松丸本舗オープン

昨日の夕方、とある会社の採用面接があったため午後休。
空いた時間に、この日オープンだった「松丸本舗」を見に行った。
丸の内OAZO丸善の4階に、松岡正剛プロデュースの一角ができるというもの。
松岡正剛の「松」と丸善の「丸」で「松丸」)


□ニュース
http://www.maruzen.co.jp/Blog/Blog/maruzen02/P/8515.aspx
http://business.nikkeibp.co.jp/article/manage/20091022/207806/
http://www.eel.co.jp/seigowchannel/archives/2009/10/news_55.html


僕が昨年から通ってお世話になっている編集学校の校長であり、
世間一般的には編集工学の第一人者である松岡正剛が理想とする本屋の本棚ってとこか。
本を編集するのではなく、「本を読む」という行為そのものを編集することで
情報とは何か?伝えるとは何か?伝わるとは何か?などなど様々なテーマを語っていく。
その思想の一端が今、リアルな本棚として結実した。


足を踏み入れて、なんじゃこりゃ?と唸る。
所狭しと積み込まれた本の山。
丸の内のインテリジェントなビルの中とは思えない。
膨大な蔵書を誇る個人の本棚というか蔵が、奇怪に増殖したかのよう。
ある意味、理路整然と本は並べられている。本屋だし。
でも、個人の妄想が溢れだしたかのようなのだ。
棚の並びがちょっとした迷宮のようになってて。
ボルヘスの「バベルの図書館」ってミニチュアにするとこんななんだろうな。


並べられた本のセレクションのテーマというか核心は
松岡正剛がその途方も無い読書暦の一端を垣間見せる「千夜千冊」とその周辺にある。
http://www.isis.ne.jp/mnn/senya/senya.html
「千夜千冊」で語られてきた書物、近接する書物を独自のカテゴリに分けて並べる。
え?これとこれが結びつくの?あれとそれが隣り合うの?っていう不思議な驚きがある。
分かりやすく、「文学」「スポーツ」「コンピューター」「絵本」「日本近代」などとなっていない。
どこに何があるのか、パッと見さっぱり分からない。
「普通の本屋」に慣れきっていると探せない。
全部の棚を一通り眺めて全体を俯瞰して、流れを掴んでようやく本の山へと分け入っていく。
ステマティックに、必要としている「商品」を探すのが普通の本屋だとしたら、
ここのコンセプトは本に「出会う」なのだと思う。
意外な本の並びによって、その本に新しい意味づけをなしていくわけだ。


ま、Village Vanguard の本棚をさらにドンキホーテ的にして、
かつ、大胆不敵に知的にして圧縮したものと言えばイメージは伝わるか。


ただ単に松岡正剛的本棚ってだけじゃなく、
松本清張の本棚を再現するセクションや各界を代表する読書の達人たちの本棚もある。
(今回は町田康山口智子、歌舞伎の市川亀治郎資生堂名誉会長の福原義春
この辺り、季節ごとに入れ替えるみたいだけど、
もし、この松丸本舗
「話題性を重視して本を売ること」や「本屋の新しい在り方の提言」が目的であるなら、
もっと速いテンポで移り変わっていったほうがいいように個人的には思う。
大変だろうけど・・・
「編集学校関係者だけが利用する不思議な品揃えの本屋」で終わってほしくない。


あと、地味に、編集学校関係者の「読書ノート」つまり、書評から選ばれた本、
70冊を売ってるセクションもあって。
編集学校はこの「松丸本舗」というリアルな本屋と
「本座」というSNSサイトを今年の目玉?としていて、
本座は編集学校の先生(師範・師範代)と生徒(学衆)が今、テスト利用中なんだけど、
これってブログが書けるだけじゃなくて「読書ノート」も書けるようになっていて。
例によって書きたがりで怖いもの知らずな岡村がぺーぺーの学衆であるにも関わらず、
師範・師範代の先輩方を差し置いてあれこれ書きまくっていたら2冊採用されていた。驚き。
講談社学芸文庫の「ギリシャ神話集」と
ハヤカワ文庫のSF、アーシュラ・K・ル=グィンの「闇の左手」
どっちも暇な夜に酒飲みながら書いたから適当なんだよね。ひー。恥ずかしい。
(恥ずかしすぎてここには公開しないです。松丸本舗に置いてあるコンピュータ内で見れます)


昨日はオープンということもあって、編集学校関係者の方々が手伝いに来ていたようだ。
エプロンをかけて店員っぽい格好をしていたけど、あの人は○○師範だよな、××師範だなよな、と。
他にも、どっかで見かけたことがあるなあって人がちらほらと。


せっかくだからなんか買うかと物色していたら
松岡正剛工作舎時代に出していたその筋では有名な雑誌「遊」のバックナンバーが2冊売られていて、
そのうちの1冊を買う。
1978年10月号?「1003」とある。
例によってコスミックな表紙に特集が「幻想人工都市」ってことで
J・G・バラードの「ヴァーミリオン・サンズ」が取り上げられたりしている。
「地球精神圏」という連載?の東が白川静で西がノーマン・メイラー。すげー。
荒俣宏もなんか書いてる。
初めて手にした。
この松丸本舗を1冊の雑誌に凝縮するならば、「遊」となるだろう。
それぐらい、松岡正剛の原点なのだと思う。


それにしても、何冊か置いてあった「ギリシャ神話集」と「闇の左手」
売れて欲しいなあ。売れてなかったら寂しい気持ちになるだろうなあ。
今、著者でもないのに本の身内な気持ち。