「夕なぎ」

シルバーウィークに和歌山の後輩の家に行ったとき、
ルイス・ブニュエルと一緒に借りてきたのがクロード・ソーテ監督の「夕なぎ」
(以下、ストーリーの核心に触れます。要注意)


三角関係の行く末を描く、フランス映画。
1人の女が、2人の男の間で揺れ動く。


ロミー・シュナイダー扮する主人公は周りの状況に対して一見受動的に見えるが、
 その都度自分がなすべきことをしっかりと選択している。
 それが男2人にとっての、嫉妬や不安の種となる。


イブ・モンタン扮する実業家の中年男は常に、女を自分のものとしようとする。
 あれこれ手を回し、気を回し、大いに笑い、怒り、感情のままに生きる。


・(この作品の後にドゥシャン・マカヴェイエフの「スィート・ムーヴィー」に出演する、あの)
 サミー・フレイ扮する若い漫画家は自ら求めようとしない。感情も表さない。
 ただそこにいるだけなのに、女が寄り添ってほしいと感じるときになぜかいつも側にいるタイプ。


それまで一緒に暮らしていた中年男との間で感情のもつれが生まれて、女は家を出て行く。
海辺の町で女と漫画家が暮らし始める。
中年男がやっとのことで女を探し当てて会いに行く。女は中年男の元に戻る。
しかし、女の心は次第に中年男から離れていく。
女は漫画家に手紙を出す。何度も何度も。なのに、漫画家は返事を返さない。
中年男は女との生活を意味あるものにしたいと悩む。
結果思いついたことは、3人で暮らすことだった。
中年男は漫画家に会いに行って、3人の生活を提案する。もちろん、漫画家は拒む。
そのうちに折れて、漫画家は2人(だけでなく、家族皆が)住む家に行くことを同意する。
何も知らされていなかった女は、ある日突然漫画家が目の前に現れて驚く。
中年男はそれが女を幸福にする唯一の方法だと信じて疑わなかった。
女は中年男が常に自分を苦しめようとしていて、
漫画家を連れてきたことはその最たるものだと考える。


そして更に物語は続くのだが、この作品のポイントはここなのだと僕は思った。
三角関係の典型的な構図、力学として分かりやすい。
いかにして男女はすれ違うものなのか。


構図がしっかりしたら後は演じる3人の演技力。
3人とも甲乙つけがたいうまさで絶妙なトライアングルを描く。


余談。見終わった後で気付いたんだけど、イザベル・ユピールが出ていた。
全然気付かなかった。