東京ドーム、巨人−横浜戦

昨日の夜、東京ドームに巨人−横浜戦を見に行った。
神保町で働いている間にドームで見たいなあと日々思っていたら、
なぜかうまいことお客さんからチケットをもらった。
チケットは2枚だったんだけど他に行ってくれる人もなく、1人で見に行く。


定時よりちょっと早くオフィスを出る。
神保町から水道橋まで三田線で一駅だけど、歩いていく。
水道橋の駅に近付いた頃から、巨人ファンの姿が目に付く。
ユニフォームを着たカップルや夫婦、親子連れ。
「HARA」と「OGASAWARA」の名前が多かったように思う。


僕がもらったのは2階内野指定席の引換券。
階段を上ってドームの前まで来て、窓口で交換しようと思って辺りを見渡してみたら長蛇の列。
どうも何かの抽選かキャンペーンがあって、その当選者が見にきているようだ。
僕がもらったチケットもそういう類なのだろう。
長いこと待たされて、ようやく入場券を入手。
一緒に、「メモリアル・ウィークス チャンスカード」というのがついてくる。
ラッキーナンバーが書かれている。僕は19505番。
抽選で記念品がもらえるようだ。
 S賞:メモリアル・ウィークス・特別セット
 A賞:アディダスグローブ
 B賞:ネックストラップチケットホルダー
(7回裏に当選者発表。オーロラヴィジョンに下何桁が何番と表示され、もちろん僕は外れた)
チャンスカードを読むと今年は読売巨人軍創立75周年であるらしい。
それもあって、7月7日・8日・9日の横浜との3連戦は
「復刻ユニフォームシリーズ」となっていて、
今回着用するのは1936年の第2回米国遠征時に使用されたものとのこと。
基本的にアンチ巨人で30余年の人生を過ごしてきたので、めでたくもなんともない。


入場ゲートに入るまでにまたさらに並ぶ。
2階への階段は大混雑。蒸し暑い。
18時の試合開始が近付いていて、周りは多少イライラしている。
中に入るときに、「ハローキティプリティリーグ歴代ユニホームストラップ(非売品)」
というのをもらう。
これ、日替わりになっていて、9日のは「V9時代」だって。
欲しい人がいたらあげます。


中に入って荷物をコインロッカーに預けて、生ビールを買ってスタンドへ。
試合は即に始まっていた。
客席はガラガラ、しかしすぐにも埋まりだして7回にはほぼ満席となっていた。
復刻ユニフォームシリーズだからか?
それとも本拠地ドームでの巨人戦っていつも満員なのか。
しかもそのほとんどが巨人ファン。オレンジ色が目立つ。
もう横浜の応援団なんて可哀想なもんで、
3塁側外野席の真ん中にちょこんと青のユニフォームが固まっているだけだった。


試合は2−0で巨人が勝ち。
小笠原と脇谷のソロホームランで1点ずつというなんとも大味な試合。
息詰まる投手戦には程遠く、ただ単に、打って盗塁しても後が続かないというだけの。
しまらなかったなあ。というかほんと横浜は弱いね。
東京ドームは超アウェイだし、負のオーラが漂っていた。
最後、9回表は3番内川の四球、4番村田のヒットに始まって
満塁となって盛り上がったものの、結局三振に倒れる。
見せ場はここだけだった。


最初5回の表までは19時までにサーッと終わってしまって、
こりゃ20時過ぎには終わるかもと思ったんだけど、
そこから先はダラダラと長くなって。
ビール2杯飲んだ僕はほんわかとした気持ちになって眠ってしまった。
僕の座った席は2階のほぼ一番後ろでグラウンドを斜め真上から見下ろす感じ。
ボケーッと考え事を始めるとたいがい、いい場面を見逃した。
気がつくとホームランがスタンドに入った後だったり。
席に座っている間の半分は他の事考えていたかなあ。
でもやはり、野球を見に行くことは楽しい。


あ、そうだ。
8回の裏1死という場面で工藤が登板して、2アウト取ってマウンドを下りた。
これが通算600試合目の登板だったようで、花束の贈呈があった。
これはいいものを見た。
だってさ、僕が物心ついた頃から投げてるんだよ?


あと、AKB48のメンバーが試合の合間合間に出てきて、オレンジのボンボンを持って踊ってた。
(これ、アナウンスがあったから「ふーん」ってとこだけど、
 知らなかったら、巨人のチアガールってやけに可愛いなーと思ったことだろう)


印象的だった出来事:
隣に、いけてない若者が1人座って試合を眺めていた。
朴訥として、不器用で、友達の少なそうな。
時々、携帯を取り出しては眺めてる。
3回ぐらいだったか、携帯に掛かってきたようで誰かと話し始める。
立ち上がって、通路を下りていく。
僕は「チェッ」と思う。なんだ、彼女が遅れてやってくるのか。


その後10分以上経過して、彼の後を付いて階段を上ってきたのは
彼よりも輪をかけていけてない、うだつの上がらなそうなオヤジ。
席に2人並んで座って、オヤジは息子にビニール袋の中の弁当を渡す。
安い日替わり弁当だった。そう書いてあった。
ドームの弁当屋にはもっと高いものがたくさん売られている。
蟹工船」ブームで、北海道から蟹の弁当を売る業者まで進出していたぐらいだ。


その日替わり弁当が、オヤジ、縦にして持っていたようで
半分に寄ってしまってご飯とおかずがグチャグチャになってしまっている。
息子はそれを少しずつ少しずつ食べる。
オヤジは、「学校はどうだ?」とかボソボソと聞く。
息子はほとんど答えない。弁当を食べながら、試合を眺める。
特に巨人ファンでも横浜ファンでもなさそうだ。
オヤジは「昔の巨人は…」と一しきり思い出を語る。
そしてその思い出が尽きたのか、途中から黙りだした。
ボロボロになった手帳を取り出して、鉛筆の書き込みがびっしりで、
そこに何度も何度も前に後ろにページをめくって、鉛筆を動かしていった。
内容よりも、書くという行為そのものが大事だって感じで。
試合はもう、見ていなかった。
ファインプレーがあったりして、時々息子が歓声を上げた。
そのときだけ、オヤジは手帳から顔を離した。
在りし日の巨人軍をそこに見たのか、それとも…
試合の終わる頃、息子は弁当を全て食べきった。


試合が終わって、2人はすぐに立ち上がって出て行った。
僕もすぐに帰ろうとした。
大勢の人ごみの中を歩く。
隣の若者に、そしてオヤジに、幸あらんことを。