『インサイド・ディープ・スロート』 etc.

・元美容師だった監督のジェラルド・ダミアーノは結局、
 『ディープ・スロート』で儲けることはなかった。
 「タイムズ」紙で取り上げられ、一般市民もが劇場に足を運ぶようになって
 ニューヨークのタイムズ・スクエアでの初公開から2年を経て
 それでもまだ全米で大ヒット。
 なのにその何百万ドルもの興行収入は全てマフィアに持っていかれた。
 以後の監督作品も成功しなかった。


・主演のリンダ・ラブレイスはその後フェミニズムの擁護者となって
 『ディープ・スロート』を非難する。
 「観客がこの映画を見る度に私はレイプされる」
 しかし、田舎に引っ越してひっそりと生きようとしても
 かつてこの映画に主演したことがばれて何度も職場から追い出される。
 結果50を過ぎて再度ヌード雑誌に出演することになる。
 交通事故をきっかけに死去。


ニクソン時代の反ポルノ運動により
 『ディープ・スロート』の製作者・上映者は共謀罪でまとめて起訴されるが、
 ジェラルド・ダミアーノリンダ・ラブレイスは不起訴処分となる。
 しかし主演男優のハリー・リームスだけが見せしめで有罪となる。
 大統領が民主党のカーターとなってようやく自由の身となるが、
 ポルノ男優以外に仕事はない。アル中となって物乞いにまで落ちていく。
 その後キリスト教に改心し、不動産業者として成功する。


ジェラルド・ダミアーノ監督はポルノと映画との融合が
 ハリウッドで成されるのではないかと予想するが、
 80年代以後反対の方向に進んでいく。
 ビデオの普及によりポルノは安手の、金を生む機械に成り下がる。
 もはや「性の解放」でも「反体制」でもない。
 『ディープ・スロート』とそのアイコンであるリンダ・ラブレイス
 ”表現”の分野にて新たな扉を開いたが、今や省みられることはなくなった。


・僕自身は『ディープ・スロート』を面白いともなんとも思わなかった。
 古臭いだけ。70年代初めのアメリカが映っていることと
 ありがちな安っぽくてファンキーな音楽がよかったこと、それぐらい。
 ネット社会になってさらに多岐にわたるポルノ業界に僕も毒されているんだろうな。