スペイン一人旅 その21(7/28:フニクリ、フニクラ)

okmrtyhk2009-08-20


寝てると携帯が振動して、メールが届いたのだと夢うつつの中で思う。
前の日会社のML宛てに送ったから、誰かが返事をくれたのだろう。
時々、会社の映画部のMLからも届く。8月上旬に社内で上映会を開催するという。


6時起床。シャワーを浴びたりする。
7時になって下のカフェテリアに下りていく。
ビュッフェがまだ開いていない。階段に座って待つ。
この日は最終日なので昼はどこかで食べるつもりでいる。
朝はホットミルク、ホットコーヒー、珍しく缶詰じゃない果物があったのでメロンを食べる。


カフェテリアで日本人の男子学生4人組を見かける。
彼らは僕がその後ロビーでインターネットをしていたら、スーツケースを抱えて出て行った。
恐らく同じ旅行会社で、同じ日程で旅行をしていたのだろう。
僕はバルセロナで延泊したので最終日だけ異なったけど。


インターネットでは、google のメールがログインできなくて四苦八苦する。
ドメインgmail.com となるべきが google.com でログインしようとしていた。


この日の主な予定はモンジュイックの丘とピカソ美術館。
その前にまず、郵便局へ行く。
3号線で「Passeig de Gracia」まで行って、昨日行ったカサ・バトリョの反対方向。
窓口で「日本までお願いします」と絵葉書を差し出す。
黄色い制服を着た女性が機械で重さを測る。0.62ユーロ。
地球の歩き方を見ると0.78ユーロで、マドリードでもそうだった。
もしかして国内料金?届かないかも。

絵葉書を出すことができて肩の荷が1つ下りる。
あともう1つ問題は、昨日買った vaho のカバンを
全て詰めて持って帰れるような大きな紙袋を調達すること。
どっかで買えないものか?
日本のデパートだとエスカレーター脇で売ってたりもするが。


3号線で「Paral lel」駅までそのまま引き返してくる。
ホテルのあるいつも利用している駅なんだけど、
ここにはモンジュイックの丘までの「フニクラ」というケーブルカーがあるんですね。
1日乗車券でそのまま乗れる。
先頭車両に乗って、せっかくだからフロントガラスの前に立つ。眺めもよかろうと。
そしたら孫を連れたおじいさんが乗ってきて、その孫が車両の一番前へと駆け寄る。
フロントガラスにベタッと貼り付く。
「ごめんね」と言いたげにおじいさんが笑う。僕も笑い返す。


フニクラが発車する。10分おきに走っていて、僕が乗ったのは前のがちょうど行ってしまった後。
地下鉄のようにカウントダウンして、ゼロに近付いてドアが閉まる。
最初のうちは地下を走る。やがて先の方に光が見えてきて、地上に出る。
丘から下ってきたフニクラとすれ違う。
3分もなかっただろうか。すぐにも到着する。


さて、どこに行こう?まずは、手近なミロ美術館か。
歩いているうちに美術館の庭に出る。椰子の木の生えた涼しげな庭。
ミロの作ったと思われる彫刻というか摩訶不思議なオブジェが置かれている。
鉄製の赤茶けた巨大なプロペラが車輪をつけられて地面に立っている、などなど。


美術館に入ろうとしたら、開館は10時とのことで入り口前の座って何人か待っていた。
9時半過ぎ。どっか行ってまた戻ってこようと思うが、これだと恐らくどこも10時からだろう。
振り向くとレンガの階段があって、木々の中に消えていく。
試しに上ってみる。
藪の中に入る。一応段々の道が作られているが普段あんまり利用されないのだろう、
ほっとかれてる雰囲気があった。つぶれた缶ビールが何本か転がっていた。
黄色っぽい茶色の小さな蝶がヒラヒラと飛んでいる。
蜂も飛び回る。僕の周りをウロチョロして手で何度も払う。
とりあえず別の道路に出るが、何があるわけでもない。
ただし、眺めはいい。バルセロナが一望できた。
道路をさらに上っていく。時々、車が追い越していく。
建設途中の公園みたいなところに出る。周りには誰もいない。
引き返すことにする。


