「インタラクティブの流儀」「記憶に残るウェブサイト」

先月、破のときの師範代からWEBクリエイターの中村勇吾のことを教えてもらう。
東大を出て建築家を志していたがFLASHと出会い、これだ!と方向転換。
「Ecotonoha」が2004年のカンヌ国際広告フェスティバルでグランプリを受賞。
https://www.ecotonoha.com/


元々はNECの環境活動プロモーションのプロジェクトなんだけど、
世界中の人からメッセージを集めて、100個集まると木を1本植えるという。
2003年から今に至るまでメッセージは寄せられ続けて、
これまでに5000本を越える木が植えられたとのこと。
1つ1つのメッセージが枝に伸びた葉になっていく様子が美しい。


以来、IT業界で働きいていてかなり今更だけど、
インタラクティブなコミュニケーションツールとしてのWEBというものに興味を持ち始めた。
実際にサイトを眺めて操作してみたり、その手の本を探して読んでみたりした。
昔はまった uniqlock なんかもその1つなんですね。
http://www.uniqlo.jp/uniqlock/

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最初に読んだのは「インタラクティブの流儀」という本で、なかなか面白かった。
http://www.amazon.co.jp/dp/484432358X


優れたインタラクティブサイトがどのようにして生まれたか?というドキュメンタリー。


スラムダンク一億冊感謝広告
 (期間限定だったため、残念ながらサイトとしてはもう存在しない)


・アマナの「『伝える』から『伝わる』へ」
 http://amana.jp/company/tsutawaru/


・ハインツの「逆さケチャップ」
 http://www.ketchup.jp/ketchup_report/


などなど。他には赤城乳業ガリガリ君のサイトとかね。
僕が正にその世代だったこともあって、スラムダンクの話がとてもよかった。
この業界の物事の進め方、つまり、
どういう役割の人物がいて、どういうことに悩んで、
どのようなゴールに向かってプロジェクトを進めていくのか、
その喜びは何なのかがよく分かった。

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その次に読んだのが
「記憶に残るウェブサイト トップクリエイター10組へのインタビュー集」
http://www.amazon.co.jp/dp/4861005272


中村勇吾、長谷川踏太、レイイナモト、エキソニモ、
セミトランスペアレント・デザイン、伊藤直樹、
田中耕一郎、西田幸司、鎌田貴史、鹿野護


不勉強な僕はどれも初めて聞く名前なんだけど、その筋では皆有名なんだろうな。
(なお、この中に登場する一人、田中耕一郎という方が uniqlock を手掛けている)


いかにしてWEBというものに出会ったかに始まり、
それが「仕事」として成り立つようになるまでの過程、
そして今後のこと。
あなたにとって表現とは何なのか?ってところにも踏み込んでいく。


インタビュアーもまたWEBクリエイターだというのがポイントで、
90年代・00年代のこの業界の流れをきちんと押さえた上での質問をしてて、
話が分かりやすい。何よりも「空気」が伝わってくる。


皆それぞれいいこと言うんですね。考えさせられる。
そのうち、個人的にとても唸らされた発言を3つ引用します。


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p.93 セミトランスペアレント・デザイン


ウェブデザインというと、全体からできあがっていくことが多いよ
うに思うのですが、部分から全体ができるというようなボトムアッ
プ型の方法もあるような気がしています。こういうことを言うと、
イデアなく、ひたすらディティールを詰めるだけに終始するよう
な印象を受けるかもしれませんが、そうではなくて、ミクロな視点
にも全体の設計を書き換えてしまうくらいの発見がある、というこ
とを実践から感じているんです。だから、フォントからアイデア
発想するということのも一つの手段だと思います。フォントという
部分一つ取っても、グラフィックデザインとは異なった側面を持っ
ていて、その違いを考えるだけでもウェブデザインの特殊さを感じ
ることができますし、そこを膨らましていけば、コンセプトになり
得るだけの強度を持つものになると思います。


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p.128 田中耕一


内と外を分ける感覚はあんまりないですね。それよりは”レイヤー”
という感じかな。感覚にはコンテクストがある、つまり、それを体
験する文脈があると思う。その文脈には、色々なレイヤーがあって、
世界中の人が同じ感覚で味わえるような文脈もあるし、もう一方で、
例えば、田中家しか共有できない文脈もあるわけですよ。
その中で、日本ならではの文脈を考えるとしたら、今のネット世代
の日本人は、携帯やブログの言葉でも話し言葉を使っているよね。
でも、ただ話し言葉を使っているだけじゃなくて、字面というか絵
面的な感覚で、話し言葉を書き言葉に翻訳して遊んでいるような感
じもあると思っていて、その”話す”と”書く”の混ざり具合が新
しい日本の言葉や意識を生み出しているんじゃないかな……と思う。


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p.167 鹿野譲


デザインの歴史について調べていて、面白いなと思ったのは、デザ
インは密接に産業と結びついているというか、大量生産ができるよ
うになって、デザインが必要になってきているという側面がある。
もし複製しないのであれば無責任に作ることができますが、大量に
複製するのであれば、社会的な影響力が大きくなるわけだから、そ
こには責任がともなうようになる。時代は装飾だけではない、機能
性を持ったデザインというものを必要としたんだと思うんです。


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