「ミルク」

通院、PJの都合、諸々の事情により4月に入ってからは週休4日の日々。
今日もまた休んで、午前中は病院。
午後、渋谷へ。


HMVでRollingStone誌の「名盤ディスクガイド500」と「ヒアホン」って雑誌の創刊号を買った。
あと、店の中でかかっていた「Fight Like Apes」というイギリスのバンドのデビュー作。
これ、とてもいい。ギターなし、シンセありの女性ヴォーカル絶叫パンク。
やぶれかぶれなようでいてどこかちょっと切なくて、僕の中で今年初の★5つ。
初めてロックを聴いたときの闇雲に盛り上がる気持ちを思い出させてくれる。
そういう作品ってどうしても、高く評価したくなる。


その後、レコファンで Association と Jo Mama のそれぞれファーストを、見つけて買う。
前者は60年代のソフトロック、後者は70年代のファンキーだけど陰りのある、都会的なロック。
30過ぎてからはこういう古きよきアメリカの音がいいですね。

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時間をつぶした後で、シネマライズで「ミルク」を見る。
70年代のサンフランシスコ。
ゲイであることを公言して、初めて公職に就いたハーヴィー・ミルクが
40歳にして政治家を目指し、48歳で暗殺されるまでを描く。
今年のアカデミー賞脚本賞と、ショーン・ペンが主演男優賞。
爽やかな笑顔がとても印象に残る、名演と呼ぶに相応しい演技だった。


これ、とてもいい映画だと思う。
人が人を信じてる映画。
希望があって、それを次の世代にしっかりと伝えようとする映画。
そんな映画、ありそうでなかなかない。
そういう映画を作ろうとしてうまくいかないことの方が断然多い。


これが、もともとヒューマニズム溢れた監督が撮ったのではなくて、
「グッド・ウィル・ハンティング」「エレファント」「ラストデイズ」の
ガス・ヴァン・サントだったというのが面白い。
「エレファント」なんて実験的で、なおかつ希望も何もないですよね。
人間の全ての感情をいかにして幻のように美しく打ち砕くか?って映画。
「グッド・ウィル・ハンティング」もハートウォーミングないい映画だったけど、
これといって何か主張があるわけでもない。
(脚本がベン・アフレックマット・デイモンだったから?自分で書いてない)


「ミルク」が突然変異のようでいて、でも、なんとなく理解できる。
ガス・ヴァン・サントのこれまでの道のりって一直線じゃなくて、
何作かごとに断層が生じている。多面的。
元々、希望を語ることだってできたんだろうけど、
これまでそういう時期じゃなかった、本能的にはずした。
それが実験的な作品を撮ったり、あれこれ寄り道をしてようやく、
集大成として「ミルク」のような作品を撮れるようになったのではないか。
(いい意味での)何の変哲もない映画を、何の衒いもなく堂々と撮れるようになった。


映像そのものは実験的な要素が相変わらず多いんですよね。
あのスローモーションは「エレファント」にあったなあ、
あの溢れる光が印象的なショットは「パラノイド・パーク」にもあったなあっていうような。
でも、その実験性が嫌味にならない。
しっかりストーリーの語り口として溶け込んでいる。


今のところ、この映画が今年No.1かな。

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アカデミー賞作品賞の「スラムドッグ$ミリオネア」と
エミール・クストリッツァ監督の最新作「ウェディング・ベルを鳴らせ!」も
ゴールデンウィークの間に絶対見に行かなくちゃ・・・