『その男狂棒に突き』『Mr. & Mrs. スミス』

『リンダ・リンダ・リンダ』が素晴らしかったので
山下敦弘監督の作品は一通り見て見ようと思い、まずは短編『その男狂棒に突き』
この前『リンダ…』を借りたときにレーベルの作品紹介の中に入っていて、
すごいインパクトがあった。


刑事まつり』シリーズの一作として、元々のタイトルは『汁刑事』
これだけで分かる人は分かるけど、AVをパロッたフェイク・ドキュメンタリーだった。


表の顔が刑事、裏の顔が汁男優という偉そうな言動の割には見るからにダメ男な尾崎充。
昔風俗で摘発を受けたときに優しくされたという理由で刑事が好きだというAV女優と絡むことになり、
観覧車でデートとなるがいきなり逆ギレ、こいつはどうも○○なのではないかと・・・


AVにさほど詳しいわけではないけど、
撮ってる自分が出てきて心情を語る、あるいはテロップが出てくるところはカンパニー松尾風。
監督は監督でダメ男、どことなく社会のハズレにいるような雰囲気がそのまんま。


やはり尾崎充というキャラクターのインパクト。ここに尽きる。
一度見たら忘れられない。
演じる山本剛史は「バカのハコ船」にも出演していて、監督の中学時代からの映画友達であるらしい。
監督・主演のコンビでバカをやる。
特典映像のインタビューでも言ってたけど、
これは高校の頃カメラ一台でやってた映画作りを再現する行為なのだ。
お金もなく技術もなく、10代後半の余りある時間とリビドーで
たわいのない作品を見よう見まねでひねり出す。
ああ、分かるなあ。
プロになってもう一度それができたのだから、山下敦弘という監督はとても幸福な人だ。


この作品を成立させているポイントとして、AV女優を演じた里美瑶子。
なんかやたらうまいなあと思って検索してみたら新東宝系のピンク映画がたくさんヒットした。
そうか、本職のその手の女優だったのか。
ひたすらキモい尾崎充を前にして、一歩も引かない「普通の人」を演じる。
ただものではない。


ここに監督山下敦弘が加わって絶妙なトライアングルが成立する。
山下敦弘ってほんとうまいな、と感心させられた。


特典映像のメイキングを見ていたら最後に
里美瑶子がリコーダーを吹いてみんなで「どんぐりころころ」を歌う場面があった。
これがなかなかいい。
夜中撮影していて、疲れてテンションが高くなって、たまたまそこにあったもので遊び出す。
ああ、映画の現場ってこうだなよなあと思った。

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『Mr. & Mrs. スミス』


ブラッド・ピットアンジェリーナ・ジョリー主演のアクション映画。
頭空っぽにしてハリウッド映画を楽しみたいと思ったとき、これが思い浮かんだ。
期待通り、頭空っぽにして見ることができた。


このセレブな2人が結婚して5年目か6年目の夫婦。
それぞれ敵対する裏の組織の殺し屋なのにお互いひた隠し。
それがある日バレてしまって、死闘が始まる。
ひたすらどうでもいい筋書き。ところどころ綻びていてご都合主義。
でも、その辺り見ててどうでもよくなった。
ブラッド・ピットも太ったなあとか、アンジーも年食ったなあとかそういうことを考えた。


夫婦喧嘩で映画を作れないものか、
どうせだったらとことんまでエスカレートさせてみよう。
そんなとこか。
見てる間は面白かったけど、結局は2時間の暇つぶし。