寓話

「あるところに、幸福な人たちの住む国がありました。
 誰もがニコニコと幸せに暮らしていました。


 隣には、不幸な人たちの住む国がありました。
 飢えと病気と犯罪。
 この国の人たちは心の底から笑うことはないのでした。


 あるとき、幸福な国の人たちは考えました。
 不幸な人たちを救ってあげようと。
 幸福な国の大統領は、不幸な国の大統領に言いました。
 『どうだ、君の国を丸ごとくれないか。
  みんなが幸福の国に入ってしまえばいい』


 不幸な国の大統領はため息をつきながら首を振って、断りました。
 すると、幸福の国の大統領は『しょうがないな』と
 戦争をしかけることにしました。
 幸福な国の人たちが兵隊となって、不幸な国に侵入しました。


 戦争は長引いて、どちらの国の人たちもたくさん死にました。
 不幸な国の人たちは、もっと不幸になりました。


 幸福な国の人たちは、もっと幸福になりました。
 なぜなら、幸福な気分のまま、
 幸福の国のために死ぬことができるからです。


 結局、戦争は幸福な国が勝ちました。
 そして、不幸な国は幸福な国に併合されることになりました。
 (不幸な国の大統領は処刑されました)


 その後、元々不幸な国に暮らしていた人たちは
 元々幸福な国に暮らしていた人たちと一緒になって、
 幸せになりましたとさ。


 そして、幸福な国の人たちは、この世の中に、
 他に不幸な人たちの暮らす国がないか、探すのでした。


 めでたし、めでたし」