サマソニ09 その12(8/8:Metronomy 〜 Tom Tom Club)

Metronomy の4人が登場。振り返ると場内は満杯に近い。
Snoozer が昨年のアルバム No.1 に選んだとか、注目のグループ。
プレスのカメラマンもぐっと増える。
最初は「Nights Out」のオープニングを飾っていた、あの不気味でユーモラスな序曲を
3人が1つのシンセに群がって、1人がギターで主旋律を奏でて、合作のように披露する。
これだけで場内は興奮した歓声が。
打ち込みで簡単にできることをこの4人はバカ正直に生で再現してみせるんですね。
その後、「Nights Out」の曲が続く。


僕は「Nights Out」を持ってて何度か聞いてたんだけど完全に誤解してて、
ただのダンスアクトだと思っていた。打ち込みとヴォーカルとドラムみたいな。
そうじゃなくて、4人でバンドなんですね。あくまで。
ギター、ベース、ドラム、キーボード(時々サックス)の。
打ち込み一切なし、全て自分たちで音を出す。
この潔さ、いいね。
このサマソニ、打ち込み主体の音ばかり聞いてたので妙に新鮮だった。


正直よく分からないのが、メンバーは3人となっていて
写真とかビデオクリップを見ると白人男性3人組なんだけど、
出てきたのは白人男性2人と白人女性と黒人男性の4人。
メンバーチェンジしたのだろうか??それとも1人なんか事情があってピンチヒッター?
でも、サマソニの写真を見るとこの4人なんですね。
女性はキーボードかと思いきやドラムだった。


右胸には例の白い円盤。曲によっては白く光ったり、点滅したり。
ストラップで肩に掛けて、そこからコードが長く延びている。
そんな手軽に扱えない機材のようだ。
ベースやギターのシールドだけじゃなくてこのコードもとなると動き回るのにめんどくさそう。


あと、特筆すべきはあのギクシャクとした振り付け?
自分とこの演奏が終わって、他のメンバーがキーとなるメロディーを弾き始めると
ロボットのようにピッと腕ごと人差し指をそっちに向ける。決めのポーズっぽい。


演奏が意外とうまくて(特にベース)、ギターは妙に高い位置に抱えてて。
4人から出てくる音楽は人懐っこく、ハートウォーミング。
「聴ける」ライヴだったと思う。


Metronomy が終わると、DANCE STAGE からはサーッと人がいなくなる。
最前列もほぼ皆いなくなって、僕はその隙に真ん中へと移動する。
もう全然人がいなくて、Tom Tom Club の時にはガラガラなんじゃないかと心配になる・・・


・・・開演5分前。Metronomyほどじゃないけど、フロアは結構埋まった。
でも、年齢層が極端に高くなる。
40代を過ぎて、いまだにロックが好きな人の集まり。どこにこれだけの人が隠れていたのだろう?
もちろん若い人の姿も多い。半々ぐらいか。


Tom Tom ClubTalking Heads のベース、 Tina Weymouth とドラムの Chris Frantz 夫妻によるグループ。
Talking Heads の The Other Two というか、The Other Two の方が New OrderTom Tom Club なのか)


最初は仲間内のお遊び程度だったのだと思う。Talking Heads のサイドプロジェクトに過ぎなかった。
それがシングルをリリースしてみたら「Wordy Rappinghood」(邦題は「おしゃべり魔女 」)が大ヒット。
一躍本家に劣らぬ人気者に。
シリアスに音楽の可能性を追求する Talking Heads (2002年にはロックの殿堂入り)の裏面として、
楽しさ・陽気さを素直に打ち出した Tom Tom Club もまた、ファンにとっては重要なバンドになっていく。
なお、米米クラブの名前って Tom Tom Club から来てるんですよね。
あと、最初の頃のメンバーには、Adrian Brew がいた。その辺も Heads とかぶってる。


僕にとっては思い入れの深い、深すぎて語りきれない、
伝説の Talking Heads の2人がステージに立つという何よりもそこが一番の理由で
今回 Tom Tom Club を見たいと思った。


伝説なんですよ、伝説。単なる再結成じゃない。
その Tom Tom Club が遂に登場!感慨深げな歓声が上がる。
Chris Frantz はすぐ分かる。Tina Weymouth は・・・、どっちだろう?
プラチナ・ブロンドの女性が2人仲良くステージ中央まで。
背の高い方がタンバリンを手に4本並んだマイクの右端へ。
髪をお下げにした方がベースを抱える。こっちが Tina か。いやーよく似てるなあ。
途中のメンバー紹介で私の妹と言ってて、そうか、と思い出す。(名前は Victoria Clamp
結成当時の Tom Tom Club って確か3姉妹が揃ってたんですよね。
1人抜けて1人残ってる。


全部で7人。残りのメンバーは、
ギター、DJ、キーボード兼パーカッション、コーラス兼ラッパー兼パーカッションのジャマイカ人。


ステージ下や袖に観光客っぽいアメリカ人たちが何人もいて、
ビデオを撮ったり、デジカメで写真を撮ったり。
(彼らの1人は記念に日本人オーディエンスをと思ったのか、僕の写真を撮っていった)
たぶん、メンバーの家族たちなんだろうなあ。
基本は Chris & Tina 夫婦のファミリー&フレンズ・バンドだから、
「今度日本に呼ばれたんで行くんだけど、みんな行く?」みたいなノリで。
袖にプラチナ・ブロンドの若い女性が眠ってる赤ん坊を抱えてて、その側に旦那と思われる男性が立っていて。
たぶん、Tina か妹の Vitoria の娘なんじゃないかな。


演奏は正直、ゆるい。いくらパーカッションのメンバーがいて
黒人のファンキーなラッパーがいたところで、
往年の80年代頭の Talking Heads のズンドコハレハレには全然及ばない。
Tina のベースはいいとして、Chris のドラムがもう年老いてるんですね。新鮮なアイデアがない。
初心者向けドラム教則本そのままのビートを淡々と叩いて、なおかつモタモタしている。
その Chris のドラムが演奏の中心になっているから、全体としてグルーヴは何も生まれない。
でもその Chris がニコニコしながら叩いてて、
「楽しんでるかーい」なんて言ってると見てるこっちも「ま、いっか」と思ってしまう。
ファミリー・バンドが楽しく演奏している光景そのものがショーになっているという、
The Beach Boys か、Tom Tom Club か。
僕としては充分楽しかったですよ。それに見れて素直に、嬉しかった。


2曲目に「Genius of Love」途中に「Punk Lolita」ってのと「You Sexy Thing」ってのを挟んで(たぶん)
最後の1個前がタイプライターの音と共に「Wordy Rappinghood」
そして最後になんと、「Take Me To The River」
Taling Heads の曲って絶対やらないだろうなと思っていたから、かなり驚いた。
そうか、元々カバー曲(Al Green)なんだからやってもいいんですね。


Talking Heads のリーダー、David Byrne と残りのメンバーの確執は根深く、
 再結成はありえないと David Byrne は語っている。
 Chris Frantz かギターの Jerry Harrison による「メンバーをドアマット扱いした」という発言が有名。
 つまり、残りのメンバーにとっては Talking HeadsDavid Byrne のものであって、
 Talking Heads に対していい思いしてないんだよね・・・
 3人は「No Talking, Just Head」というアルバムまで出している)


聞いてて心の中にカーッと熱いものがこみ上げてきた。
僕もまた、「Take Me to the River, Drop Me in the Water」と歌う。
会場全体が1つになって歌う。いい瞬間だった。