和歌山出張2回目 その3(御坊へ〜道成寺)

okmrtyhk2009-10-08


9/19(土)
8時に目が覚める。風呂を沸かして入って、9時にチェックアウト。
電話したら「電気消して鍵を中に置いといてください」という非常に大雑把なもの。
受付は結局どこでどうなってるのかよく分からなかった。


9時を過ぎて駅へ。
後輩の住んでいる御坊まで、特急の切符を買う。2400円。
意外と高い。ま、いいかと思う。
スーツだとか会社鞄だとか、不要な荷物をコインロッカーに預ける。


昨晩「天才の栄光と挫折―数学者列伝」を読み終えて、
Vivo の本屋で暇つぶしに読む本を探す。特に読みたくなったものはなし。
乗り込んで、持ってきたハヤカワ・ポケット・ミステリの「天外消失」を読む。
ハヤカワから70年代前半に刊行された世界ミステリ全集の第18巻の短編集から、
現在入手困難なものを抜粋してまとめたもの。
70年代以前から幅広く選んでいるので第二次対戦前後の古いものもあるけど、読んでるとやめられない。
一番最初がエドガー・ライス・バローズによるターザンもの。
「えー?ターザン?」と正直思ったけど、読んでみたら味わい深いなかなかいい文章なんですね。
翻訳者の力量ってのもあるだろうけど。
そうか、ターザンって子供向けの童話じゃなかったわけだ。
その他にはジョルジュ・シムノンのメグレ警部ものがあったり。


特急はのんびりと進んでいく。
海南に差し掛かると海沿いに昨日訪れたマリーナシティの観覧車が見えた。


御坊に着く。
御坊市の名前を頂いた駅なので大きくて駅前も発展しているかと思いきや、思いっきり田舎。
何もなくて驚く。千葉の佐倉駅もこんな感じだったなあ。
後輩が迎えに来るまで本屋で本を見てるかドトールにでも入るかと考えていたのに、
暇をつぶす場所が全くない。


駅の看板に「ようこそクエの町御坊市へ」とある。
ふーん、港でクエが取れるのかと思いきや
後日後輩の旦那に聞いたところ長崎で水揚げされるクエを長崎の魚屋から買ってるだけとのこと・・・
名物を生み出すのは大変だ。


駅からは紀州鉄道ってのが出ている。JRではなく、私鉄。
全長2.7kmと日本で一番短い路線で鉄道マニアがよく訪れるらしい。
終点までわずか8分。ローカル線の旅っていいなあと思う。


後輩が娘を連れて、車で迎えに来る。
いったん後輩の家に行って荷物を置いて、
その後また車に乗って安珍清姫の物語で有名な、道成寺へ。
石段を上っていくと左右の門に仁王像。
門をくぐると、三重の塔。
脇の方に小さなお堂があって中を覗くと確か閻魔大王とその家来だったか。
本堂にてお参りをしておみくじを引く。吉だった。
境内はシルバー世代向けのツアーで賑わっていた。


「縁起堂」にて絵解き説法をしているというので拝観料600円を払って中に入る。
奥の「宝仏殿」で仏像の説明を始めたばかりと聞いて、まずはそちらへ。
四方に12体の仏像の並ぶ部屋。
住職により、正面の千手観音の説明がなされているところだった。
この手には何を持っている、こちらの手は何を、という説明が続いて、
最後にたった一つ、何も持っていない手のことが語られる。
確かこれは人の手を取るものだったか。うろ覚え。


次に、そもそもこの道成寺を建立した「かみなが姫」の話。
今から1300年前。この地域一帯を治めていた一家に娘が生まれるが、全く髪の毛が生えてこない。
髪は女の命であるのにこれでは不憫だと親は思う。
その頃、この一帯が不漁となり猟師たちが困りはてる。
海辺に光るものがあるらしいが、誰もが怖がって近寄らない。
意を決して娘の母親が訪れてみると海の中に光るものがあった。
海に潜ってみると小さな観音様だった。
母親はこの観音様を家に持って帰り日夜拝んでいると、不思議なことに女の子の髪が伸び始めた。
やがてこの女の子はたいそう美しい娘となり、その評判は遠くにも知れ渡り、
遂には文武天皇のお后となる。
娘は両親と観音様の恩返しのためにこの道成寺を建てることを文武天皇に進言する。
めでたし、めでたし。


この部屋の12体の仏像や渡来した絵がなんとも歴史を感じさせるんですね。
何よりも千手観音の迫力。
仏像に興味の全くない僕ですら、ふーむと腕を組みながら眺めた。関心を持った。


次に隣の縁起堂で安珍清姫の絵ときを聞く。
安珍清姫の物語って小さい頃、絵本や昔話で耳にしますよね。
案珍という大変美しい僧侶に一目惚れした清姫が逃げる安珍を追いかけているうちに龍となり、
とある寺にたどりついた安珍は鐘の中に隠れるものの
清姫はその鐘をとぐろを巻いて取り囲み、安珍清姫も共に死に絶えるという。
その寺というのがここ、道成寺なんですね。
2人は後にこの寺で供養され、成仏したとのこと。
これが寺のお坊さんにより絵巻物で語られる。
縁起堂の天井からは鐘が吊るされ、いやーこの中に閉じ込められたのかと思いながら見上げる。
部屋の端の方には御坊市のタバコ産業組合の婦人部の方々がタバコの箱で作成した
道成寺と階段を上ってくる金色の龍の模型。
よく見ると寺の壁がセブンスターだったり、木々のオレンジっぽい葉っぱがエコーだったり。
これはよくできている。
安珍清姫の話は能、歌舞伎、浄瑠璃と翻案され続け、坂東玉三郎も演じているということで
公演の模様がDVDで販売されていた。


寺を出て、石段を下りていく。
お土産屋が立ち並ぶ。「つりがねまんじゅう」というのを売っている。
ぶどうやみかん、栗も軒先に並んでいた。