Mogwai 『Burning』

5月に入った辺りから Mogwai にはまっている。
静と動のコントラストのくっきりした、ヴォーカルなしの轟音。
iPhone に入れて歩くにはちょうどいい。


・2作目『Come On Die Young』
 (初期の代表作)


・EP『My Father My King』
 (スティーヴ・アルビニがプロデュースで、スタジオ録音では
  この曲が最も Mogwai の何たるかを体現しているのではないか)


・『ジダン 神が愛した男』のサントラ
 (音が映像的なので、映画にとても馴染むんですね)


・『BBC Sessions』
 (他にライヴ音源がなかったので。「Like Herod」など代表曲が演奏されている)


ほんとはもっと入れたいのだが、容量の都合上、
厳選しているうちにこの4枚に落ち着いた。


このバンド、とにかくライヴがすさまじい。
僕も一度だけフジロックで観たことがある。
当時は「開戦前夜」と評されていた。確かに、その通りだった。


その Mogwai が遂にライヴアルバムを出す。
しかも、当日のステージを映像にした DVD が付属するという。
これは絶対買いだと思っていたら、先日、この映像パート『Burning』を
吉祥寺のバウスシアターで公開するというニュースを見つける。
7/9(金)と7/16(金)のレイトショーのみ。
さっそく昨日見に行ってきた。
http://www.bakuon-bb.net/mogwai/index.html


バウスシアターは以前から「爆音映画祭」というイベントを
年に一回のペースで開催していて、気になっていた。
映画館の音響設備ではなくライヴ用のPAで、音量最大限にして映画を鑑賞する。
第三回のセレクションを見てみたら
The Band の『ラスト・ワルツ』や
Joy Division の『コントロール』といったロック系だけではなく、
バグダッド・カフェ』や『鉄男』『ポーラX』などが上映されていた。
http://www.bakuon-bb.net/2010/program.php
今回の『Burning』の上映もこの「爆音」の流れのようだ。


上映は本編が『Burning』で、最初に短編『Adelia, I Want To Love』を。
前作『The Hawk Is Howling』付属の DVD に収録されていた作品。
音楽と映像を重ね合わせたものとしては非常に秀逸。
発売された頃、センスいいなあと唸りながら鑑賞した。
単なるミュージック・クリップではない。映画の域に達している。
Mogwai がイタリアの小さな村の小さな音楽フェスティバルに出演するために
空港へ向かい、到着後村へとバスに乗って移動、会場でセッティングしてリハーサルをする。
村での何気ない光景が間に挟まる。
主催者のおばあちゃんが登場して、祭りの夜に足を踏み入れる。
そこでは無言で Mogwai が演奏している。
ただそれだけ。なのに、間合いの緊密さが心地よい。


監督が同一人物だったため、『Burning』も同様のテイスト。モノクロとなる。
ニューヨークでのステージと、オフショットがちらほらと。ただそれだけ。無愛想。
『Adelia, I Want To Love』にはまだインタビューの音声があったけど、それもなくなった。
いや、逆に余計なものいっさい省いて素晴らしい出来になった。
100%ピュアな、MogwaiMogwai の何たるかだけで全てが成り立っている。


僕は彼らの音楽は、世界一美しい音だと思う。
孤独で、儚くて、詩的で、暴力的。触れると壊れそうだ。
夜明けの青と灰色の交じり合った一瞬を捉えたかのような。
地球が回転し、様々な出来事が起こっている。その全てを捉えたかのような。
ステージの上には4人の男がギターを抱えて立っていて、ドラムが単調なリズムを叩き、
音を解き放つその瞬間が訪れるのを待っている。
その立ち姿に僕はサム・ペキンパーの『ワイルド・バンチ』を思い出した。
それが、どこまでもざらついた映像で描かれる。


ライヴを映画化したものとして、単純に演奏のインパクトだけで選ぶのなら、
僕はこの『Burning』が現時点で最高だと思う。
ラストシーンに震えた。
客席からは拍手が。


これはスクリーンで観て正解だった。
時間が許せば来週もう1度観たい。