吉祥寺「スパ吉」

先週の金曜の休み、午前中病院に行った後、
天気がよかったので自転車に乗って吉祥寺のDiskUnionにCDを売りに行った。
ちょうど昼時で何を食べようか、と思う。
平日の午前中なのでサトウのメンチカツも行列が短いのではないか、
これをつまみに井の頭公園で最後の花見、ビールを飲みたいなあと行ってみたら
即にして長い行列に。休日と何も変わらない。
諦めてハモニカ横丁に入ったとき、
そうだ、あの店に入ってみたいと訪れたのが「スパ吉」
http://www.good24.jp/shop/f485.html


休日に行くと混んでて並んでるんですよね。
何年も前から気になっていてこの日ようやく中に入れた。


ハモニカ横丁って行ったことある人なら「え?あそこ?」と思うような
ものすごく狭くて暗い、言葉通りの「横丁」
戦後間もないバラックが今でも軒を連ねているような。
でもその半分近くがおしゃれな店に生まれ変わってるんですよね。
何があるのか分からなくて怖い、と思っていたらとてももったいない。
真っ黒いイメージのハモニカ横丁の中で「スパ吉」は大胆な白。
真っ白な壁にカラフルな額を飾るだけ、というのがそつなくおしゃれ。


カウンターで10人弱、テーブルも5つか6つという小さな店。
なのに店員は数えてみたら6人。
目一杯忙しく立ち働いている。
オーダーを取る人、皿を洗う人、茹でる人・・・
店長かも、と思った人はカウンターのガラスケースの中の、
大瓶に入った粉チーズを時折かき混ぜていた。サラサラに保つためなのだろう。
これら店員たちが、例えば客席側から皿を上げるときには
「よろしくお願いします」と渡して、受け取る側は「ありがとうございます」
と程よく丁寧に、はっきりとした声で。
これが従業員教育の一環として「言わされてる」感なく、自然に口をついて出てて。
自分たちはおいしいパスタをお客さんに食べてもらうんだ、という願いが
この店で十分に満たされている、そんな喜びの現われなのかもしれない。


感心したのは、お客さんを席に入れるとき。
カウンターの席が 5/6/7/8 となっていて、僕は5に座っていた。
6/7/8 に座っていた3人が「ごちそうさまでした」といなくなって、
席を片付けると(店員たちは「リセットする」と言っていた)
次の順番待ちは1人のお客さんが3組。
これ、普通だったら 678 か 876 の順番で入れていきますよね。
それがここは、867 の順で。すげーと思った。
つまり、カウンターの端に即に1人(5)いたら、次の客はカウンターの反対端(8)へ。
空いてるときだったらそうしますよね。
そして、その次の客は今入れた客から例え一瞬に過ぎなくても間を空ける(6)わけです。
678 も 876 も 867 も一緒じゃんとか、ややこしくなるだけ、とか思わない。
どんなに忙しくても、迎え入れる作法をきちんと守るということ。
空いてる席にどんどん詰めて座って客の回転を上げるって発想じゃない。
ちょっとしたことだけど、なぜか僕はとても感心した。


こういう店のパスタが中途半端なはずがない!
乾麺を茹でるのではなく、店で作った生パスタ。
平麺でもちっとしている。それでいて変な自己主張せず、ソースにそっと寄り添う。
僕がオーダーしたのは20時間煮込んだという「極旨ミートソース」に揚げナスをトッピング。
いやー粉チーズをかけたら、アツアツの熱にとろけるんですね。
しかもすぐ固まったりせず、しっとりしたまま。
クラフトの業務用粉チーズなんかじゃない。
上に書いた大瓶から1人分ずつ小さな器により分けて提供される。


いやー久々に納得のいくパスタを食べた。
そこそこいけるパスタは都内にいくらでもあるけど、
「おおっ!」と心の中で唸ったのはこれが初めてかも。
ミートソースとしては人生で一番うまかった。他に思い出せない。
巷でうまい店って、確かにうまいけど高くて上品でちまっとしているとか、そんなのばかり。
ここのは、洗練されてるけどお高くとまってない。
ちょっと年上の気の置けない友達、みたいな。


しばらくはここ通って他のメニューを食べてみる、ということになりそう。