三鷹バル

26日の金曜のこと。早々とオフィスを出たら着信あり。
今度飲もうと言っていた映画系の後輩Sからで、今日どうですかと。
ちょうどいいねと三鷹台で20時に待ち合わせる。
M(という食通の後輩)の薦める、いいバルがあるみたいなんですよと。


井の頭線に乗って三鷹台へ移動。S君と会う。
さっそくその「三鷹バル」へ。スペインバルと書かれている。
10人も入ればいっぱいの小さな店。カウンターだけの立ち飲み。
即に満杯で、後からまた来ることにする。
客の中にはスペイン人らしき人もいた。
http://www.tokyo-calendar.tv/dining/12516.html


駅前に戻って、安い焼き鳥屋でビールを飲む。
串焼きは悪くはなかったけど、小蝿が飛んでいた。最悪。
最近どうよ?と話し始めたら、S君は近々、東京を引き上げて郷里に帰るとのこと。
いきなり聞いたので、びっくり。
向こうで飲食店をやろうとしているということで、その計画を聞く。
「カレー屋がいいと思うんですけど」と言うので、
「いいじゃんカレー屋って。どこで店出してもニーズがあると思うよ」と僕は言う。
餞じゃないけど、この1軒目は僕がおごる。


S君の出した同人誌に僕も短編を寄せた。
その同人誌はそれっきりになったけど、いい思い出になった。
そもそもS君と最初に会ったのは映画仲間の上映会で、
泥酔していた僕はS君と殴り合いの喧嘩になった。
もちろん、僕の方は記憶にない。
翌朝自分の部屋で目が覚めて、激しく二日酔い。
昨日俺なんかしてない?と周りに聞いてみて、あんた昨日大変だったんだから!!と。


バルに移動する。相変わらず混んでいる。
僕らが入ると、若い店主は中の人たちに詰めてもらえますか、と。
スペースを作ってもらう。
僕らの後にも客はどんどん入れ替わり立ち代り、だけど少しずつ増えていって、
こりゃどこまで入るのかと。マックスでは20人は詰め込んだだろうか?
ふらりと入ってすぐ出て行く人もいれば、僕らのように時間の許す限り長居する人たちもいて。
鶏の煮込みとか、アンチョビ、レバーパテなど。
どれを食べてもおいしかった。
僕はワインに詳しくないので何を飲んだのか覚えていないけど、
S君の頼むシェリーを、同じの、と言って飲んだ。


S君の所属していた早稲田の映件の話になる。
当時、8年生に金井康史ってすごい人がいて・・・、
あ、と思い出す。PFFでも入選した「きままちゃんはあんたたちじゃないからのぼるのぼる」が
TYUTAYAのレーベルでビデオ化されて、学生時代に借りて見たことがある。
保坂和志も早稲田で映画に関わっていたという話に移って、
「カンバセーション・ピース」がいかにすごい小説かとため息をつく。
僕はこの本ををニューヨークの地下鉄の中で読んで、コニー・アイランドへと向かった。
最近のすごい小説は?と聞いて、猫田道子の「うわさのベーコン」を教えてもらう。
余りの破綻っぷりに、ここには何かがあるととある新人賞の最終選考まで残ったんだけど、審査員が激怒。
高橋源一郎が激賞して出版。残骸のようなストリートいうか言葉が何の脈絡もなく続く。
この人は本物の××××であるようだ。
でも、持って生まれた小説家としての才能があるんだろうなと僕は思った。
音楽で言ったら The Shuggs のようなものなんだろう。アウトサイダー・アートの亜種かもしれない。
最後に最近調子のよくない、後輩Hの動向を聞く。聞いてて辛い気持ちになった。


井の頭線で吉祥寺へ。そこで別れる。
午前0時半。中央線はまだあったけど、なんとなく歩いて帰りたくなる。
吉祥寺から荻窪まで。1時間かかって、あれこれと考える。
これから何年先になるか分からないけど、S君が郷里で店を出したら会いに行こうと思う。
そしてその店がバーだったら、店を閉めた後、朝まで飲もうと思う。