Caveman Hughscore

今年出会って最も聴いた音楽は、旧譜だけど Caveman Hughscore の同名アルバム。
いや、これはすごかった。


1995年発表。
Soft Machine のベーシスト Hugh Hopper
(Kevin Ayers 脱退後後に加入して、1969年「Volume Two」から1973年「Six」まで)が、
1990年代前半、Nirvanaを代表とするグランジオルタナティヴの時代に
なぜか70年代イギリスのカンタベリー・ミュージックのDNAを受け継ぐグループ、
Caveman Shoescore と合体。
(いや、ほんと、アメリカという国の地下水脈はほんとすごい)


女性ヴォーカル・ピアノ・アコーディオン、ベース、男性ヴォーカルドラムという編成に
Hugh Hopper のベースが加わる。つまり、ツイン・ベース。
何とも不思議な編成。


奏でられる音楽は、…言葉では説明がつかない。
全く聞いたことがない、というのではない。
アコーディオンのフレーズも、ドラムの変拍子もどこかで聞いたことがある。
だけど、思い出せない。
古今東西の様々な音楽、ロックに限らない様々な音楽。
その断片というか記憶を大きな鍋でグツグツと煮込んでその上澄みだけを
スープとして白いきれいな皿に盛られたかのよう。


「音響系」じゃなくて、言葉本来の意味でのポスト・ロック
1曲目の「A Rabbit or a Lemon」は
Faust「It's a Rainy Day, Sunshine Girl」や
This Heat「Paper Hut」以来の衝撃。
この2曲、この2曲の入ったアルバムを超えるのはないんじゃないかと僕は思っていた。
思わぬところからそれが出てきた。
そこには過去も現在も未来もない。永遠のポストモダン


ポイントは1995年ということ。
試しに今、Rockin'on が出したディスクガイドの1995年の項目を見てみる。
以下のアルバムが1995年発表だった。
 Bjork「Post」
 Foo Figters「Foo Fighters
 Alanis Morissette「Jagged Little Pill」
 Radiohead「The Bends」
 Oasis「(What's the Story) Morning Glory」
 The Cardigans 「Life」


音楽的なインパクトは同じぐらい大きい。
だけど、これらの売れ線にして、世の中を変えたとされるアルバムとは100万年光年隔たっている。
1995年という年はアメリカではグランジ・ムーヴメントもひと段落して、
イギリスはブリット・ポップ真っ最中。
そんな中ひっそりと発表されて一部の好事家を喜ばせた以外にはちっとも売れなかったわけだ。


何にも知らなくていきなりこれだけ聞いても、何のことかさっぱりわからない。
ある程度ロックの歴史を知ってて、いろんなジャンルを聞きこなしていないとその良さがわからない。
それが一番のネックだ。
何も知らずにこれを聞いて、「うわーすごい」「楽しい」と思えたら、音楽的にとんでもない天才だ。
そこが歯がゆい。
高校生の僕に聞かせても、素通りしていたかもしれない。
かろうじて Can との関連性を無理やり見出したかもしれないけど。


そんなところです。
誰にでも勧めたりはしない。でも、少しでも気になった人は探してみてほしい。
店頭で売ってることはまずなくて、中古で探すかHMVのサイトでオーダーするしかないんだろうけど。