スペイン一人旅 その18(7/27:「Casa」とは家のことです)

okmrtyhk2009-08-17


「Lesseps」駅を探してひたすら西へ。ほんとにあるのかね?
グエル公園からそれまで続いていた観光客の流れも途絶えて、僕一人になる。
バルセロナ在住の人はバスに乗っちゃうんですね。
僕もバスに乗ればよかったんだろうけど。
でも、地下鉄と違ってバスは難しいんですね。いつ払うのか、いつ下りるのか。
日本でもバスに外国人旅行者が乗ってくることって少ないでしょう?
そう言えば、バルセロナは2階建ての真っ赤な観光バスがあちこちに走っていて、
屋根のない2階席はとても気持ちよさそうだった。
あともう1日滞在していたら、とりあえず乗ってみたと思う。


かなり歩いた末に駅を見つけ、3号線にて2駅「Diagonal」で下りる。
この辺りはバルセロナの目抜き通りのようで、CAMPER や KOOKAI といった店が並んでいた。


次は、「カサ・ミラ
グラシア通りに面した、ガウディ設計による真っ白い、アパート?
波間をイメージしたのか、ウネウネしてる。
外からよく見ると各階のベランダには波なのか海草なのか、黒いオブジェが配置されている。
6階建てだったかな。屋上あり。
入場券を買おうとしたらとてつもなく長い行列。30分待ち。
この日ガウディ関係はどれもそうだったなあ。
することもなく、会社にメールを送ったりする。
9.5ユーロ支払って中へ。
まずは中庭。屋上から光が降り注ぐ。
中は結構、モダン。だけどなんというか蜃気楼のよう。
長い間時間をかけて自立的に形を変えていくような錯覚に捕われる。


階段を上って、最上階の一つ前へ。
この階全体が、今から100年前を再現する博物館のようになっている。
優雅なバスルーム。サロンのような部屋があって、ダイニング・ルーム、物置?
年季の入った乗馬の鞍や三輪自転車。
山のように果物の詰まれた籠を置いたキッチン。
お針子の部屋には足踏み式のミシン、その上に白のレース。アイロン台に白のテーブルクロス。
メイドの住む小さな部屋。
全体的に、これがアール・ヌーヴォーか、という雰囲気。


お土産屋はこのアール・ヌーヴォー趣味全開であちこちに「Art Nouveau」の言葉が踊る。
ポストカードもポスターもノートもその手のエキゾチックで瀟洒な復古調。
記念に1枚絵葉書を買う。1.1ユーロ。


最上階はミュージアムになってるんだけど、これが何というか独特の雰囲気を持っていて。
どことなく、オカルトとニューエイジの匂いあり。流れている静かな音楽もその手のヒーリング系
アーチを多用した空間。薄暗い照明の中で、
飾ってあるものも化石となったとうもろこしや水牛の背骨、亀の甲羅に蜂の巣。
あれはいったいなんだったのだろう。
フロアの反対側にはカサ・ミラの模型など。


屋上に上がってみる。
ガウディのガウディたる摩訶不思議な白い尖塔がニョキニョキと生えている。
なだらかな砂丘のようになっていて、わずかばかりの階段で上に下に進んでいく。
なんつうか全体的なイメージで言えば、海の底に棲み始めたカタツムリが見る夢ってとこか。


このカサ・ミラの1階がおしゃれなアート系のお土産屋。
恐らく地元アーティストのデザインしたTシャツやカバンなど。
バルセロナの建物の写真集など見るものあれこれ欲しくなるが我慢する。
絵葉書を1枚だけ買う。1ユーロ。


