Ween

昔のライブのパッケージ化とか、
持ってないアルバムがひっそりと店頭に並んでいたら無条件で買うバンド。
30代も半ばになって、そういうの僕の中でめっきり少なくなってきたけど、
今でも Ween はリストのてっぺんにあって、フニョフニョした光を放っている。


この前の土曜、92年のライブアルバムのボーナスだったライブDVDを見た。
http://www.hmv.co.jp/product/detail/2805687
これ、若き日の Ween がほんとデタラメで、支離滅裂で、
だけど音楽的:センス、教養、腕がピカイチであることを伝える、なかなかの作品だった。
素人が撮影した、グラグラ揺れる画像最悪のホームビデオを切り貼りしたものなんだけど、
この粗雑さ加減が Ween の音楽にほんと最適。


メタル、パンク、カントリー、CM音楽、ティーンポップ。
何でも飲み込んでゲップで吐き出す。
歌も曲も演奏もうまいんだけど、超B級。
あえてわざわざ変なことをして、ニヤニヤとお茶を濁す
風貌はアメリカの普通の、いけてない若者(今はおっさん)。
挙動はその辺のどこにでもいる、無害な変わり者。
ステージの上でもヨレヨレ、ヨタヨタしていて、
無駄にオクターブの広い喉と縦横無尽なギターを披露する。


中核にいるのは、ヴォーカルの Gene Ween とギターの Dean Ween の2人。
苗字がどちらも Ween なんだけど、たぶん兄弟ではないんだろうと思う。Ramones みたいに。
調べたらすぐ分かるんだろうけど、そんなことしたらつまんなくなるなーと、あえて調べない。
というか日本語の Wikiepedia に載ってなくて、英語の Wikipedia を読むのがめんどくさい。


以前、Soulwax について書いたとき、似てるバンドって何だろうと考えたとき、
僕の中では Ween だった。
でも、Ween に似てるバンドを考えてみると真っ先の思いつくのは Negativland であって、
SoulwaxNegativland は全然違う。
ま、そんなことはどうでもいいか。
なお、Soulwax がユーモアならば、Ween はジョークだと思う。Negativland はブラックユーモア。


どのアルバムもたくさん曲が入ってて、全部曲調が異なる。
なんでも手当たりしだい放り込んで、ミキサーにかけて5秒だけかき混ぜて出来上がり。
カラフルな万華鏡には程遠く、
どっちかと言えば、アメリカのケーブルテレビを無作為にザッピングしたようなもの。
説教師が熱弁を振るってるかと思えば、隣ではアメフトの試合でチアガールが踊ってて、
その隣では昔のアニメ、大安売りのTVショッピング、ソープドラマ、大自然をドキュメント。
なんつうかなあ、僕の中ではアメリカの郊外のごく普通の住宅地の一角のとある家、
適度に芝生を刈りつつ、適度に適当で、
子供の放り投げた雑多なガラクタが散らばってる、そんな感じ。
食ってるものは毎朝、ミルクたっぷりのチョコレート味のシリアル。
それを毎回欠かさず「まずい」っつって残すような。


どのアルバムもいいんだけど、1つだけお勧めを挙げるならば97年の「The Mollusk」かなあ。
これの「The Blarney Stone」ってのが大好きなんですね。
北欧のバイキングが毛皮着て、港に戻ってきて酒場で骨を振り回して、
みんなで肩を抱き合って合唱してるような曲。
最初に聞いたとき、何をどうしたら
ロックとカテゴライズされるバンドがこういう曲を演奏するのだろうと不思議かつ、
目頭が熱くなった。アーイヤーイヤーイというコーラスに叙情性たっぷりのアコーディオン
人類の持つ原初の記憶に訴えかけるんですね。
「Live in Chicago」というライブDVDで最後に演奏される。これがまたいい。
(このライブDVDでは、カバー曲として Led Zeppelin の「All My Love」を披露。とんでもない選曲。
 この何のひねりもない大真面目な演奏が、Ween の何たるかを分かりやすく表している)


あと、なんと、Boredomsと合体した「Z-Rock Hawaii」これが真骨頂かなあ。
「The Mollusk」と同じ年なんだけど。
Boredoms は EYE / Yamamoto / Yoshimi / Yoshikawa という編成の時代。
Boredoms とやってるってのがこのバンドの何たるか、というか偉大さを物語っていると思う。
今ならもう、ありえへんよ。


こいつらすげぇ!!とぶっとんだ破壊力に浸るなら、
2枚組ライブの「Paintin The Town Brown」
90年代アメリカのオルタナの裏でどんな音楽がひっそりと奏でられていたか?
これぞ、歴史。絶対欠かせない。


こいつらは明日世界が終わろうとも、「で、なに?」って絶対ヘラヘラしてるはず。
だから、好き。