなくちゃならないんじゃないか?


服を着て、説明を聞く。
目の前に図を差し出して、外痔核がとさかのように突き出し、うんぬん。
もう、上の空。
感染症の可能性は低いでしょう、とのこと。
覚えているのはそれぐらい。
「飲み薬と肛門内への軟膏の塗布で1週間様子を見ましょう、
 皮膚炎の検査結果も出るし、1週間以内にまた来てください。
 外科手術もありえます」


この日はこれで終わり。
いやあ、このコリコリとした突起が飲み薬でしぼんでいくとは到底思えず。
それ以前にこの、触診による並外れた痛さ。
血がこびりついて固まっていますとも言ってたな・・・


そんでまた1週間後診察を受けに行くわけで。


(続く)