喉が渇いたと通りの向かいのスターバックスに入ってみるが、混雑していて断念。


次は同じくガウディで、カサ・バトリョ
3号線で1駅、「Passeig de Gracia」で下りる。


ここで事件が起きる。
カーゴパンツの左の内ポケットに穴が開いてしまって、物が入れられなくなってしまった。
でも、習慣でどうしても時々、無意識のうちにここに突っ込んでしまう。
主に財布を入れていて、このときもやはり財布を。
車両から出て改札に向かって歩いているうちに穴から落ちて左足の裾から財布がボトッと。
危ない危ないと拾い上げて左のサイドポケットへ。
改札をくぐる。
ふと見ると男の手が財布に伸びていて、スッと抜き取られる。
ドキッとする。とっさに振り向いて男の手首を握る。
諦めたのか、男は握っていた財布から手を離す。財布が床に投げ出される。拾う。
その間に男は改札から離れ、何食わぬ顔をしてホームに向かって歩き出していた。
すっごい凶悪な顔をしていたなあ。
ある意味バルセロナの人っておっとりしていると思った。
世界の他の国々のスリならば知らぬ存ぜぬでしらばっくれて絶対財布を返さないのでは。
その場に警察官がいるのでもない限り。
とにかく、あの瞬間の僕は1年に1度あるかないかの動体視力で動きを捉え、
これまた1年に1度あるかないかの反射神経で男の手首を掴んだ。
あのときの僕は武道の達人であるかのように、なんともかっこよかった。
側に女の子がいたら僕に惚れたと思う。


スリに遭ってなんともなかったというドキドキ感の中、カサ・バトリョへ。
こちらは並ぶの15分ぐらいで済んだかな。
暇なので何気なく地球の歩き方の地図を見ていたら、カサ・バトリョの近くに〒のマークが。
なんだ、郵便局あるんじゃん。
でも、この時点で14時半過ぎ、郵便局は普通14時で閉まるみたいなので恐らくもう終わってる。
残念。あともう少しで中に入れそうだったので、先に見学を終えることにする。


このカサ・バトリョ、入場料が17.5ユーロとバカ高い。
地球の歩き方に10%OFFクーポンのページがあって、見せたらほんとに10%OFFとなった。
ページには利用済みのスタンプが押された。
なんでこんなに高いかと言うと、音声ガイド込みなんですね。
ここには日本語含め10カ国分ぐらいはあったように思う。
マドリードだと王宮にプラド美術館バルセロナだとガウディのあれこれ、
どこに行ってもたいがいはこういう音声ガイドがあった。2ユーロかな。
でも僕は全然利用しなかった。
なんだかまどろっこしいというのと、目で見たものが全てだという思いがあったから。
というかそれ以前に金かかるし。
今回聞きながら回ってみたんだけど、1番を聞いている間に6番まで来てしまって、
6番を聞いているうちに10番って感じで。
このモタモタ感が堪らない。
というか他の人の鑑賞ペースってこれぐらいなんだろうね。ゆったり見てる。
貧乏性の僕は1日のうちにあれも見なきゃこれも見なきゃって方だから、全部駆け足になってしまう。
あと、左手に受話器のような音声ガイドを持って、右手に荷物を詰めた袋を持って、
なおかつ右手にデジカメを持って写真を撮ろうとするときのブザマさと言ったら。
ガイド要らないから2ユーロ割引して、と言いたかった。
なお、借りるときに日本人だと言ったらアンケートですってことで
どこのホテルに泊まってるか聞かれた。


でもせっかくだから、聞くときはちゃんと聞く。
このカサ・バトリョは深海をイメージしたデザインであり、ネモ船長を云々かんぬん。
なるほどと思う。やはり海なんだよな。海辺の貝殻と引いては返す波と。
だから建物が砂色なんだな。
全てが緩やかな曲線から成り立っていて、儚い泡のよう。
あちこちにはめ込まれた丸いステンドグラス。
幾何学的な模様が漂うように広がる。
歪んで、よじれて、ねじくれて。
キラキラした輝きとヌメヌメした感触とが一度に表現されている。正に、海。
子供が心の中に思い描いて画用紙に描く夢の家を現実化したかのよう。
こういうのを設計して実際に現実化させるガウディってすげーなと感心する。


カサ・ミラと違ってここは建物全体を見学することができる。
建物の真ん中はエレベーターが貫かれている。
えらく旧式で、箱は木製。もしかしたら100年前のものなのかも。
中庭はないけど中心部の天井がガラス張りになっていて、建物全体に明るい日差しが入り込む。


屋上に出る。ここもまた、戯れる深海魚のよう。
音声ガイドを聞いたら水槽の部屋だったかな。小さなドームに入ったら壁を水が伝っていた。


下の階に下りると屋根裏部屋。
何に使うのか見当もつかない、何もないけどデザインだけは斬新な、そんな空間が広がっていた。


この日訪れたサグラダ・ファミリア教会もグエル公園
カサ・ミラカサ・バトリョも全て、世界遺産とのこと。