「挑戦」「白い指の戯れ」

先週の水曜に会社休んで DVD で見た2本。

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「挑戦」はビクトル・エリセ DVD-BOX の中の1本。
3人の新人監督によるオムニバスで、このうちの3話目がビクトル・エリセのデビュー作に当たる。


共通している設定としては、
・男女2組の4人だけで物語が進行していく
アメリカ人が侵入者として描かれる
・最後、登場人物のうちの何人かが暴力によって死を迎える
・ねじくれた男女関係


まあやっぱ見所としてはビクトル・エリセであって。
打ち捨てられた村にやってきた2組の男女。
「ここはどこだ?」と聞かれて、女は「月よ」と答える。
彼らはチンパンジーを連れている。
終末までのひと時を、あてもなく過ごす。


その後の作品からしてみたら考えられないぐらい、
洗練を目指していて、スタイリッシュでカジュアル。
ポップな音楽まで流れる。とても野心的。
でもエリセはエリセであって、即に独特の哲学というか力学で作品が貫かれている。


他の2作も、若々しい勇み足が時折見られるものの、なかなかの好作品。

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「白い指の戯れ」
タイトルがいいよね。


後に松田優作主演で「最も危険な遊戯」「蘇える金狼」「野獣死すべし」を撮った
村川透の日活でのデビュー作。
1972年。つまり、日活はロマンポルノの時代であって、そういうシーンが随所に出てくる。
脚本は神代辰巳と共同で書いている。


ユキは新宿で出会った若い男に処女を与える。
男は集団スリの一味であって、逮捕後は別な男がユキの前に現れる。
この男と行動を共にしていく中で、ユキもまたスリに関わるようになり・・・
上京してきたばかりなのか、最初は男性の前で固くなっていたユキも
男に身を任せる度に娼婦のようになっていく。
とことん、堕ちていく。


舞台は新宿。紀伊国屋書店とか伊勢丹とか、丸の内線の新宿三丁目駅
見ればすぐ分かる。
街の表面は時代と共にどんどん新しくなっていくのに、そのエッセンスは変わらない。
紀伊国屋書店の茶色いレンガとかね。
お金がなくて、ゲリラ撮影だったんだろうなあ。


僕みたいな昭和50年代生まれの人間にとって、
昭和40年代の東京ってありもしないノスタルジアの対象になりえて、妙に懐かしい。
ああ、こんなだったよなあと思う。
小さい頃に見た刑事ドラマとかさ、街の描き方にこういう雰囲気を残していた。


この作品もまた「映画暦」に載っていて、小さい頃から名前だけは知っていた。
男女入り乱れて泡風呂ではしゃぎあう場面の写真と、
題詞は「此れぞ真のアワ踊り―踊るアホウに見るアホウ、同じ見るなら踊らにゃ損々―」とある。
なるほどなあ、そういうことだったのか。
パチンコの旅打ちみたいなもんで、明日から遠くに旅してスリで一儲け。
だけどいつだって刑事たちに見張られ、いつ捕まってもおかしくない境遇。
出し抜けるか、やられるか。
全員集まって、女の部屋でやけっぱちのドンちゃん騒ぎ。
踊るアホウに見るアホウ、歌いながら泡風呂の中に飛び込んでいく。
さて、彼らに明日はあるのか?
ユキはこれから先どうなっていく?


75分と短くて、あっという間に終わってしまう。
だけど、これ、よくできている。
なかなか切ない終わり方をしてみせる。


松田優作の出た映画を、また見直したくなった。
蘇える金狼」とかさ、ほんとかっこよかったよね。