一昨日、梅田で見た『アバター』と昨日京都の河原町で見た『インビクタス』について。
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あの『タイタニック』のジェームズ・キャメロン監督の12年ぶりの最新作。
公開40日にして『タイタニック』の興行収入記録を抜き去り、歴代No.1に躍り出たという。
先日アカデミー賞の候補作品が発表になったけど、これが取るだろうね。
なんかもうスケールというか風格が違う。
作品賞、監督賞は当確、撮影賞、編集賞、美術賞、視覚効果賞辺りも獲得するだろう。
とにかくすごい。何も言うことはない。
これを見て初めて、映画は21世紀に入ったと思った。
CGの完成度と、3Dだからってだけでここまで乗せられるとは。なんだか悔しい。
ストーリーはいたって単純。
敵対する二つの陣営があって主人公は片方に属していたんだけど、
もう片方の側に深入りするうちにそこに属していた女性と恋に落ちて、寝返る。
両者の対立は避けがたく、全面戦争に突入する。
『ロミオとジュリエット』『ウェスト・サイド・ストーリー』を持ち出すまでもなく、
非常にありがちな話。オリジナリティー、ゼロ。
でも、その分よくできている。
というか余りにもシンプルすぎて、作る側が余計な悩みに陥ることが一切なく清々しい。
ストーリーもキャラクターも単なる枠組み、CGと3Dを配置するための器に過ぎない。
ポイントはそれが透けて見えるどころか、
それしかないとジェームズ・キャメロンもあっけらかんと手の内を見せているのに、
それでも「面白い!」と思わせるところだ。
CGと3Dを抜いたら、結局は実写版ジブリに過ぎない。
そしてジブリには100万光年及ばない。
だけど、ねえ?
3Dのメガネをかけて20世紀FOXのあのロゴが飛び出てきたときの
あの得体の知れないワクワク感、あれはいったいなんなんだろ?
他の映画が同じのを見ても、決してああはならないと思う。
クライマックスの戦闘シーンは久々に本気で燃えた。
スクリーンに向かって僕もパンチを放ちたくなった。
闘争本能を刺激されて、「イケイケコロセコロセ」と心の中で叫んでいる。
「バカナニンゲンハミンナシネ」
新しいものは何もない。
ただ、どこまでも過剰にしたというだけだ。
だけどここまで徹底的にやり尽くして自らのビジョンを描ききった監督は
少なくともハリウッドではここ10年では皆無だったように思う。
絶対大画面で、3Dで、今このタイミングで見るべし。
DVDになったのを5年後にレンタルして家の14インチのテレビで見ていたりしたら・・・、
そんな自分にゾッとする。
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『インビクタス』
クリント・イーストウッド監督の最新作。
1995年、南アフリカ共和国。
アパルトヘイトを撤廃。同士である黒人たちに対して、
白人たちへの安易な復讐に走るのではなく赦しを求める大統領、ネルソン・マンデラ。
ラグビーのワールドカップに開催国として初出場となるが、国内の結束のため初優勝を願う。
その意志の強さ。モーガン・フリーマンが好演。
『アバター』同様、モーガン・フリーマンが主演男優賞を獲得すると思う。
ネルソン・マンデラにどこまで似てるのか、なりきってるのかよく分からない。
でも、圧倒的な存在感を放って揺ぎ無い。
クリント・イーストウッド監督の作品としてはここ数年最もアクがなく、あっさりしている。
語り口がうますぎて、捉えようがない。淀みなく、力強く感動的なストーリーを語りきってしまう。
この人は今、何を撮っても名画になってしまうのだな。
そういう意味でどこか物足りなく思ってしまうのはわがままか。
クリント・イーストウッドとして、ウェルメイド過ぎる。
いや、映画としては十分面白いのは確かなんですけど。