ミロ美術館の前で10時になるのを待って、中に入る。
入場料、8ユーロ。
「BE PART OF ART」ってキャンペーンが行われていて、
バルセロナの以下の美術館共通のチケットが22ユーロ。
 ・MUSEU PICASSO
 ・MNAC
 ・CCCB
 ・LA PEDRERA DE CAIXA CATALUNYA
 ・FUNDACIO ANTONI TAPIES
 ・FUNDACIO JOAN MIRO
 ・MACBA


「MACBA」(バルセロナ現代美術館)は昨日行っちゃったしなあ。
「FUNDACIO JOAN MIRO」がミロ美術館で、
ピカソ美術館と「CCCB」に行ったら元が取れそうだけど、
「CCCB」行くかわかんないしなあとやめておく。
そしたら後で分かったんだけど、「MNAC」ってこの後で行ったカタルーニャ美術館のことで、
結局1日のうちにミロ美術館、カタルーニャ美術館ピカソ美術館、「CCCB」と回って、
この共通チケットを買った方が断然安上がりだった。損した。
こういうのって後々まで心の中でブツブツ言うことになる。


□公式サイト
http://fundaciomiro-bcn.org/


ミロ美術館はその名の通り、ジョアン・ミロの作品ばかりを集めた美術館。
僕は取り立てて、ミロの作品が好きかというとそれほどはっきりと興味を持ったことはなく、
でも、現代アートを集めた展覧会であれこれ奇抜なもの、難解なものが飾られた中で
ミロのあの隙間の多いフニョーンとした絵に出合うと、なんだかホッとする。
この機会に改めてまとめて見て、「意外といいじゃん」という感想を抱く。


「Miro - Dupin. Art i poesia」という企画展が行われていた。
Dupin とは詩人で、Dupin の詩にミロが挿絵を描いたりといったコラボレーションが
十年以上に渡って続いたようだ。
その貴重な書物や雑誌の展示と、ミロの代表作のいくつか。


1910年代、まだ20代のミロはなんとなく曖昧な普通の風景画を描いていた。
それが20年代に入ってシュールレアリスムの時代となり、ミロらしくなっていく。
その後なぜか、70年代のミロに飛ぶ。
(というか僕の記憶が途中抜けているのかもしれない。印象に残らなくて)
1974年の大作がたくさん掛けられていて、晩年のダリは神懸り的にすごかったことを知る。
たいがいが3部作。
「死刑囚の希望 I・II・III」という作品にとても感銘を受けた。
巨大な白地を斜めのフニャフニャした黒い線が横切り、
そこに赤や黄色のぼやっとした円が描かれている。
それは線で区切られたスペースの中だったり外だったりする。
この円が、太陽なのか、月なのか、神なのか、自分自身なのか。
下の方には草木や地面を表すと思われる黒い線がザザッと描き込まれている。
言葉では説明できない。
でも何かとてつもない精神が表現されている。


もう1つ気になったのは、「May 1968」という作品。
もちろんこれは、パリの五月革命のこと。
黒の線は大ぶりで、キャンバスの上をのた打ち回る。画面上部ではシルクハットのような線も見える。
赤や黄色の何か。花火かもしれない。
あちこちに黒の手形がベタベタと。
その上に黒のペンキの固まりをぶつけたのだろう、そこから黒の滴が垂れ下がっている。
類まれなインパクト。


ミュージアム・ショップにてこの五月革命の絵葉書を買う。
あとかわいらしいのをもう1枚で、2ユーロ。
そして、折りたたみ式のスペイン風モダン・デザインの袋が7ユーロだったので買う。
大きな紙袋が手に入らなかったときの保険のために。


もう1つミュージアム・ショップがあって、
スペインに限らず、現代アートの画集を集める。
欲しいものばかり。心を鬼にして立ち去る。


常設コレクションの方はこれと言って面白いのはなかった。


売られていた絵葉書を見ると
本当は屋上に出られるみたいだけど、この日は開いていなかったようだ。